【道南発見の旅⑦】函館山と函館湾の景色が最も美しい箇所は?
渡島当別駅から先は、函館湾沿いに列車が走るようになる。函館山が車窓のほぼ中央に見えるようになる区間でもある。天気に恵まれれば、進行方向の右側に函館湾の海岸と連なる函館の市街が手に取るように見え始めるのがこの区間だ。
さらに茂辺地駅の先となると、函館湾の海岸線が函館市街まで丸く弧を描くように延びている様子が見えて美しい。このように釜谷駅から上磯駅までの4駅の区間は、それぞれの海景色が異なり、どこがベストであるかは、甲乙つけがたいように感じた。
【道南発見の旅⑧】上磯駅から列車が急増する理由は?
茂辺地駅〜上磯駅間まで右手に函館山と函館湾が楽しめたが、同区間でこの海景色の楽しみは終了となる。道南いさりび鉄道の列車は上磯駅が近づくに連れて、左右に民家が連なるようになる。太平洋セメントの上磯工場の周りをぐるりと回るように走れば、間もなく上磯駅へ到着する。
上磯駅からの列車本数は多くなる。木古内駅〜上磯駅間の列車がほぼ2時間おきなのに対して、上磯駅〜五稜郭駅間は1時間に1本、朝夕は30分おきに列車が走る。この列車本数はJR北海道の時代からほぼ変わりない。
上磯駅〜五稜郭駅間の列車が多いのは、函館市の通勤・通学圏内だからだ。道南いさりび鉄道の列車は五稜郭駅の一駅先の函館駅まで全列車が乗り入れている。上磯駅から函館駅間は22分〜30分と近い。そうしたこともあり乗降客も増える。
〝撮り鉄〟の立場だと上磯駅〜五稜郭駅間は街中ということもあり、なかなか場所選びがしにくい区間である。やはり津軽海峡が良く見える釜谷駅〜渡島当別駅間が良いのだが、こちらは列車本数が少なく、列車を使う場合には立ち寄りにくいのが現状である。筆者は景色の良い区間で降りるのを諦めて、列車本数が多く移動しやすい久根別駅で降りた。数本の列車を撮影したが、景色が良いところで撮影したいという思いは適わなかった。
【道南発見の旅⑨】津軽海峡の区間は今、何線と呼ばれる?
道南いさりび鉄道は普通列車とともに貨物列車も多く走る。本州から北海道へ向かう下り貨物定期列車が1日に19本、臨時列車まで含めると26本ほど走る。上り貨物列車も下りとほぼ同じ列車本数だ。中には札幌貨物ターミナル駅〜福岡貨物ターミナル駅間と日本一長い距離を走る列車も含まれる。旅客列車のように、行先等が書かれていないのがちょっと残念ではあるが。
さて、貨物列車が走る路線とルートを確認しておきたい。普通列車とは逆に五稜郭駅側から見てみよう。貨物時刻表には「函館貨物」と「木古内」という2つの駅が道南いさりび鉄道の区間にある。函館貨物は五稜郭駅構内にあたる。実は函館貨物駅という貨物駅は別にあるのだが、これは後述したい。札幌方面から走ってきた貨物列車は五稜郭駅で折り返す。ここまで牽引してきた機関車はDF200形式ディーゼル機関車だ。この構内で機関車は切り離し、逆側に青函トンネル用のEH800形式電気機関車が連結される。
貨物時刻表には路線名は「道南いさりび鉄道」と書かれている。貨物時刻表には木古内とあるが、こちらは運転停車で、荷物の積み下ろしや貨車の連結作業は行われない。そして道南いさりび鉄道の木古内駅を過ぎ、北海道新幹線と合流する連絡線を上って行く。この区間および、青函トンネルの間は今、何線にあたるのだろうか。以前は「津軽海峡線」と通称ではあるものの呼ばれていたのだが。
現在、木古内駅の先、北海道新幹線への連絡線、そして青函トンネル区間、さらに青森県側の津軽線へ合流する新中小国信号場、そして中小国駅までの87.8kmの区間は「海峡線」と呼ばれている。
旅客列車がこの区間を走っていたころは、「津軽海峡線」の名が「時刻表」誌にうたわれ一般化していた。実はこの当時から正式な路線名は「海峡線」だったのだが、当時は一般には浸透していなかった。在来線だった津軽海峡線を通る列車は一部の団体列車(「カシオペア」「四季島」など)を除きなくなったことから、すでに「時刻表」誌では「津軽海峡線」「海峡線」という路線名の紹介ページはない。貨物列車の時刻を記した「貨物時刻表」のみ「海峡線」と書かれている。このあたりの変化もなかなか興味深い。
【道南発見の旅⑩】五稜郭駅手前で合流する線路はどこから?
上磯駅からは列車本数が増えるとともに、市街地を走る路線となり、風景もごく一般的な都市路線となる。そんな道南いさりび鉄道の旅の終点となった側の駅、五稜郭駅近くで進行方向右手から近づいてくる線路がある。道南いさりび鉄道の線路に、進行方向左手から近づいてくる路線は、函館本線であることは分かるのだが、さて右から合流するのは何線なのだろうか。
貨物時刻表ではJR北海道の五稜郭駅のことを函館貨物駅と呼んでいるが、先の道南いさりび鉄道の路線に合流する線路をたどると、それとは別の函館貨物駅という貨物コンテナを積み下ろす貨物駅へつながっている。連絡する路線は貨物時刻表では「埠頭通路線」としていて距離は2.1kmほどある。函館貨物駅は別名、有川操車場、五稜郭貨物駅という別名があり、この貨物線は「有川線」「五稜郭貨物線」とも呼ばれることがある。
あくまで函館貨物駅の構内線という扱いのため貨物時刻表には、その運行ダイヤが掲載されていない。列車を牽引する機関車も前照灯とともに赤ランプをつけて、構内での入れ替えと同じ扱いの列車として運行されている。
さて、五稜郭駅が道南いさりび鉄道の路線の起点となっている。しかし、同駅始発、同駅終点の道南いさりび鉄道の列車はない。全列車が一駅先の函館駅まで函館本線を通って走っている。前述した「いさりび1日きっぷ」は同駅でも販売、また鉄印も販売されている。ちなみに五稜郭駅〜函館駅の運賃は通常250円だが、道南いさりび鉄道からそのまま乗車した時の同区間の運賃は乗り継ぎ割引される(七重浜駅〜上磯駅からは120円、茂辺地駅〜木古内駅からは190円となる)。ただし「いさりび1日きっぷ」利用の場合には、250円が加算される。
函館駅では1・2番線が上磯・木古内方面と表示されている。道南いさりび鉄道の路線となったものの、駅構内には道南いさりび鉄道の切符の販売機も置かれ、第三セクター鉄道の路線とは思えないような扱いだ。さらに道南いさりび鉄道の車両の基地は、函館駅に隣接した函館運輸所にある。函館駅に到着する前に、この運輸所に停まる道南いさりび鉄道の車両が見える。車両の色は七色でにぎやかに、また運賃が割高になったものの、函館駅での対応の様子を見るとJR北海道時代とあまり変わらずで、変わらない良さ、利用のしやすさも感じた道南いさりび鉄道の旅だった。