近年のe-Bike市場は、大手のスポーツ自転車ブランドが数多く参入したことで大きく盛り上がっています。アメリカのトレックはe-Bikeに力を入れているブランドの1つ。スポーツタイプのモデルはもちろん、通勤や日常の使い勝手が良いモデルもラインナップされています。「Verve+ 2」もそんなモデルの1つですが、通常のクロスバイクタイプに加えて、フレームを低く抑えた「Lowstep」がラインナップされているのが特徴。今回は、その「Verve+ 2 Lowstep」に試乗してみました。
スポーツ自転車メーカーが本気で作った街乗り仕様
跨ぎやすい低い形状のフレームで、パッと見はママチャリっぽくも見える「Verve+ 2 Lowstep」は、ベースがクロスバイクなので装備は本格的です。ホイールはロードバイクなどにも採用される700Cというサイズで、履いているタイヤは45mmと幅広。搭載されるモーター(ドライブユニット)や重量などのスペックは、同ブランドのクロスバイクタイプ「Verve+ 2」とほぼ共通で、29万5900円という価格も同じです。
搭載されるドライブユニットはBOSCH(ボッシュ)製。e-Bike用のドライブユニットではトップシェアを誇るブランドと、米最大手の自転車メーカー・トレックのコラボによって生まれたモデルだけに期待感も高まります。
このモデルにはBOSCHのラインナップの中では街乗り向けに位置する「Active Line Plus」というドライブユニットが採用されています。バッテリーはフレームに外付けされるタイプですが、容量は300Wh。Ecoモードでは最大100kmのアシスト走行が可能です。
サイズは3種類ラインナップされ、Sが155〜165cm、Mが165〜175cm、Lが175〜186cmの身長に対応します。今回、試乗したのはMサイズ(筆者の身長は175cm)。サドル高の調整範囲が広く、ハンドルを支えるステムも高さ調整が可能なので、夫婦で1台を共用することもできそうです。
シティサイクルっぽい見た目ですが、ベースがクロスバイクタイプなので変速ギアは9段。ブレーキも油圧ディスクなので、握力が弱い人でも安心して乗れます。バッテリーから給電されるライトや、安定して車体を支えるサイドスタンドなど、日常での使い勝手を高める装備にも抜かりありません。スポーツタイプを得意とする自転車メーカーが本気で街乗り用のモデルを作るとこうなるのかという仕上がり。
クロスバイクタイプと同等の走行性能
「Verve+ 2 Lowstep」はクロスバイクタイプの「Verve+ 2」とスペック的にはほぼ同じと書きましたが、違いがあるのが乗車姿勢。フレーム形状が異なるため、乗り降りがしやすいのに加えて、乗っているときの姿勢がやや上半身が起きたアップライトなものになります。クロスバイクに採用される三角形を組み合わせたようなフレームに比べ、上辺がつながっていないので剛性を高く保つのが難しい形状ですが(クロスバイクやロードバイクに乗った後、ママチャリに乗るとフレームがヨレているのが体感できるほど)、トレックが作っただけあって剛性が落ちているようには感じません。
BOSCH製のドライブユニットはアシスト感もパワフルで、車体の重さを感じることなくグングン加速します。上体が起きたライディングポジションなので、速そうには見えませんがクロスバイクタイプのe-Bikeと全く遜色ない走行性能です。
パワフルなアシストは登り坂になると、さらにその恩恵を感じます。ペダルを回しているだけで結構な斜度のある坂もグイグイ登って行ってしまう感じ。アシストモードは4段階に切り替えられますが、最もパワフルな「TURBO」は加速しすぎて慣れていないとちょっと怖いくらいです。登り坂でも、ひとつ下の「SPORT」に入れておけば十分でしょう。
シティサイクルのような見た目ですが、「Verve+ 2 Lowstep」はトレックとBOSCHが力を合わせて開発しただけあって、クロスバイクに引けを取らない走行性能。それでいて、「Active Line Plus」はアシスト中のモーター音が非常に静かなのも魅力。普段はのんびり街乗りに使い、休日はクロスバイクと一緒にサイクリングロードに走りに行くといった使い方もできてしまいます。もうひとつ、BOSCH製ユニットの利点だと感じるのが、走り始めてからでも電源をONにできること。他社製のユニットは一度止まってから電源ONにしないとアシストが効かないのですが、BOSCH製は電源OFFのまま走り出したとしても、走りながらONにしてそのままアシストを効かせられます。地味ですが、これは結構便利な機能。クロスバイクタイプの「Verve+ 2」と好みに合わせてスタイルを選べるのも魅力です。
撮影/松川 忍
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