ベテラン自動車ライターの永福ランプとフリーエディターの安ドが、深いような浅いようなクルマ談義をする「クルマの神は細部に宿る。」。今回は、2021年夏にフルモデルチェンジして新型が発売されたFRスポーツクーペ、新型BRZの魅力を解剖する!
※こちらは「GetNavi」 2022年1月号に掲載された記事を再編集したものです。
【レビュアーPROFILE】
永福ランプ(清水草一)
日本中の貧乏フェラーリオーナーから絶大な人気を誇る大乗フェラーリ教の開祖。様々な自動車専門誌や一般誌、ウェブなどで、クルマを一刀両断しまくっている。2018年以降、ペンネームを「MJブロンディ」から「永福ランプ」へ変更している。
安ド
元GetNavi編集部員で、現在ではフリーエディター。永福ランプを慕い「殿」と呼んでいる。
【今月のGODカー】SUBARU/BRZ
SPEC【S 6MT】●全長×全幅×全高:4265×1775×1310mm●車両重量:1270kg●パワーユニット:2.4L水平対向エンジン●最高出力:235PS(173kW)/7000rpm●最大トルク:25.5kg-m(250Nm)/3700rpm●WLTCモード燃費:11.9km/L
308万(税込)〜343万2000円(税込)
抜群の乗り味を誇る最高のスポーツクーペ
安ド「殿! 新型『BRZ』は、いかがですか」
永福「せっかくのスポーツクーペなのに、なんと凡庸なデザインかと失望したが……」
安ド「失望したんですか!」
永福「失望したが、乗ってみたら最高にすばらしかった」
安ド「すばらしかったんですね!」
永福「とにかく走りがすばらしい。足まわりもエンジンも最高だ」
安ド「スポーツクーペなのに、街乗りでも全然乗り心地が悪くなくて、びっくりしました!」
永福「それでいて、コーナーを攻めればウルトラ安定しているし、限界も高い。文句のつけようがないぞ」
安ド「2.4Lになった水平対向エンジンも、トルクが太くなっていて良いですね!」
永福「すまさじく良いエンジンだ。スバルの水平対向エンジンのなかでも、最高傑作ではないか」
安ド「そこまで良いですか!」
永福「そこまで良い」
安ド「今回試乗したのは6速MTモデルでしたが、MTも扱いやすかったです。MTに慣れてない人でも、エンストしにくいのではないでしょうか!」
永福「全体的に、ウルトラ扱いやすいのにウルトラ仕上がりが良く、ディープなカーマニアでもウルトラ満足できる、最高のスポーツクーペだ」
安ド「スポーツクーペの新型って、すごく貴重になってますしね!」
永福「安ドはこれまでスポーツクーペに何台乗ってきた?」
安ド「最初の愛車は『フェアレディZ』の2+2でした。あと、『クーペフィアット』にも乗りました。その他、2シーターのオープンに2台乗りました!」
永福「なかなか乗っておるな。わしは……。『フェラーリ』13台と『カウンタック』2台、すべて2シーターのクーペやオープンだが、実は最初の愛車は、日産『ガゼール』という2+2のクーペだった」
安ド「『シルビア』の兄弟車ですね!」
永福「当時の若者はみんなスポーツクーペに乗りたがったから、速くもないカッコだけのスポーツクーペがたくさんあったのだ」
安ド「なるほど! いまのSUVみたいなものですね!」
永福「実は今回、BRZの後席にも乗ってみた」
安ド「えっ! ものすごく狭くなかったですか?」
永福「いや、前席を少し前に出せば、思ったより広かったぞ。あれなら男4人でもなんとかなる」
安ド「ホントですか!?」
永福「若いころは、狭いガゼールに男4〜5人乗り込んで、色々な場所に行ったものだ。今回BRZの後席に座ってみて、そんな青春時代が蘇った」
安ド「僕はフェアレディZの後席に、友人を乗せたことはなかったです!」
永福「そうなのか」
安ド「でも、車内でカー〇ックスしたことがあります!」
永福「それこそ真の青春だな」
【GOD PARTS 1】エアコンインターフェイス
質感を向上させたアナログ感が良い感じ
ダイヤルが3つ並び、その下に各種スイッチが横並びになるという配置は、先代型とあまり変わりませんが、比べて見ると明らかに質感が向上しています。デジタル全盛の時代にあえてアナログ式のスイッチ類で好印象です。
【GOD PARTS 2】アクティブサウンドコントロール
作られたサウンドでスポーティさを演出
アクセルを踏み込むと、スポーティなエンジンサウンドが正面から聞こえてきます。しかしこれ、実はエンジンの回転数に合わせてデジタルサウンドを再生しているそうです。確かに、よく聞くと若干時差を感じたりもします。
【GOD PARTS 3】パーキングブレーキ
昔ながらの手引き式でドリフトだって可能
近年は電動パーキングブレーキが主流になっていて、スバルも他車では採用しています。しかし、新型BRZでは古典的な手で引き上げるタイプの、いわゆる“サイドブレーキ”が採用されています。初心者がドリフトするためでしょうか。
【GOD PARTS 4】トランク
しっかり使える容量でクーペと侮るなかれ
2+2座席のため、主な物を置く場所は後席になりがちですが、237Lの容量を誇るトランクもしっかり用意されています。後席背もたれを前に倒せば長尺物も積載することができるので、実用性は決して低くありません。
【GOD PARTS 5】6速MT
少数派となったMT好きを変わらず応援
いまや国産新車のAT比率は99%超えと言われているなか、しっかり6速MTモデルが設定されていました。世界の名だたるスーパーカーでさえ2ペダルのみになっていく時代ですが、カーマニアにとってはありがたいことです。
【GOD PARTS 6】フロントシート
スポーツカーらしいホールド性で上質感も高い
シート形状はホールド性が高く、スポーティな走りにピッタリですが、クッションも厚みがあって座り心地も良好です。さらに、スエード地と本革を組み合わせたコンビネーション表皮が採用されていて、質感が高いです。
【GOD PARTS 7】エンジン
ノンターボの良さをよくわかっている!
2.0L直噴ターボだった先代型から、新型では排気量がアップされ、2.4Lのノンターボエンジンが搭載されています。水平対向式は変わりませんが、以前より低回転域から力強いトルクを感じられるようになりました。高回転域も伸びが良いです。
【GOD PARTS 8】リアシート
非常用や物置き場としてあるだけマシと考える
2+2シートのため一応後席は装備していますが、なかなか厄介です。フロントシートを前に出さないと足が入りませんし、大柄な人だと頭を真っ直ぐ上へ伸ばせません。とはいえ、乗れないことはないので、あるだけマシだと思いましょう。
【GOD PARTS 9】タイヤ
プレミアムタイヤで走りの質感を向上
タイヤは走りの質にも乗り心地にも影響する大変重要なパーツです。今回のBRZには、なんと名門ミシュランの「パイロットスポーツ4」という超優良ブランドが装着されていました。高価ですが、これだけで走りの質感が2段階ほど上がります。
【これぞ感動の細部だ!】TRACKモード
クルマの介入を抑制して運転者の腕を見せつける
センターコンソール上にあるボタンを長押しすることで、車両安定制御システム「VSC」の制御介入タイミングを遅らせる「TRACKモード」に変更できます。これはつまり、スポーティに走らせたときの、クルマによる自動制御の範囲を減らすことで、運転がよりドライバーの腕頼みになってくるということです。運転に自信のあるドライバーのためのボタンですね。
撮影/我妻慶一
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