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2022/3/29 18:20

満を持してヒョンデがZEVで日本市場へ参入! 欧州チームが開発したその仕上がりは想像以上

韓国の現代(ヒョンデ)自動車が12年ぶりに日本市場へ再参入を果たしました。そのメイン車種としてラインナップしたのがBEV(バッテリー電気自動車)「IONIQ(アイオニック) 5」です。今回はその日本仕様を個人間シェアリング「Anyca(エニカ)」で借り、2日間にわたって試乗してみました。

 

試乗は個人間シェアリング「Anyca」を利用

ヒョンデが日本市場に再参入するにあたってラインナップしたのは、このアイオニック5以外にFCV(燃料電池車)「NEXO(ネッソ)」を加えた2車種です。いずれもZEV(ゼロエミッションヴィークル)を意識した投入となりました。そんな中でアイオニック5は、デザインから足回りに至るまで同社の欧州チームが開発したという、いわば生粋の欧州生まれ。韓国車といえども、その仕上がりには大いに期待が持てます。

↑2月8日、ヒョンデはいずれもZEVとなるBEVの「アイオニック5」(左)とFCEVの「ネッソ」の2車種を発表。12年ぶりに日本市場への再参入を果たした

 

ただ、ヒョンデは日本市場での販売にあたり、いずれも自社ウェブサイト/アプリからのオンライン販売のみとしています。リアルな体験拠点としては、神奈川県・横浜市内に「Hyundai カスタマーエクスペリエンスセンター」を2022年夏に開業する予定ですが、多くの輸入車のようにディーラー網は展開しません。これは購入希望者にとっては残念な点です。購入すれば500万円前後の出費となるだけに、誰もが実車を見たいでしょうし、もちろん試乗だってしたいでしょう。

 

そんな声に応えるべくヒョンデが採った策が個人間シェアリングのエニカと提携することでした。つまり、ここで有料での体験試乗できるプランを用意したのです。これなら一般的な短時間の試乗だけでなく、ロングドライブに出掛けることもでき、普段の使い方に近い形で実力をチェックすることも可能です。今回はこのエニカのプランを利用しての試乗となりました。

 

日本において韓国車は総じて関心が低いですが、グローバルに視点を移すと想像以上に評価が高いことも知っておかねばなりません。特に「KIA」を傘下に持つ現代自動車グループは世界5位の生産台数を誇り、アメリカでは「ホンダ」を上回る勢いです。そんなヒョンデが思うように実績を伸ばせないでいるのがアジア地区。中でも日本は12年前に乗用車市場から撤退した苦い経験があります。そこで今後の伸びしろがあって、日本車が手薄なZEVに絞り込むことで再進出を図ったのです。

 

個性的なデザインは注目度抜群! インテリアの質感も高い

アイオニック5のグレードは4タイプが用意され、もっとも廉価なベースグレードが58kWhであるものの、それ以外の3タイプはすべて72.6kWhと大容量バッテリーが搭載されています。その中で今回の試乗車は下から2番目の大容量バッテリーを搭載する「Voyage(ボイヤージ)」を選びました。

↑「アイオニック5」、価格は479万円〜589万円(税込)。ボイヤージは全長4635×全幅1890×全高1645mm、車両重量1950kg

 

ボイヤージは上級グレードに比べるとサンルーフや車内アンビエントライトが搭載されておらず、シートも本革仕様でなく、助手席シートにパワー機構が搭載されていないなどの違いがあります。しかし、ボイヤージでも装備はかなりの充実ぶりで、装備表を見なかったらボイヤージでも充分満足できるレベルにありました。

 

アイオニック5を前にして、まず外観の個性的なスタイルに惹かれました。逆Z型のプレスラインを持ったサイドビューは一度見たら忘れられない独創性を伝えてきますし、「パラメトリックピクセル」と呼ばれる前後のLEDランプのデザインもデジタルピクセルにアナログな感性を加えたユニークなもの。特にリアエンドは方眼をあしらったデザインで、後続車からの注目度も相当に高いはずです。

↑細かなモザイク模様のレンズをあしらったリアビューが印象的だ。ボディカラーは6色設定。19インチアルミホイール & 235/55 R19タイヤ[ミシュラン]を履く

 

インテリアも質の高さで評価が高い欧州勢と遜色ないレベルにあります。運転席に座れば明るく開放感があって、ダッシュボードは水平基調のシンプルなデザイン。そこに大型で見やすい12.3インチのナビゲーション+12.3インチのフル液晶デジタルメーターが並んで収まります。物理スイッチは必要最低限に抑える一方で、素材からして高品質で触れた感触がとても居心地がいいのもポイントです。

↑写真は「ラウンジ」グレードとなってしまったが、試乗したボイヤージでも質感は充分に高かった

 

↑物理キーを極力廃しつつ、よく使うボリュームなどは回転式にするなど使い勝手も重視した

 

↑前席中央付近のルーフに備えられたスイッチ類。SOSコールにも対応した

 

キャビンは広々としており、どの席に座っても足をゆったり伸ばせます。バッテリーをフロア下に置いた関係でフロアは若干高めですが、ドライビングポジションに窮屈さは感じられません。これはアイオニック5に採用したE-GMP効果によるものだそうです。

↑最大出力1600wのACコンセントを備え、停車時はリアスペースを拡大して、こうした寛ぎ方も可能になる

 

シートはたっぷりとしたサイズで、前席のシートにはオットマンが装備されていました。充電時の待ち時間をくつろいで過ごせるよう配慮した「リラクゼーションコンフォートシート」で、充電で待ち時間が欠かせないBEVらしい装備とも言えます。さらにセンターコンソールは前後に140mmスライドできる機構が備えられ、それを後方にスライドさせれば平らなフロアのおかげで、左右どちらのドアからも容易に乗降できるようになります。

 

強烈な加速に驚き! 荒れた路面での突き上げが少し大きめ

ここからは走り出しての感想です。起動スイッチを押し、ステアリングコラムから右に出ているシフトダイヤルを回して“D”に入れると、スムーズに加速していきます。アクセルに対する反応もリニアで、踏み込んだだけ素直に速度が上がっていく感じです。一方で、アクセルを少し強めに踏み込むとBEVらしい強烈な加速が味わえました。この加速感はガソリン車では得られない感覚です。回生ブレーキを使ったワンペダルも自然でした。

↑シフトレバーはステアリングの右側にレバーとして備わる。しっかりとしたクリック感がわかりやすい

 

一方で乗り心地はやや路面の突き上げを感じやすい印象です。一般道の路面の荒れ具合が、そのまま伝わってくる感じでした。ただ、高速道路に入るとその印象はほぼなくなり、むしろ安定感が増して快適に走ることができました。全車速追従システムも完成度が高く、車線の中央部を維持してくれるので長距離での疲労度はかなり低減されるでしょう。

 

カーナビはゼンリン製地図データを使って日本仕様にローカライズし、さらにドライブレコーダー機能も装備されています。ウインカーも日本市場に合わせた右側仕様となっており、このあたりからもアイオニック5へのヒョンデの本気度が伝わってきました。ただ、カーナビの交通情報は通信によるオンデマンドVICSとなっているようで、試乗車は通信契約が行われていなかったため、それを反映することはできませんでした。

↑ゼンリン製地図データを使ったナビゲーション。きめ細かな案内が行われており、交通情報は通信によるオンデマンドVICSとなる

 

↑アイオニック5にはドライブレコーダーを標準装備。エニカではOFFの状態で貸し出される

 

↑左ハンドルの韓国からの輸入車にも関わらず、日本市場向けに合わせてウインカーレバーは右側に備えられた

 

↑左右にウインカーを出すと同時に、メーター内にはその方向の状況をウインドウで表示する

 

ちなみにCHAdeMO(チャデモ)での急速充電(90kW)では80%充電まで32分で可能だということです。航続距離は満充電で618km(WLTCモード※ボイヤージの場合)と表記されており、実用でも500km程度は走れそうな感じです。また、充電はCHAdeMOによる急速充電と普通充電に対応し、最大1600Wを出力できるAC電源やV2H(Vehicle to Home)を使った給電も可能となっています。

↑最高出力160kW(217PS)/最大トルク350N/mを発揮する電動モーターを搭載(※ボイヤージの場合)

 

↑非常時給電システム付きコンセントを付属。最大1.6kWの給電が可能となる

 

まとめ

2日間試乗した印象として、クルマとしての出来はかなりハイレベルであったことは確かです。アイオニック5の直接のライバルは、トヨタの「bZ4X」やスバルの「ソルテラ」、日産の「ARIYA」などが想定されるでしょう。販売体制を踏まえればテスラの「モデル3」の方がより近い存在かもしれません。メンテナンスが協力工場で行うという部分がどこまで納得できるかによりますが、クルマとしてだけ考えれば間違いなく選びたくなるクルマの一つと言えます。まずは、エニカで会員になり、ぜひ試乗して体験してみることをオススメします!

 

 

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