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2022/4/1 18:45

これが世界のスタンダード! ホンダ新型「シビック」の完成度を調べてみた

1972年の初代モデル発売から、今年で50周年を迎え、累計販売台数は2700万台を超えるホンダの「シビック」。世代によって、この車名を聞いてイメージする姿はそれぞれでしょう。40代半ばの筆者が真っ先に思い起こすのは、コンパクトなハッチバックのシルエット。免許を取って間もない若者でも乗りやすく、それでいて走りも良いクルマというイメージでした。

 

そんな時代からすると、サイズも大きくなり車格も上がった現行の「シビック」。約7年間の日本で販売されない期間(「タイプR」のみ限定で販売)を経て、先代モデルで日本市場に復帰し、今回乗ったモデルは11代目に当ります。世界的に見るとホンダ車の中で2番目に売れているという現行「シビック」の完成度を探りました。

 

【今回紹介するクルマ】

ホンダ/シビック

※試乗車:EX

価格:319万円/353万9800円(税込)

 

上質さと落ち着きを感じさせる外観・内装デザイン

現行「シビック」で国内販売されるのは、5ドアハッチバックのボディタイプ。グレードは「EX」と「LX」の2種類が用意されますが、今回乗ったのは上位の「EX」グレードです。低く抑えられたボンネットから、リアに向けて水平基調で伸びるラインはシャープで、キャビンの形状はクーペライクなもの。20世紀に販売されていた「シビック」のハッチバックと比べると、大人向けのデザインになったと感じます。

↑よけいな威圧感はないものの、確かな存在感を漂わせるヘッドライトデザイン

 

↑テールエンドに向かってなだらなに収束するクーペのようなラインが特徴

 

フロントウィンドウは見るからに広く、視界が良さそう。車内に移動しても、開放感のある視界が実感できます。「EX」グレードは内装にレッドステッチや合成皮革が多用され、上質な仕上がり。落ち着ける空間が演出されています。

↑広いフロントウィンドウには「Honda SENSING」用のカメラも装備

 

↑水平基調で高さを抑えたインパネのラインで開放感のある広大な視界を確保

 

↑ハニカムデザインのエアコンの吹出口など、細かい部分にも配慮が感じられます

 

シートに身を沈めると、適度なホールド感と、それでいてどこにも窮屈さを感じさせない座り心地が味わえます。昨今流行りのSUVに比べると明確に低い着座位置に、ワクワクしてしまうのは世代のせいでしょうか。レザー製で適度な太さのステアリングホイールも、握り心地が良く、ドライビングへの期待感を盛り上げます。

↑上質な座り心地で、タイトな印象はないのにしっかりと体をホールドしてくれるシート

 

爽快さを存分に味わえるドライブフィール

搭載されるエンジンは1.5Lの直噴VTECターボ。最高出力は182PS/6000rpmで最大トルクは240Nmを1700〜4500rpmという低回転から広い領域で発揮します。組み合わせられるのは6速MTとCVTの2種類で、この時代に初期受注の約4割がMTという比率の高さに驚かされます。

↑現在、ホンダの主力パワートレインといってもいい1.5L直噴VTECターボエンジンを搭載

 

まずドライブしたのは6速MTのほう。先代モデルもMTの出来が良く「乗るならMTがいい」と強く感じたものですが(販売台数の約3割がMTだったとの事)、その印象はさらに強まりました。手首の動きだけでシフトが決まり、コクっとゲートに収まるフィーリングも良くなっているので、低速でも適度なクルマを操っている感が味わえます。また、エンジンも高回転になるほどレスポンスが高まるので、シフトを駆使して気持ちの良い回転数を維持するのが本当に爽快です。

↑金属製のノブに革を巻きつけたデザインとなり、フィーリングもさらに向上した6速MT

 

↑MTでも機能するACCなど、「Honda SENSING」の出来の良さも好印象

 

CVTに乗り換えても、爽快なフィーリングは変わらず。CVTにありがちなエンジンとタイヤの間にクッションがあるような感覚ではなく、ダイレクトに駆動力が伝わっているような印象です。特にアクセルを大きく開けた加速時や、ブレーキング時には段階的な変速を行う、ステップアップ/ダウンシフト制御が搭載されているので、エンジンの気持ちよさを存分に味わうことができました。

↑CVTでは「ノーマル」「スポーツ」「ECON」の3つのモードが切り替え可能

 

足回りは硬さは感じないものの、全体的にしっかりしていて、絶大な接地感が伝わってきます。低速で市街地を走っていても、ゴツゴツした印象は一切ないものの、確実に路面を捉えている感覚。高速道路では直進安定性が高く、「Honda SENSING」と相まって、長距離ドライブの疲労は確実に少ないでしょう。ワインディングでもしなやかに動く感覚は変わりませんが、荷重の増える分、路面にタイヤを押し付ける感覚が強まり、速度に合わせてスポーツしている感覚も高まってきます。ステアリングを切ると、低いノーズがスッとインに向いてくれて意のままに操れる感覚はまさに爽快。現行「シビック」の開発コンセプトである“爽快”をまさに体現する走りです。

↑硬さは感じないものの、確実に路面を捉え、意のままに動く爽快な走りが味わえます

 

高いユーティリティ性も確保

スポーツカー並みに楽しい走りが味わえる「シビック」ですが、居住性やユーティリティ性も高次元で両立しています。クーペのようなシルエットではありますが、実際にリアシートに座ってみると、ヘッドスペースに窮屈さは全く感じません。足元の空間も広く、家族をリアシートに乗せても不満が出る心配は皆無でしょう。

↑身長175cmの筆者が座っても、窮屈さを感じないリアシート

 

ラゲッジスペースは合計452Lと大容量。かつ開口部も広いので荷物の出し入れはしやすく、使い勝手はかなり良さそう。シートは6:4分割式で倒すとフラットに近いスペースを作り出すことができます。同クラスのSUVと比べても遜色のない容量と使い勝手で、気を使う部分といえば車高が低い分、重い荷物の積み下ろしで腰をかがめる必要があるくらいでしょう。ちなみに、シートを倒した状態で寝転んでみましたが、大人1人が体を伸ばして寝られる広さはありますが、途中に高低差があるので、流行りの車中泊にはちょっと向かないかもしれません。

↑荷室の床が下げられ、大容量を実現しているラゲッジスペース

 

↑6:4分割式のリアシートを倒すことで、さらに広大なスペースを確保できます

 

↑横引きタイプのカーゴエリアカバーに加えて、テールゲートにも荷物を見えなくするカバーが取り付けられます

 

街中では乗り心地が良く、高速道路では疲労の少ない安定感があり、ワインディングでは爽快な走りが味わえる。それでいて、ラゲッジスペースも広くて使い勝手も良いので、この価格帯ではライバルとなるであろうSUV勢に対しても劣るところがありません。使い勝手の良さと走りの楽しさを高次元で両立しているのは、歴代「シビック」の共通点ですが、現行モデルはさらに上質さが加わっている印象です。

 

違いのわかる大人向けのクルマと言いたいところですが、海外では若い世代に売れているとのこと。これが現在の世界のスタンダードだということでしょう。確かに、ここまで走らせる楽しさを味わえ、使い勝手と上質さも併せ持つクルマはなかなか思い浮かびません。国内での販売計画台数は月1000台と控えめですが、現行モデルのシビックはもっと売れてしかるべきと感じた試乗体験でした。

↑米国では「2022北米カー・オブ・ザ・イヤー」も受賞しています

 

SPEC【EX】●全長×全幅×全高:4550×1800×1415mm●車両重量:1360kg【6速MT1330kg】●パワーユニット:1.5L直4 DOHC 16バルブ●最高出力:134kW[182PS]/6000rpm●最大トルク:240N・m[24.5kgf・m]/1700〜4500rpm●WLTCモード燃費:16.3km/L

 

撮影/松川 忍

 

 

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