ベテラン自動車ライターの永福ランプとフリーエディターの安ドが、深いような浅いようなクルマ談義をする「クルマの神は細部に宿る。」。今回は、SUBARUの象徴的なスポーツモデル「WRX S4」に装着されたホイールアーチについて語った。
※こちらは「GetNavi」 2022年7月号に掲載された記事を再編集したものです。
【レビュアーPROFILE】
永福ランプ(清水草一)
日本中の貧乏フェラーリオーナーから絶大な人気を誇る大乗フェラーリ教の開祖。様々な自動車専門誌や一般誌、ウェブなどで、クルマを一刀両断しまくっている。初老となり運転支援装置の必然性を実感、クルマを評論する際に重要視するように。
安ド
元ゲットナビ編集部員で、現在ではフリーエディター。妻子を抱えても愛車はMTにこだわる。
【今月のGODカー】スバル/WRX S4
SPEC【STI Sport R EX】●全長×全幅×全高:4670×1825×1465mm●車両重量:1600kg●パワーユニット:2.4L水平対向4気筒直噴ターボ●最高出力:275PS(202kW)/5600rpm●最大トルク:38.2kg-m(375Nm)/2000〜4800rpm●WLTCモード燃費:10.8km/L
400万4000円〜477万4000円(税込)
ドライブモードの変更で猛烈に刺激的な走りに激変!
安ド「殿! 殿はスポーツセダンがお好きですよね」
永福「オッサンだからな」
安ド「この新型WRX S4は、スポーツセダンなのにSUV風のホイールアーチがあしらわれていて、なんだか新しいです!」
永福「これは新しいのだろうか」
安ド「新しいと思います!」
永福「このような樹脂製のホイールアーチは、最低地上高の高い、悪路走破性に優れるクルマ用という固定観念があるのだが、このクルマは違う」
安ド「高くないんですか?」
永福「135mmしかない。BMW3シリーズより5mm低いぞ」
安ド「そうだったんですか! コレが付いているから、少し高いのかなと思ってました!」
永福「私にはナンチャッテSUVに見える」
安ド「個人的にはイケてると思ったんですが……。フロントからサイド、リアまで黒い樹脂パーツで囲ってあって、それがエアロパーツっぽい形状をしているので」
永福「SUBARUらしいと言えばらしいのだが」
安ド「走りはどうでしたか。ノーマルモードだとなんだかもっさりした印象でしたが……」
永福「このクルマは、同社得意のドライブモードセレクトが可能で、走りを5種類から選べる。コンフォートやノーマルだと落ち着いた高級セダンの趣だが、スポーツやスポーツ+にすると、これぞスポーツセダンという走りに激変する。特にスポーツ+は猛烈に刺激的だ」
安ド「フェラーリやランボルギーニを乗り継いでいる殿にとっても、猛烈に刺激的ですか!」
永福「うむ。アクセルレスポンスが凄まじくシャープになり、ちょっとアクセルを踏むだけで背中を蹴飛ばされたように加速する。しかもCVTが自動的にステップ変速になって、エンジンの回転変化を存分に楽しめるのだ」
安ド「そんなに刺激的だったんですか!」
永福「ただ、同時にサスペンションも非常にハードになって、オッサンには乗り心地がツラい」
安ド「それは残念ですね……」
永福「だが心配はいらない。そのためにインディビデュアルモードが用意されている」
安ド「そ、それは?」
永福「エンジンやサスペンションなど6項目を個別に設定して、好みの走りをアレンジできるのだ。私はスポーツ+をベースに、サスペンションだけコンフォートにしてみたが、これぞ理想のスポーツセダン! という走りになった」
安ド「そうだったんですね!」
永福「エンジンが2.4Lターボになり、低速からトルクたっぷりなのもオッサン好みだ」
安ド「ただ、燃費はイマイチですね。いまどきWLTCモード10.8km/Lというのは……」
永福「オッサンもガソリンエンジンも、余命は長くない。いまのうちに乗っておきたいクルマだぞ」
【GOD PARTS 1】空力テクスチャー
六角形模様で空気の流れを整える
フロントバンパーからボディサイド、リアバンパーまで、黒い樹脂パーツが車体下部を囲むように取り付けられていますが、よく見ると「ヘキサゴン(六角形)」模様になっていて、これが車体表面の空気の流れを整えてくれるそうです。
【GOD PARTS 2】エアインテーク
キャラを強調する空気取り入れ口
ボンネット上にはエンジンルームへ空気を取り入れるための穴が空いています。これが、鋭い目つきのヘッドライトやSUBARU特有の「ヘキサゴングリル」などと相まって、スポーティでアグレッシブなキャラクターを際立たせています。
【GOD PARTS 3】インフォメーションディスプレイ
大型タッチパネルで設定をまとめて操作
インパネデザインは車体を共有化する「レヴォーグ」と基本的に同形状で、11.6インチの大型センターディスプレイが採用されています。カーナビ、車両情報、エンタメ、エアコンなど各種設定を、タブレットのようにタッチして操作できます。
【GOD PARTS 4】トランスミッション
MTのような感覚で操作できるCVT
これまでの「スポーツリニアトロニック」から名称が変更され、「スバルパフォーマンストランスミッション」となりました。スポーツ+モードでは、CVTながらまるで8速MTのようなスポーティな変速レスポンスを味わうことができます。
【GOD PARTS 5】水平対向エンジン
全領域でパワフルかつ加速感が気持ち良い
先代型より排気量が0.4L拡大されて2.4Lになったことで、低い回転域から力強いトルクが発揮されます。さらにターボということで伸びやかな加速感も得られるので、幅広い回転領域でエンジンの魅力を楽しむことができます。
【GOD PARTS 6】トランク
日常を犠牲にしない高い実用性を確保
走りのパフォーマンスに優れたモデルながら、4ドアセダンということで日常生活での使い勝手にもしっかりこだわっています。トランクはベビーカーやゴルフバッグが入るよう、幅も奥行きもスペースがたっぷり確保されています。
【GOD PARTS 7】レカロシート
高品質な設計と素材で身体をサポート
撮影車両には、上位グレードにオプション設定される「RECARO(レカロ)」社製シートが搭載されていました。RECAROのシートは人間工学に基づいて開発されており、ホールド性、安全性、快適性が高い評価を受けています。表面素材にはウルトラスエードが採用されていて、肌触りも抜群でした。
【GOD PARTS 8】アイサイトX
さらに強力になった運転支援システム
SUBARUといえば運転支援システム「アイサイト」ですが、WRX S4の上位グレードには、新世代の「アイサイトX」が搭載されています。新型ステレオカメラは認識力を高め、衝突回避のサポート領域を拡大、運転支援を高度化しています。
【GOD PARTS 9】リアスポイラー
印象をガラリと変えた後方の羽の有無
歴代WRXといえば巨大なリアウイングを想像しがちですが、新型ではトランクの後端がニュイっと持ち上がっているだけ。本当にこれだけでダウンフォースが発生するのかどうかは、超高速域で走らせたドライバーのみぞ知ることです。
【これぞ感動の細部だ!】ホイールアーチ
SUVのような黒いフチはスポーツモデルにマッチする?
黒い樹脂製のホイールアーチはSUVっぽいアイテムですが、新型WRXはスポーツセダンでも採用されて、新時代のスポーツモデル像を演出しています。SUBARUはラリーイメージの強いブランドなので似合っているかもしれません。形状はカクカクしていて塊感みたいものも感じられます。なお、フロントの空気排出口は穴が空いていますが、リアはダミーでした。
撮影/我妻慶一
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