フランスのルノー「カングー」と言えば、質実剛健な造りが日本でも人気を呼び、多くのファンを生み出したクルマです。そのカングーが2020年11月に3代目としてフルモデルチェンジを果たし、それから3年を経て日本での販売をスタート。サイズアップして乗用車としての乗り心地や使い勝手を高めた新型カングーをご紹介します。
■今回紹介するクルマ
ルノー/カングー
※試乗グレード:インテンス(ガソリンモデル)
価格:384万円〜424万5000円(税込)
人気の秘密は質実剛健なコンセプト。3代目で「豪華になった」のは大丈夫?
カングーは高い実用性を持つ“乗用車”として、日本でも人気を集めているフランス車。わざわざ乗用車を“”で囲ったのには理由があって、もともとカングーは商用車として登場しているクルマだったからです。
カングーが誕生したのは1997年のことです。商用車らしく背を高くして十分なカーゴスペースを確保しながら、直進安定性やハンドリングなどが乗用車並みに優れていると高い評価を獲得。加えて当時の商用車としては数少ないABSや4つのエアバッグを標準搭載するなど、高い安全性も確保したことで、日本だけでなく世界中で人気モデルとなりました。
日本で初代が発売されたのは2002年。最初はバックドアを跳ね上げ式のみとしていましたが、翌年に実施されたマイナーチェンジを機に観音開き式のダブルバックドアが選択可能となりました。以降、カングーは使い勝手の良さから一躍人気モデルとなったのです。
そのカングーが今回のモデルチェンジで3代目となり、より大きく豪華なクルマへと進化を遂げました。ただ、“豪華になった”と聞けば、質実剛健さがウリだったカングーにとって果たして良いことなのか? そんな心配をする声も当然出てくるでしょう。ですが、その心配は基本無用と私は感じました。むしろ、走行中の安全性や使い勝手が進化したことで、実用車としての能力が一段と高められたのではないかと思ったのです。
全長が210mm長くなり、スタイリングにも余裕が生まれた
今回試乗したカングーは、カラードバンパーを採用し、より乗用車らしさを追求したグレード「インテンス」です。外観は、フロントグリルが従来のカングーとは大きく違ったデザインになり、以前よりも一段とルノーっぽさを感じさせます。ボディは前モデルに比べて全長が210mm長くなり、それによりAピラーを大きく傾斜させています。室内空間を狭めることなく伸びやかさを感じるデザインです。
一方でキャビンから後ろ方向を見ると、サイドのグラスエリアを細めにして、相対的にルーフ部分の厚みが増しています。これは商用車として荷物の積載に配慮したものですが、ここに本来のカングーっぽさを感じ取ることができます。
さらに、3代目のラインナップには、フロントとリアがブラックバンパーになっている「クレアティフ」も用意されました。ホイールをセンターキャップのみともしており、よりカングーらしい質実剛健さを求めたいユーザーには格好のグレードと言えるでしょう。
全長が210mm伸びたことで、実感できたのが室内空間の広さです。特に「広いなぁ」と感じるのが後席で、一人ずつ専用シートが割り当てられている3座独立タイプとなっており、身長168cmの筆者が座っても十分なゆとりを感じます。フロアもフラットであるため、ゆったりと座ることができました。
ただ、リアスライドドアは左右ともに完全な手動式で、国産なら今どき軽自動車でも電動化を実現していることを踏まえると残念に思うかもしれません。しかし、これがカングーだと思えば許せちゃうところが不思議です。
運転席に座って、変わりように驚いたのがインパネのデザインです。ダッシュボードは水平基調でデザインされ、中央にはフローティングされた8インチのディスプレイを配置。その下にはクロームで縁取られた空調用ダイヤルをはじめ、シフトレバーと電動パーキングブレーキがすっきりとまとめられています。
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商用で使うならパーキングブレーキは引き上げるタイプの機械式が良かったのではないかと思いますが、時代の流れなのでしょう。もちろん、乗用として使うならより使いやすいと感じるはずです。
ダッシュボード中央の「8インチ・マルチメディア EASY LINK」は、カーナビこそ装備されていませんが、スマートフォンを接続することで、iPhoneならCarPlayで、AndroidならAndroid Autoによってさまざまなアプリが使えます。なので、iPhoneならGoogle マップやYahoo!カーナビが使え、AndroidならGoogle マップがメインとなるでしょうか。