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2024/7/22 10:30

【24年上半期を象徴するクルマ】スペーシア、WR-V、ランクル250はなぜ売れた?

2024年上半期に売れたアイテムを、3つのキーワードで厳選して紹介する本企画。クルマ編では、モータージャーナリスト岡本幸一郎さんによる解説とともにお送りします。

 

キーワード01【スペーシア】

昨年11月に発売されたスズキの軽ハイトワゴン「スペーシア」の新型(3代目)がヒットしています。2024年の1月から3月期では、なんとトヨタのカローラシリーズを上回る販売台数を記録した月も。そして、2024年5月の販売台数ではN-BOXを上回る1万5160台を記録しています。

 

「(初代まで遡ると)もともとハイトワゴンに火をつけたのはダイハツの『タント』(2003年発売)で、各社も後を追い、スズキも『パレット』(2008年発売)を送り出しました。いち早く両側スライドドアを取り入れたのがポイントで、当時としては画期的。この『パレット』がモデルチェンジの際に『スペーシア』に名前変更されました」(岡本さん)

 

軽自動車の王者であるホンダ「N-BOX」に、スペーシアはどのように挑もうとしているのでしょうか?

 

「スペーシアがN-BOXに上回っているかな、というポイントが2つあります。1つは全車マイルドハイブリッド化を進めていて、出足が軽やか。燃費にも効いています。もう1つは先進運転支援装備です。軽自動車のユーザーさんの意識もだんだん変わってきて、軽自動車も安全性が高いほうがいいと考えるようになってきました。N-BOXも十分に優れた装備を搭載してますが、スペーシアはカメラだけでなくミリ波レーダーも搭載しています」(岡本さん)

 

スペーシアは燃費と安全装備の2つで軽自動車界を席巻しそうです。

 

キーワード02【ホンダ「WR-V」】

2024年3月に発売されたホンダのエントリークロスオーバーSUV「WR-V」は、発売1か月で約1万3000台を受注し、月間の販売計画台数の4倍以上となる立ち上がりを見せました。

 

「ホンダには小型SUVの『ヴェゼル』や新興国向けの小型SUVなどもありますが、さらに多くの人に使ってもらえるようなニューモデルとして企画されました。特徴的なのは、日本、インド、タイの3か国で共同開発され、インドで生産されているということ。開発期間も非常に短縮でき、コストも下げることができます」(岡本さん)

 

ヴェゼルとはどのような差別化が図られているのでしょうか?

 

「まず見た目の印象が全然違います。中身も違っていて、ヴェゼルはハイブリッドもあれば、先進的な四駆もあるんですけど、このWR-Vは割り切ってガソリンエンジンのFFのみの設定になってます。こうすることでより低価格を実現できている」(岡本さん)

 

1番安いグレードで209万8800円ということで、普通乗用車でコンパクトなSUVが欲しい人には有力な選択肢となっています。

 

キーワード03【ランクル狂想曲】

トヨタの「ランドクルーザー」は、2024年4月に新型「ランドクルーザー250」が発売され、予約が殺到。グレードによっては納車が来年ということも。

 

「今まで『プラド』(ランドクルーザー150)があったんですけど、年々高級になりすぎて、フラッグシップのランドクルーザー300の弟分のような存在になってしまった。トヨタ的には”ランクルのライトデューティー系”という原点回帰を図ろうというコンセプトをもとに企画されました」(岡本さん)

 

300の基本的なプラットフォームを用いつつ、より悪路走破性や質実剛健さを追求している250。その人気は非常に高まっています。

 

「まず売ってもらえないみたいですね(笑)。知り合いでディーラーに行った人が、『うちのお店で何か買ったことありますか』とか、『ランクルを持ってますか』とかいろいろ聞かれたそうです」(岡本さん)

 

300を狙っていた人が250に変えようと思ったものの、諦めてやっぱり300を待つことにした、というエピソードもあり、ランクルに振り回されている人が続出しています。

 

また、個性が立っている車でいうと、三菱自動車のピックアップトラック「トライトン」(2024年2月発売)も好調。先行注文を受け付けたところ、2月13日時点で1300台半ばと月間販売目標台数の6倍以上にあたる注文があったとのことです。

 

「多分僕の予想では3000台近く行っていますね(補足:2024年6月3日時点で2500台を突破)。本来ならそこまで売れる車でもないです。でも、実際トヨタの『ハイラックス』もコンスタントに売れていますし、強い個性を持つものは一定数、絶対欲しい人がいるんですよね」(岡本さん)

 

個性的なものから王道のものまで、上半期はバラエティ豊かな車種に注目が集まりました。

 

GetNaviTVでは下半期のトレンド予測を7月下旬に公開予定です。そちらもぜひチェックしてください。

まとめ/柚木安津