一般的な月謝制スポーツジムに入会しても、なかなか行く時間がない。入会してもすぐに飽きてしまう。あるいはピラティスやホットヨガもちろん、格闘技系エクササイズや米国で大人気のスピニングもかじっておきたい――。そんな悩みや希望を持つ自分に合わせてジムが選べたらと思っている方はいませんか?
1つのスポーツジムやヨガスタジオに固定せず、好きなフィットネス・エクササイズを幅広く楽しみたいという思いは、著者が住むアメリカのニューヨークやサンフランシスコの人々の間でも見られます。特に「運動している自分が大好き」なアメリカ都市部の若者は、スタバより多いかもしれないヨガ教室やフィットネススタジオを自分の都合に合わせて使いこなしたいというニーズを強く持っています。そこにうまくヒットしたのが、ニューヨーク発のオンラインサービス「ClassPass(クラスパス)」です。
メンバーになれば、提携しているヨガスタジオやスポーツジム、フィットネスにボクシング、そして格闘技などのレッスンをどこでも使えるサービスです。アメリカの各都市のほか、イギリス、カナダ、オーストラリアでも展開中で、利用可能な店舗は世界で8000店舗以上あるとのこと。
月額15ドル、45ドル、60ドル、115ドルのメンバータイプがあり、それぞれ利用できる回数や、同じスタジオ利用の制限回数が決まっています。例えば、45ドルタイプは1か月間で異なるスタジオのレッスンが3つ受けられる仕組み。厳密には、回数ではなくポイント制(英語ではCreditと呼んでいます)になっていて、1クラス通常8ポイントが必要のところ、時間や人気度に応じて必要ポイントが少なくなっていたりします。
サービス開始当初はニューヨークのフィットネスが月額99ドルで無制限に利用可能というモデルだったようで、それで全米で一気に有名になったそうです。その後は無制限利用はできなくなり、利用限度も制限されて、費用的には一般的なレベルに戻っています。その流れを受けてか、初期の立ち上げ時の触込みに比べ、現在は「同じスタジオに通う回数が制限される」「使わないポイントの翌月繰越しはできない」「退会する際の引き止めが激しい」などの否定的な意見も見られます。ちなみに筆者も退会を心に決めたものの、あの手この手の引き止め策にまんまとはまってしまい、月15ドルで1回利用コースの最低ラインをずっと続けています。
とはいえ、スタジオ側にもかなりのメリットが見てとれます。まずはマーケティング的な意味合いです。星の数ほどあるスタジオから選択してもらうためには、実際に使ってもらうのが一番。単独にマーケティングするのは大変ですが、このクラスパスのプラットフォームに参加することで、新しいお客さん獲得の可能性が広がります。
次に、イールドマネジメント的なものです。ホテルや飛行機の販売と同じ考えですが、空き枠をいかに埋めて収益を最大化するかという点で、空いている時間や直前のレッスンをクラスパスで解放することで1人でも多くのお客様を呼び込むことができます。
好きなクラスだけつまみ食い
ニューヨークやサンフランシスコでは、ジムやスタジオは目的別に細分化されていることが多い「あれもこれもやりたい」という場合には不便です。ワークアウト方法も多種多様で、エクササイズの流行もすぐに変わるので、ジムを選ぶのも一苦労。その点、クラスパスは選択肢が多く、自分の気分で選べるので魅力的です。3月19日時点で著者が登録しているサンフランシスコ・ベイエリア(サンノゼなど含む)の選択可能なスタジオ数は499件ある一方、本社があるニューヨークではシティーエリア(ブルックリンなどを除く地域)だけでおよそ1000件もあります。ヨガにしても、インストラクターの個性やスタイルがとても重要視されるので、好きなクラスだけつまみ食いできるのは極めて都合が良いのです。
また、都市をまたがっての利用も可能なので、出張中や旅行中にも気軽に使えることも人気の理由の1つ。シリコンバレーも広いのですが、サンフランシスコ市内に住みながらサンノゼのオフィスに通う人も少なくありません。その場合、自宅周辺やオフィス近くのジムを利用できるという自由度はとても心強いですね。