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2018/6/6 19:00

フランス都市部で飼育者増加中! でもなぜ「ニワトリ」なのか!?

わずかなスペースで飼えて、世話も比較的簡単――。昨年起きたEU内の輸入鶏卵の汚染騒ぎや、その過酷な飼育環境が度々クローズアップされ、自宅の庭やアパルトマンの共有スペースでニワトリ(雌鳥)の飼育を希望する人が増えています。事実、筆者も自宅で2羽ニワトリを飼っています。では、自宅でニワトリを飼育する利点は、どのようなものなのでしょうか? エコ面、政策面、安全面から紹介していきます。

 

「平飼い飼育」で鶏のストレス軽減

フランスに住む筆者は、近年この国で「平飼い飼育(平たい地面などで放し飼いにすること)」されているニワトリの卵や、オーガニック鶏卵を求める人が増加していることを庶民レベルで感じています。EUでは2012年以来、「バタリーケージ(動けない狭いケージ内で飼育されたニワトリ)」が禁止されていますが、規模が小さいところや繁殖農家などには適用されず、鶏卵の年間生産量がEUトップのフランスでは、「バタリーケージ卵」が生産数の半数以上を占めているのが現状です。

 

そのフランスでも、ついに2022年までに店頭に並ぶすべての鶏卵を「ケージフリー」の平飼いや放し飼いの卵にするとマクロン現大統領が発表したことを英タイムズ紙が伝えています。諸外国などの風潮や消費者ニーズを見れば、この流れはある意味当然のことなのかもしれません。

フランス国立卵プロモーション委員会によると、フランス国民の年間消費量は一人当たり平均220個。一人当たりの年間消費量が世界第3位の日本(329個)には及びませんが、世界全体の平均卵消費量は145個なので、多い部類であると言えます。具体的に見ると、84%の国民が少なくとも週に1回は食べると回答。「ほぼ毎日食べる」と回答した44%のうち6%は毎日食べる一方、38%が週に2~4回食べると回答しています。

平飼いや放し飼いのニワトリは、太陽の光を浴びながら地面をつつき、砂浴びをし、止まり木に上り休みます。産卵も、薄暗く静かな隠れた場所で行うのが本来の行動。鶏卵農家でこの環境を作るのは難しいことかもしれませんが、ニワトリ自身のストレスが軽減されることは筆者の経験から確かだと言えます。私は自宅で2羽飼っていますが、ニワトリたちが夕暮れどきにのんびり過ごす、のどかで牧歌的な雰囲気は、何とも穏やかな気持ちにしてくれます。

また、人間の食べ残しを餌にすることで、食品廃棄を減量できるというエコロジカルな面も注目すべき点。現地メディアの報道によれば、1羽につき、年間150~160kgの廃棄減量が期待できるそうです。こうした観点から購入に助成金を出す自治体まで登場し、この発表を受けて、ニワトリ飼育はますます注目を浴びる形となりました。

ほのぼのとした光景と教育的な利点

より安全な卵を求める消費者の動きは、2017年のオランダから輸入された「鶏卵汚染スキャンダル」が追い風にもなっています。食肉を始めとした相次ぐ食品スキャンダルに国民はウンザリ。また、昨今の健康ブームと相まり、「ベジタリアンメニュー」への関心も高まっていることから、良質なたんぱく源として高品質な卵を求める人も増えているのです。自宅におけるニワトリの飼育は必然的な流れであったのかもしれません。

 

また、ニワトリの飼育や卵の収穫などは子どもにも参加しやすく、食育や情操教育にもつながるでしょう。大人にとっても、ニワトリと日々接することは、都市に住みながら田園にいるかのような雰囲気が楽しめ、ほのぼのとリラックスした時間を過ごせるという利点もあると筆者は思います。