食の都サンフランシスコで、フードコンサルティング会社として25年間、350以上もの新商品を開発し、コストコをはじめ国内外の大手食品会社から地元レストランのシェフに至るまで、幅広いクライアントを持つCCD Helmsman。今回、筆者は現地で同社のパートナーを務めるハースさんにアメリカの食のトレンドについてお聞きしました。この記事では、現在アメリカで話題となっている食のトレンド、そして日本にもやってくるかもしれない古くて新しい食べ物を2回にわけてお伝えします。
話題沸騰中の「プラントベースド・フード」
食のトレンドとしてアメリカで最も話題になっているのが、プラントベースド・フード(植物由来の食品)。健康志向の高まりを受けて、肉から野菜中心の食事へ変えようという人たちの間で人気です。ただし、日本のようなタンパク質、野菜、炭水化物のバランスがとれた食事とは少し異なり、肉、乳製品、小麦をできるだけ避け、タンパク質、炭水化物、ビタミンなど、必要栄養素のすべてを野菜から摂ろうというのがこのトレンドのベースにあると言えます。
特に現在、人気急上昇中なのがキノコ類。エリンギや椎茸をベーコンやビーフジャーキーのような風味や食感に加工することで、お肉のような満足感が得られる食べ物です。キノコ人気の背景には従来、宗教上や動物愛護の観点からベジタリアンたちが食していたものが、健康をキーワードに、ほかの人たちにも受け入れられるようになったことがあります。
そのため、キノコのプラントベースド・フードはその日の体調や週の食事内容に応じて、野菜中心の料理を選択する「プチベジタリアン」とも言えるような消費者のニーズにうまく応えているとのこと。「野菜中心の食事に変えたいけど、お肉の味や食感はあきらめたくない」、「最近、お肉を食べすぎているから、今日は野菜の日」と言った具合で選ばれているそうです。例えば、エリンギで作られたベーコンは、サラダやパスタのトッピングにもピッタリ。「ベーコンだと思ったら、実はエリンギだった!」ということがあるかもしれません。さらにフレーバーも豊富で、にんにく黒コショウ味、胡麻入り生姜味、スイートバルサミコ味、ピリ辛タイ風味など、どれも一度は試してみたくなるラインナップとなっています。
小麦ではなく豆! パスタの材料も変わる
ほかのプラントベースド・フードとして人気の食品には小麦の代替品があります。まずは豆類ですが、豆類と言うと豆腐や味噌のような大豆加工品を思い浮かべる人が多いのではないでしょうか? しかし、アメリカのフードショーで話題なのは、レンズ豆や黒豆で作られたパスタなんです。豆のパスタは小麦と比べて、良質な炭水化物とタンパク質やビタミン類が豊富。小麦はもちろん、肉などの代替品としても様々な豆パスタが開発・製造されているんですね。
最近では枝豆でできたパスタもあります。日本で言えば、「メタボが気になるから、今日のお昼は枝豆のうどんや焼きそばにしておこう」と言ったような感覚かもしれません。そのほかにも小麦の代替品としてサツマイモ粉、カリフラワー粉、カボチャ粉、そしてタピオカの原料でもあるキャッサバ芋からできたキャッサバ粉などもあるそう。このような粉を使い、カリフラワー粉ベースのピザ、サツマイモのパンなども販売されています。
海藻は身体にも環境にもいい
プラントベースド・フードは野菜ばかりではありません。もうひとつ注目を集めている植物に海藻類があります。日本ではわかめ、海苔、昆布など、当たり前のように食卓に上っていますが、アメリカで海苔に代表されるような海藻類が受け入れられてきたのは最近のこと。今後は従来のタンパク質や炭水化物に替わるものとして、海藻類や水生植物の需要がますます高まっていくのではないかと言われています。
海藻類や水生植物は、野菜と比べて、木を切って田畑を確保したり水やりをしたりする必要もないので、「最も環境にやさしい食物」とも言われており、環境に対する悪影響を懸念している消費者からの支持も高くなっています。現在マーケットでは昆布ジャーキー、抹茶風味の昆布麺(写真上)、睡蓮の種のポップコーンなどが販売中。睡蓮の種のポップコーンには塩やチーズ、チョコレートといった味のバリエーションも揃い、手軽でヘルシーに楽しめるうえ、環境にもやさしいスナック菓子として人気が出始めています。
まとめ
アメリカでは以前から和食が広まっていましたが、豆や海藻類を使ったプラントベースド・フードの流行は、和食の素晴らしさを改めて認識させてくれます。アメリカ人だけではなく、私たち日本人も食生活を見直すべきかもしれません。
後編でもアメリカの最新の食トレンドをお届けします。健康志向を意識しつつも、現代人の生活に合わせた乾燥サラダや、若者の間でヒットの予感を漂わせるマルチセンサリー・フードなど、最新の興味をそそる食品が登場します。