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2019/4/15 15:15

「アフリカのごみ問題をなんとかしたい!」――日本とアフリカ35ヵ国が問題解決に向けて連携【JICA通信】

日本の耳寄り情報だけにとどまらず、世界各国の気になる話題も積極的にお届けしているGetNavi web。そうした海外リポートを続けているうちに、日本が世界に向けて行っている貢献活動についても気になってきました。

 

そこで、日本の政府開発援助(ODA)を実施する機関として、開発途上国への国際協力を行っているJICA(独立行政法人国際協力機構)に協力いただき、その活動の一端をシリーズで紹介していく「JICA通信」をスタートします。今回は、アフリカのゴミ問題の解決を目指し、JICAと日本の環境省、そしてアフリカ各国が連携して行っている取り組みをご紹介します――。

 

きれいな街と健康な暮らしの実現を目指して

エチオピアの首都アディスアベバにある、国内最大の廃棄物埋立地コシェ処分場。2年前に、高さ50メートルに達したごみ山が崩れ、200名以上が亡くなったこの処分場で今、環境に配慮した日本の埋め立て技術を活用した改善事業が始まっています。アフリカの廃棄物政策を担う行政官たちがこの場所を視察し、自国での取り組みに生かそうと熱心に説明に聞き入り、質問を投げかけていました。

 

昨年12月に実施されたこのエチオピアでのスタディーツアーは、アフリカのごみ問題の解決に向け、JICAと日本の環境省が、横浜市や国際連合人間居住計画(UN-Habitat)などの国際機関とアフリカ各国に呼びかて2017年に立ち上げた「アフリカのきれいな街プラットフォーム」の活動の一環として行われました。

 

↑エチオピアにあるコシェ処分場を視察するアフリカの行政官たち

 

アフリカは近年、都市人口の急増で廃棄物処理サービスの整備や提供が追い付かず、廃棄物管理が大きな課題となっています。問題の解決に向け、知見や経験を共有する仕組みの必要性が認識されるなか、アフリカ35ヵ国・64都市(2019年3月現在)が加盟するこのプラットフォームを活用して各国が学び合い、連携が強化され、アフリカの街をきれいにするための取り組みが前進しています。

 

 

エチオピアで日本の埋め立て技術「福岡方式」を実地研修

コシェ処分場では、日本の埋め立て技術「福岡方式」の開発を手がけたNPO法人廃棄物管理アドバイザーネットワークの松藤康司理事長(福岡大学名誉教授)が参加者に対し説明を行いました。

 

福岡方式として知られる「準好気性埋立構造」という埋め立て技術は、1970年代に福岡市と福岡大学が共同で開発しました。埋立地の底に集排水管を通して外気を取り込み、土壌の微生物を活性化させることで廃棄物の分解が促進され、メタンガスなどの有害物質の発生も抑制されます。ごみ山の地盤を安定させ、崩落を防ぎます。低コストで建設・維持できることから、途上国にも導入が可能で、広く普及が望まれる技術です。

 

「(処分場における)微生物の種類、ガスの量、ガス管の建て方による効果の違いといった質問が飛び出すのは、日々、廃棄物に向き合っている実務者だからこそ。彼らが共通して直面する処分場の管理問題には解決策を示す教科書はありません。福岡方式の導入が進むこのコシェ処分場の現場を見て、参加者同士、多くの情報を共有できたことは大変意義深いことです」と言います。松藤理事長は長年、JICAで廃棄物管理の技術指導に携わるなか「技術移転で最も重要なのは人材育成。そのためには、『やってみせる、一緒にやる、納得させる』の3ステップを現場で実践しなくてはいけない」と強調します。

 

↑コシェ処分場の「福岡方式」による改善事業の視察に訪れたスタディーツアーの参加者と松藤理事長(中央)

 

エチオピアでのスタディーツアーに参加したガーナ・アクラ市役所のノイ・アドゼマン・ソロモン・ヌエティ廃棄物管理局長は、「松藤先生から直接、福岡方式の施工や管理方法について学べたことは大変貴重な経験です」と言います。官民連携で運営するペットボトルのリサイクル工場の見学など、ツアーを通じて得た学びは、アフリカの街が直面する廃棄物管理に関する課題解決に必ず役立つ、と今後を見据えます。

 

↑ガーナ・アクラ市役所のノイ・アドゼマン・ソロモン・ヌエティ廃棄物管理局長

 

横浜で持続可能な廃棄物管理システムを学ぶ

日本の自治体が高度成長期に経験したごみ増加や公害対策への対応、住民との協働の取り組みといった経験も、アフリカのごみ問題の解決に生かされています。

 

アフリカのきれいな街プラットフォームの主催機関の一つである横浜市に、今年2月から3月にかけての約1ヶ月間、アフリカ11ヵ国、13人の行政官が集まりました。ごみ焼却工場や最終処分場の見学をはじめ、住民のごみ出しの様子や子どもたちへの環境学習など、自治体の廃棄物管理のノウハウを学びました。

 

↑ごみの集積場所を見学するアフリカの行政官たち

 

参加者の一人、トーゴ共和国ロメ市役所のエヌモジ・コジョ・ナボラ・ブヌゥ環境課長は、研修に参加し「自国の廃棄物の分別やリサイクルに対する制度が不十分なことに気づきました」と言います。今後、制度の改善や廃棄物管理に関するデータベースの作成などに着手し、2023年までに廃棄物リサイクル率を現在の2%から20%に引き上げる目標を掲げます。

 

↑横浜での研修でごみの分別を実践するトーゴ共和国ロメ市役所のエヌモジ・コジョ・ナボラ・ブヌゥ環境課長

 

研修をサポートした横浜市資源循環局の木村利恵政策調整課担当課長は「横浜市のさまざまな取り組みを参考に、各国の事情に合わせて廃棄物管理の方法を考えてもらえれば」と、同じ立場の行政担当者たちにエールを送ります。同時に、アフリカへの支援に関わることで、当たり前と思っている横浜市の廃棄物管理の仕組みが長い経験の上に成り立っていることをあらためて認識し、職員のモチベーション向上にもつながっていると述べます。

 

アフリカ開発会議(TICAD7)に向けて

今年、2019年8月に横浜市で開催される第7回アフリカ開発会議(TICAD7)に合わせて、アフリカのきれいな街プラットフォーム加盟国の総会も予定されています。アフリカ各国で活動する青年海外協力隊も協力して作成が進む住民啓発や環境教育を促進するためのガイドブックなども発表される見通しです。

 

これまでのプラットフォームの取り組みを振り返り、JICA地球環境部の近藤整課長は、「設立時の24ヵ国から一年足らずで加盟国は10ヵ国以上増え、アフリカ各国の廃棄物管理への関心の高まりとプラットフォームへの期待を感じます」、と述べます。また、今後に向け「アフリカ各国の実践からの学び合いや横のつながりを重視しているのがこのプラットフォームのユニークな点です。加盟国や都市が協働するきっかけをつくり、国境や組織の種別を超えた双方向の『知の循環』をプラットフォームが促進することで、アフリカのきれいな街の実現、ひいてはSDGsの達成に貢献していきたい」と意気込みを示しました。

 

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