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2019/8/26 10:38

「パプリ」の稲作技術で豊かな国づくりに期待――JICAオフィシャルサポーター高橋尚子さんのマダガスカル訪問(後編)【JICA通信】

日本の政府開発援助(ODA)を実施する機関として、開発途上国への国際協力を行っているJICA(独立行政法人国際協力機構)に協力いただき、その活動の一端をシリーズで紹介していく「JICA通信」。今回はJICAオフィシャルサポーター高橋尚子さんのマダガスカル訪問(後編)をお届けします。

 

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南半球に位置するマダガスカルは、高橋尚子さんが訪問した6月、ちょうどコメの収穫時期を迎えていました。澄み渡った青空のもと、高橋さんは農民たちと一緒に、鎌を握り、たわわに実った稲穂を刈り取りました。

 

ここは、JICAの「コメ生産性向上・流域管理プロジェクト(PAPRIZ(通称パプリ)フェーズ2)」が指導を行っている水田の一つです。2009年からJICAはマダガスカルでコメの増産を目指した技術協力プロジェクトを実施しています。

 

↑刈り取った稲穂を手に笑顔を見せる高橋さん(中央)

 

マダガスカルで稲作と言えば「パプリ」

マダガスカルはアフリカ有数のコメの生産国で、コメの消費量は国民一人当たり約120キロと日本の2倍です。しかし、増加する人口にコメの供給が追い付かず、一部を輸入に頼っています。

 

マダガスカル政府がコメの完全自給を目指すなか、プロジェクトでは、苗の植え方や肥料の与え方を改善するなど、農民たち誰もが活用でき、生産量を拡大できる稲作技術の普及を図ります。現地ではプロジェクト名から、この稲作技術は「パプリ」と呼ばれています。

 

パプリ技術を活用した水田ではコメの生産量が、従来と比べて倍増。マダガスカルの人気コメディアンが、TVコマーシャルでこの稲作技術を紹介していることから、パプリの名は国民に広く知れ渡っています。

 

↑パプリ技術を紹介するマダガスカルの有名コメディアンのラジャオさん

 

農民たちと一緒に研修に参加。マダガスカルのおコメも堪能

高橋さんも一緒に参加した農民研修では、パプリ技術の活用で生産量がどれだけ増えたかを農民たちが実際に計測しました。プロジェクトでは対象とする県で、これまで約1000名の農民トレーナーを育成し、年間延べ3万7000人以上の農民たちがこの農民トレーナーからパプリ技術の指導を受けています。

 

↑現地製の脱穀機の使い方を指導する農民トレーナー(左端)

 

研修で脱穀機の使い方を学ぶ農民たちが稲穂を飛ばしながら熱心に作業する様子に、使い勝手はどうですかと声をかけながら農民たちと交流する高橋さん。「研修に参加したみなさんが積極的で、パプリへの期待が伝わってきました。ぜひ、それぞれの村にこのパプリ技術を伝えて、マダガスカルを豊かでいい国にしてください」と農民たちに笑顔で語りかけました。

 

↑高橋さんは、研修に参加した農民やパプリ技術の普及をサポートする日本人専門家らと一緒にマダガスカルのおコメも頂きました

 

マダガスカルは国民の7割以上が稲作に従事しているとされています。高橋さんは、「JICAの技術協力で開発された稲作技術が現地で根付き、マダガスカルの成長や生活向上を後押ししているとわかりました。5年後、10年後、この地に戻って、変化をみてみたいです」とプロジェクトのさらなる進展に期待を表します。

 

高橋さんが今回訪れたコメ生産のプロジェクト現場は、首都アンタナナリボから車で約3時間半、街中を抜ける際には、すさまじい渋滞にも巻き込まれました。経済成長に伴う交通量の急増を目の当たりにし、「マダガスカルには都市計画といった課題もあり、まだまだ支援が必要なことを肌で感じました」と今回の訪問を締めくくりました。

 

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JICAオフィシャルサポーター 高橋尚子さん