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2019/8/30 14:00

「アフリカとつながる~今、伝えたいこと」:MISIAさんがザンビアでJICAの活動を視察【JICA通信】

日本の政府開発援助(ODA)を実施する機関として、開発途上国への国際協力を行っているJICA(独立行政法人国際協力機構)に協力いただき、その活動の一端をシリーズで紹介していく「JICA通信」をお届けします。

 

「ザンビアではストリートチルドレンや難民の子どもたちに出会い、その生活ぶりに触れました。子どもたちが直面する問題をすぐに解決する答えはないし、子どもたちにとって何が幸せな人生か、答えもありません。幸せな人生も人それぞれ違います。でも、誰もが将来、自分の人生を振り返って幸せな人生だったと思えるようになるには、人生のさまざまな局面でより良い選択が自分の意志でできることが必要だと思うんです。そのために、子どもたちには教育が大事だとあらためて感じました」

 

そう語るのは、これまで10年以上にわたりアフリカの子どもたちをサポートする活動を続けている歌手のMISIAさん。今日8月30日まで横浜で開催されているアフリカの未来について話し合う「第7回アフリカ開発会議(TICAD7)」の名誉大使も務めています。

 

MISIAさんは今月、TICAD7に先立ち、ザンビアを訪れ、ストリートチルドレンが暮らす児童養護施設や、JICAが支援を続けているザンビア大学獣医学部、青年海外協力隊員が活動する難民キャンプの小学校などに足を運びました。子どもたちと交流を深めるなか、教育に対する支援の大切さをより一層強く感じたと振り返ります。

 

↑ザンビアのメヘバ難民キャンプを訪問し、子どもたちにサッカーボールをプレゼントするMISIAさん

 

メヘバ難民キャンプで子どもたちと交流

ザンビアは、1964年の独立後、一度も内戦が発生しておらず、アフリカの中では比較的安定した国です。地続きで8ヵ国と国境を接する内陸国で、アンゴラやルワンダなどから逃れた多くの難民を受け入れてきました。今回、MISIAさんは、約2万4千人の難民が暮らすとされるメヘバ難民キャンプを訪問。MISIAさんが、難民キャンプを訪れたのは初めてでした。

 

↑MISIAさんは、一緒にアフリカの子どもたちを支援する女優の浅田美代子さんと共に(いずれも一般財団法人 mudef理事)、ザンビアを訪問しました

 

「出会った難民の人たちの中には、2週間前に着いたばかりの人もいました。コンゴから、2ヶ月かけて歩いてやって来たと聞きました」と過酷な状況を目の当たりにします。メヘバ難民キャンプがある地域には、武力紛争、人権侵害といったものから逃れてくる「難民」と、過去に難民としてザンビアに来て、その後も、母国に帰らずにザンビアに残ることを希望した「元難民」、そして地元のザンビアの人が一緒に暮らしています。MISIAさんは、難民キャンプ内の学校で教員として活動するJICA海外協力隊員の授業に参加し、教育支援の現場を視察。こんな場面に出会ったと言います。

 

「難民と地元ザンビアの子どもたちがいっしょに学ぶ教室内で、みんな、とても仲がいいんです。隊員は授業中、子どもたちに『みんなはここにケンカをするために来たの?』と聞いたら、子どもたちは大声で『違う!』と言うんです。『じゃあ、いろんな国の人とみんな仲良くするために来たの?』と聞いたら『YES!』と声を合せて答えるんです。難民問題を考えることは、平和を考えることなんだなと思いました」

 

また、MISIAさんは、「隊員の皆さんが現地の人たちのなかに溶けこもうと努力し、日々悩みながら前に進もうとする姿にも心を動かされました」と語ります。

 

↑メヘバ難民キャンプの小学校では、JICA海外協力隊の大倉隊員による音楽の授業を視察

 

↑メヘバ難民キャンプの中学校でコンピューターを教えている森下隊員(右)と、小学校で音楽などを教えている大倉隊員(左)とともに。MISIAさんは著作の絵本『ハートのレオナ』を二人にプレゼント

 

アフリカの現実を多くの人に知ってもらいたい

MISIAさんは、2007年に初めてケニアのスラムを訪れた時、生まれてすぐに捨てられたり、売られたりする子どもがいることを知りました。さらに売られた先で虐待を受けたり、教育を受けられなかったりということも多くあると聞きました。そのような状況で、子どもたちにとっては、飢えや痛みも苦しいが、何よりも「孤独」が彼らの心を傷つけているのではないかと感じたとのこと。「だとしたら、その時答えはなくとも、まずは人々の話を聞いて、現実を知っていかなければならないと思ったんです」と言葉を続けます。

 

今回訪問したザンビアの首都ルサカ市内でも、ペットボトルに入れたシンナーなどを吸って、空腹を紛らわせる子どもたちがいました。当然、身体にも脳にも悪影響を及ぼします。そんな子どもたちを見て「もし助けられる親や大人がいれば、こうはならずに暮らせていたのではないか」と感じたMISIAさん。「必要なのは、大人たちの関心と、愛、そして具体的な対策です」と現実を知ること、そして、伝えることの大切さを強調しました。

 

↑ザンビアのNGOが支援する児童養護施設NSANSAビレッジで子どもたちと一緒に

 

また、アフリカが急成長していることにも触れ、「現在の『支援する側』『される側』という関係は、10年後になくなっているかもしれないし、そうあって欲しいです」と、どちらか一方が助けるのではなく、アフリカと一緒に歩んでいきたいと語ります。

 

今回MISIAさんが訪れたザンビアを始め、アフリカの国々は、まだまだ「遠い国」と感じている人も多いかもしれません。まずは、「現実を知ろうとして欲しい」と言うMISIA さん。「今月30日まで開催されるTICAD7をきっかけに、ぜひアフリカにも目を向けてください」と、多くの人たちに呼びかけます。

 

※今回の記事は、2019年8月29日(木)に放送されたBS日テレ「深層NEWS」の収録に同行取材、そこで語られた内容です。

 

MISIA(ミーシャ)

歌手。1998年、「つつみ込むように…」でデビュー。2007年に初めてアフリカを訪れ、10年には同じ志を持つアーティストと共に一般財団法人「mudef」を設立。当初から理事も務めている。同団体は、音楽とアートを通じて世界の問題を解決することを目的としており、マラリア防止の蚊帳を配布する「ラブ イズ フリー キャンペーン」、ケニアのスラム街・キベラにある小学校のマゴソスクールを支援する「プロジェクト・マゴソ」のほか、東日本大震災の支援など国内外で活動している。

 

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