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2019/10/11 19:00

日本でも食べれる! シリコンバレー発の「シェアキッチン」が食のイノベーションを狙う

スタートアップの聖地・シリコンバレーでは、シェアオフィスやコワーキングスペースのコンセプトが食の世界にも広がっています。その一例が「Kitchen Town」。同社は、IT業界ではよく見られるスタートアップの支援をするインキュベーターモデルを本格的に食領域に適用したことで知られており、スタートアップと国内外の企業を繋ぐ提携事業でも実績を上げています。

 

なお、Kitchen Townは日本でも注目度が増しており、日本でOisixといった食品宅配を行うオイシック・ラ・大地が今年8月に新設した「Future Food Fund」はKitchen Townと連携し、フードテックベンチャーの商品を日本の消費者に届けるサービスを開始しました。グローバルで名を上げるKitchen Townの取り組みを現地からレポートします 。

 

IT業界のインキュベーターモデルを食の世界に

サンフランシスコとシリコンバレーの中間地点、サンマテオの住宅街に突如として現れる、倉庫リノベーション風の建物がKitchen Townです。「IT業界のインキュベーター・モデルを食の世界にも適用しよう」という発想で、老舗クッキーメーカーの工場を改装し、2014年に設立されました。

 

一見すると、ここはセレクトショップを併設したスタイリッシュなカフェのように見えます。しかし違うのは、ここの主役はあくまでキッチンだということ。シェアオフィスならぬシェアキッチンをガラス越しに覗くと、デスクにパソコンが並ぶ代わりに、カウンターに色鮮やかな食材が並んでいるのが見えます。業務用の大型オーブン、ウォークイン冷蔵庫や冷凍庫、食材の保管スペースや、グルテンフリー専用の作業場など、コマーシャル・キッチンに必要なものはすべて完備。十分にスペースが確保され、機能的にデザインされています。

 

このキッチンをいくつかの入居テナントが共同で利用しています。ここで作られたものが、Kitchen Town内のカフェで一般の人たちに提供されているのです。

 

フードイノベーションを促進する取り組み

Kitchen Townでは、レンタルキッチン以外にもフードイノベーションを促進する様々な取り組みを行なっています(下記)。

 

・商品の実用化に向けた研究開発ラボ

・大手企業のリソースを導入するためのパートナシップ・プログラム

・投資家や大学関係者とのネットワーキングや勉強会などの開催 

 

サンフランシスコ市内にはイベントや勉強会のためのスペースを設け、ベルリンにはサテライトオフィスを開設するなど、地元発のスタートアップがKitchen Townの持つグローバルなリソースを活用してビジネスを拡大できるよう、ありとあらゆる支援を行っているのです。

 

以前からサンフランシスコには、フード業界で起業する低所得層の女性を支援する「La Cocina」のようなNPO団体は存在していました。フードビジネスで起業するためのシェアキッチン施設はほかにもありますが、起業支援だけに留まらず、食領域のイノベーションを促進する本格的なインキュベーション施設はシリコンバレーといえどもまだ希少です。

現在、米国では代替肉に代表されるような「IT×食」のフードテック関連商品やサービス、グルテンフリーやアレルギーフリー、廃棄食材を利用した商品や昆虫食など、大手が参入し難いニッチな領域で、健康や環境に配慮した新しい食品の需要が高まっています。

 

Kitchen Townはこのような新しいアイデアをもつ野心的なスタートアップが集結する場となり、フードイノベーションを牽引する存在となりました。支援イノベーション数は327件、スタートアップの調達資金は約55億円など実績を積んでいます。現在も入口の黒板に記された30社近いスタートアップが、Kitchen Townと協働してビジネスのスケールアップに励んでいるんですね。

 

日本のスタートアップも挑む!

Kitchen Townには、日本人起業家が立ち上げたフードテック企業の「Base Food」や「Ramen Hero」なども参加しています。

 

Base Foodは世界初の完全栄養食の麺やパンの製造やサブスクリプション型のEC販売で事業を急拡大しているスタートアップ。サンフランシスコにも拠点を構え、巨大な米国フードテック市場に乗り込んできました。

 

一方、Ramen Heroは、米国の高級ラーメン市場にECで挑戦中。スープや麺、具材の調理にシェアキッチンを利用し、食材はすべて冷凍してミールキットに梱包。安価な乾麺ではなく、本格派のラーメンを自宅で手軽に食べたいと願う全米のラーメン愛好家に届けます。

 

また前述したように、日本からパートナープログラムで参画する食品宅配のOisixは、Kitchen Townが支援するスタートアップの商品を紹介・販売する事業をスタートしました。例えば、グルテンフリーのスナックバー「The Yes Bar」はOisixから日本で初めて販売が開始され、特にアレルギーを持つ子どもの親からの反響が大きく、予想以上の販売数を記録したそう。

 

シリコンバレーで成功する秘訣は「誰を知っているか」だとよく言われています。フード業界のスタートアップもKitchen Townのようなコミュニティに参画できれば、人を紹介してもらったり新規ビジネスが生まれたりとシナジーが期待できるでしょう。スタートアップ成功の裏には資金供者だけでなく、夢の実現を後押しするKitchen Townのような存在が必要不可欠なのかもしれません。

 

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