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2019/10/16 19:00

外国人もレジ袋を使うと罰金! ごみを分別しないインドはプラスチックを本当に一掃できるのか?

世界各国でプラスチックごみ対策が急がれています。なかでもインドはプラスチック一掃政策 「Plastic Ban」がいち早く打ち出され、世界のトップを走っている印象を受けます。これまで余りにもごみだらけだったインドが今後どう変わるのか、現地からのレポートです。

一度でもインドを訪れたことがある人のなかには、街中にごみが散乱し、農村へと続く道路の脇に山と積まれたごみから悪臭や、ときに煙まで上がっているのを目にしたことがある人もいるでしょう。なぜインドはごみだらけなのでしょうか?

 

1991年の経済改革でインドは飛躍的に発展し、それを背景にファストフード店が増え、中産階級の人はスマホでオンラインショッピングを利用するようになりました。「パパ・ママショップ」と呼ばれる零細小売店が多かったインドではこれまで無包装でものが売られていましたが、こうした社会の変化によってごみの量が大幅に増えました。

 

インドではごみを焼却炉で燃やすというシステムがありません。集められた色々な種類のごみはそのまま空き地に山積みされ、放置され、病気や発火の原因になっています。インドのゴミ問題について調査した本「Waste of a Nation: Garbage and Growth in India」(Assa DoronとRobin Jeffreyの共著)によると、90%のごみが未処理のまま捨てられているそう。例えば、インドの首都ニューデリー東部にあるガジプール埋め立て処分場は驚くほどの速さで高くなり続けていて、サッカー場40面分の場所が年間10メートルずつ高くなっています。

 

インドでごみ分別が進まない背景には、根強いインド人の不浄観が背景にあります。汚いごみは自分から一時も早く手放す、すなわちポイ捨てがインド人には身についています。日本人のように何種類にもごみを分別するという習慣は、インド人にはなじみません。いっそのこと、海洋汚染や感染症の原因になっている使い捨てプラスチックごみを一掃する方が手っ取り早いというわけです。

 

大きな一歩を踏み出した

「2022年Plastic Ban」というナレンドラ・モディ首相の呼びかけにいち早く答えたのは、インド最大の都市ムンバイがあるマハラシュトラ州です。1億人の人口を抱える同州では、2018年6月に使い捨てプラスチックの使用を禁止し、違反した店や個人に罰金を科しました。禁止したのはレジ袋やカップ、皿、ストローなどの使い捨てプラスチック製品です。厳格なルールのもとで、1か月も過ぎると市民は買い物用の布や綿の袋を持ち歩くようになりました。

 

罰金は初回で5000ルピー(約8000円)。小さな店の1か月分の利益に相当する額です。違反を繰り返すと最大罰金4万円と禁固刑3か月が科せられます。ムンバイでは9か月間、店主らにプラスチックを排除する講習を行い、取り締まりはGメンが行っているという徹底ぶり。

 

国連環境計画(UNEP)が2018年6月5日に発表した報告書「Single-use Plastics: A roadmap for Sustainability」によると、プラスチック製品は世界全体で約90億トンが生産され、そのうちリサイクルで再利用されたのはわずか9パーセントにとどまり、それ以外は地中に埋められるか、捨てられているとのことです。

 

同報告書の作成にはインド政府も協力し、発表イベントにはモディ首相も主催者として参加しました。同報告書に基づいてモディ首相は独立記念日(8月15日)に演説を行い、インドを使い捨てプラスチックから解放するために、独立の父・ガンジーの生誕記念日である10月2日に「大きな一歩」を踏み出すよう国民と政府機関に呼び掛けました。

 

このように、インドでは2019年10月2日から使い捨てプラスチック対策としてこれまで以上に厳しい措置を講じる予定。具体的には、ポリ袋やプラスチック製のカップ、ストローなど6品目の製造・使用・輸入を全国的に使用禁止にします。これからは外国人であろうとビニール袋を提げてインドを歩くわけにはいかないので、同国を訪れる際は注意が必要です。

 

プラスチック一掃キャンペーンの裏にある課題

インドのごみ問題を考える際、インドの社会構造的問題を避けて通ることはできません。法律上では70年前に撤廃されたカースト制度ですが、それに根ざした貧困問題がいまでもあります。農村では食べていけなくなり、家族ごと都会に出てきてごみ回収などで生計を立てているラディワラと呼ばれる人たちが何億人といるのです。なかにはごみ集積場の中にスラムを作って暮らしている人もいます。インドからプラスチック製品を一掃するということは、このような人たちの死活問題にも繋がるため、何らかの対策が急務です。

 

モディ政権はスラム対策として「ハウジング・フォー・オール(すべての人に家を)」という政策を進めていて、2022年までに達成したいと表明しています。ムンバイのあるインド西部マハラシュトラ州は、2018年に低価格住宅を新たに100万戸建設する計画を発表し、スラム街の排除を目指していますが、スラム住民が家に住み替えるだけでは抜本的な貧困解決にはならないでしょう。技術指導などをして、スラムの住民がゴミ拾いではなく、収入の良い職業を選択できるようにすることが必要です。

 

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