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2019/12/3 17:00

JICAオフィシャルサポーター 伊達公子さんが女性視点のジェンダーフリーイベントに登壇【JICA通信】

日本の政府開発援助(ODA)を実施する機関として、開発途上国への国際協力を行っているJICA(独立行政法人国際協力機構)に協力いただき、その活動の一端をシリーズで紹介していく「JICA通信」。11月7日、8日の2日間、女性をはじめとした多様な人々が活躍できる社会の創出を目指すイベント「MASHING UPカンファレンス」が東京都渋谷区で開催されました。JICAから、オフィシャルサポーターの伊達公子さんと、浦輝大職員(青年海外協力隊事務局 「スポーツと開発」担当)が登壇、それぞれトークセッションを展開し、ジェンダー平等を目指した取り組みやスポーツを通じた支援について紹介しました。

 

↑15年以上に渡りJICAオフィシャルサポーターを務める伊達公子さんが登壇

 

伊達公子さんが語った「挑戦」とは

11月8日のトークセッションには、プロテニスプレーヤーとして世界で活躍したJICAオフィシャルサポーターの伊達公子さんが登壇。「アスリートとして、女性として – 挑戦し続けることの価値」と題して、自身の経験などから、新しいことに挑戦していくことの大切さを話しました。

 

↑伊達公子さんとMASHING UP編集長の遠藤祐子さんのトークセッション。女性を中心に多くの参加者でにぎわいました(東京都渋谷区:トランクホテル)

 

伊達さんは今年3月、引退後初めて、JICAオフィシャルサポーターとしての海外視察でタイを訪問。JICAがプロジェクトとして支援している、人身取引の被害女性を保護する施設(シェルター)に足を運び、その現状を目の当たりにしたといいます。

 

そこで社会復帰に向けた訓練を受けていたのは、15歳から18歳の女性たち。「よい稼ぎ口がある」といった謳い文句や、外国で働きたいという想いを利用されて騙され、売春や労働を強制されていたところを保護されました。中には、親や親戚によって売られた方々もおり、伊達さんが写真も交えてその状況を説明すると、日本では考えられないような話に、会場の参加者たちも驚きを隠せない様子でした。

 

また、一方で、お年寄りのリハビリセンターも訪問し、入所者たちとの交流体験も紹介。そこでは、JICAプロジェクトによって日本式の高齢者介護が取り入れられており、現地の方々の大きな助けになっている、ということでした。

 

伊達さんは、これまでの海外訪問を踏まえ、「テニスプレーヤーとして訪れたのは、先進国の大都市ばかり。引退後にJICA視察などで訪れた開発途上国では、自分たちの普通が普通ではないことを思い知らされた」と話しました。

 

現役引退後、大学院に進んだ経験についても、「大変なこともたくさんありましたが、吸収できることが多かった」と語った伊達さん。最後に女性の活躍について問われると、「チャレンジすることは人間の欲求だと思う。置かれている立場によってその気持を押し殺したりせずに、自分のためにチャレンジしていって欲しい。大きなことでも身近なことでも、踏み出す勇気が大切」と会場に呼びかけました。今後は、錦織圭選手や大坂なおみ選手に続くような人材が育っていくよう、国内のスポーツ環境整備に尽力していきたいとの抱負を述べ、セッションを締めくくりました。

 

2020年日本から発信するスポーツでのジェンダー平等

続いて行われたトークセッションは、「スポーツから考える、ジェンダー平等–明日につながるスタートライン」とのテーマで、JICA 青年海外協力隊事務局 「スポーツと開発」担当の浦輝大職員と、順天堂大学女性スポーツ研究センター研究員の野口亜弥さんが登壇しました。

 

↑野口亜弥さん(左)と浦輝大職員(右)。野口さんのスポーツ庁勤務時代から「スポーツと開発」で交流のあった2人が「スポーツとジェンダー」について語りました

 

浦職員は、アメリカンフットボールの選手として活躍した後、青年海外協力隊員としてバヌアツに赴任。帰国後はイギリスのNGOのプログラムに参加してアンゴラに派遣されるなどの経験をへて、現在JICAでスポーツと開発を担当しています。

 

↑浦職員は自身の経歴を紹介する中で「途上国は『毎日同じことが続くのが幸せ』という考え方で、日本のように日々成長してくというものとは異なっていた」と当時苦労した点を話しました

 

野口さんは、大学卒業後、スウェーデンでプロサッカー選手をしていたという経歴の持ち主。その後は、ザンビアでスポーツを通じた女性の教育に携わり、帰国後スポーツ庁勤務をへて、現在は順天堂大学で「スポーツとジェンダー平等」について研究を続けています。

 

↑「スポーツを通じたジェンダー平等は、世界的にも重要なテーマで、国連が中心となり、女性がスポーツにアクセスしやすい環境整備に取り組んでいる」と述べる野口さん

 

浦職員も、青年海外協力隊員の経験から、「途上国にスポーツで支援することの意味を問われることがあるが、スポーツをすることによって、お互いにわかり合うことができる」と語り、多様性をより認めていこうとする社会の中で、スポーツが果たす役割の大きさを強調。タンザニアで実施された女性のエンパワーメントを目的とする陸上競技会「レディーズ・ファースト」や、南スーダンの民族融和、平和構築を目指したスポーツ大会など、JICAの取り組みを紹介しました。

 

来年2020年には、東京でオリンピック・パラリンピックが開催されます。「スポーツの可能性や役割について世界が注目している今、日本だからこそできることがある、積極的にアクションを起こす必要がある」と野口さん、浦さんは、共通の認識を示しました。

 

そして、ジェンダー平等に限らず、すべての人々のよりよい暮らしの実現に向けて、スポーツの在り方や、スポーツを活用した国際協力について日本が率先して考え、実施し、それを世界に発信していくべきだと、とセッションを締めくくりました。

 

↑会場ロビーにはJICAの活動を紹介するパンフレットや写真パネルが展示されました

 

会場では、両トークセッションを通して、スポーツ経験の豊富な登壇者の言葉に、熱心に耳を傾ける参加者が多く見られました。また、ロビーには、JICAの活動を紹介したパネルが展示され、多彩なプログラムが展開されるイベント会場で、多くの人がその活動を知るきっかけになりました。

 

【JICA(独立行政法人国際協力機構)のHPはコチラ

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