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2019/10/2 17:41

「人づくりは国づくり」を実感!――北澤豪さんのカンボジア視察【JICA通信】

首都プノンペンの「オリンピックスタジアム」からは、近年のカンボジアの経済成長を象徴するかのように、建設中の高層ビルをあちこちに望むことができます。そのグラウンドで、北澤豪さんは、同国で長年サッカー審判員の育成に努めている元JICAシニアボランティアの唐木田徹さん、そして東部クラチェ州のサッカーアカデミーでユース世代の選手とコーチを指導している現役のJICA青年海外協力隊、宮城晃太隊員と3人で、カンボジアサッカー界が目指すべき未来像について会話を弾ませていました。

 

日本の政府開発援助(ODA)を実施する機関として、開発途上国への国際協力を行っているJICA(独立行政法人国際協力機構)に協力いただき、その活動の一端をシリーズで紹介していく「JICA通信」。スポーツをはじめ、さまざまな分野でカンボジアの国づくりを支えるJICAの活動現場を、2019年8月、JICAオフィシャルサポーターを務める元サッカー日本代表の北澤豪さんが訪れました。今回はその視察の様子をお伝えします。

 

↑現在はJFA(日本サッカー協会)から派遣されているカンボジア審判ダイレクターの唐木田さん(右)、クラチェ州サッカーアカデミーのコーチを務める宮城隊員(中)と北澤さん

 

技術や経験を伝え続ける努力を激励

唐木田さんは元Jリーグ担当審判員、宮城隊員はJリーグチームFC琉球の元選手、コーチという肩書を携えており、それぞれサッカーに精通したプロの指導者。しかし日本と比べればまだまだ行き届かないカンボジアの環境下で、技術や経験を伝える活動には大きな苦労が伴っています。北澤さんは二人の話を聞きながら、地道な、そして継続的な努力を積み重ねる姿勢について、「頼もしい」と評しました。

 

↑スタジアムの周囲には建設中のビル群が

 

人工芝のピッチとそれを囲む陸上トラックには、唐木田さんが指導するサッカー審判員の卵、JICAと連携してカンボジアの学校体育指導書作成も支援しているNPO「ハート・オブ・ゴールド」がサポートするパラアスリート、そして健常者の競技者たちが混在してトレーニングに打ち込んでいました。そんな光景を目の当たりにして北澤さんは、「立場や境遇の違う選手や指導者たちが、時間と場所を区切らずに一緒に練習している。スポーツはこうあるべき。こういう光景が好きです」と笑顔で語りました。

 

↑スタジアムには、様々な境遇に置かれた競技者たちが混在していた

 

↑NPO「ハート・オブ・ゴールド」が支援する障害者スポーツ競技者の話を聞く北澤さん。左は、「ハート・オブ・ゴールド」の西山さんと米山さん

 

自らデザインしたサッカーボールをプレゼント

北澤さんにとってJICAオフィシャルサポーターとしてのカンボジア訪問は約4年ぶり。今回は、自身がアンバサダーを務めているFC琉球に所属していた宮城隊員の活動現場、クラチェ州にも足を運びました。

 

前回のワールドカップロシア大会アジア二次予選で日本とも戦ったカンボジアのサッカー代表チームは、現在、本田圭佑さんが実質的監督兼GMを務めています。日本サッカー協会からも指導者が3名派遣され、宮城隊員の活動も含め、サッカーにおける日本とカンボジアの協力関係や絆は、非常に強いものがあります。

 

↑宮城隊員はFC琉球に選手、コーチとして2016年から2018年まで在籍

 

一方でまだまだ環境は整っておらず、宮城隊員の活動するクラチェ州では、選手たちへの技術的な指導もさることながら、そのベースとなる環境の整備、改善が必須な状況です。ゴミをグラウンドに捨てない意識を醸成すると同時に、それでも散見されるゴミを練習前に拾う必要もあります。また、グラウンドは凸凹で、ところどころ雑草が生い茂っています。

 

それでも宮城隊員は「環境のせいにせず、与えられた環境の中で、どうやったらうまくなるのか、将来の夢、目標を叶えるためにはどうすればいいのか、選手たちには自分たちで考えられるようになってほしい。そのためには地域の協力が不可欠。街の人たちを巻き込んで変えていかないと、2年後任期が終わって自分がいなくなったときに、元に戻ってしまうのではないかと危惧している。根気強くやっていきたい」と想いを語りました。

 

↑北澤さんも選手たちを指導

 

北澤さんは、「サッカーは技術だけでなくメンタリティーも同時に養う必要があり、そこは宮城さんによってきちんとしたアプローチができていると感じた。環境は別として、やっていることは日本と変わらない。成長できると思う」と話し、宮城隊員が指導する選手たちに、自らデザインしたという地球を模したボールを寄贈。「サッカーはどこでもやれる、世界を目指して頑張ってほしい、将来カンボジア代表チームやFC琉球にも入れるような選手になってほしい、という想いを込めて作った。国は違うけれど想いは同じ。お互いにサッカーを通して協力し合って、目標に到達できるようにがんばろう」とエールを送りました。

 

↑北澤さんからは地球を模したボール、FC琉球からはユニフォームなどが寄贈された

 

インフラ整備と人材育成を同時並行で

カンボジア滞在中、北澤さんは、クラチェ州の教員養成校で小学校教諭を目指す若者たちに対する授業を補助、指導している松岡香央理隊員の活動も視察しました。また首都プノンペンでは、沖縄県とJICAとの連携のもと、平和文化創造のための博物館をつくる協力として、展示手法などについて長年支援してきた「トゥール・スレン虐殺博物館」、カンボジアのヒトとモノの移動を支え、復興のシンボルでもあり、改修が行われたばかりの「日本カンボジア友好橋(日本橋)」など、JICAによるさまざまな支援の現場を訪れました。

 

↑クラチェ州の教員養成校で活動する松岡隊員(中央)

 

今回の訪問を振り返り、北澤さんは「人づくりは国づくり。教育、スポーツなど、さまざまな分野で人材育成を継続していく必要があると改めて感じた。特にここカンボジアはポル・ポト政権下の虐殺で多くの貴重な人材を失っており、そうした歴史的な背景も理解しなければ目標達成はできないと思う。社会の外見が発展して、中身が置いてきぼりにならないためにも、人々の知識や教養が大事。インフラ整備はもちろん、人材育成を同時並行的に進めなくてはいけないと思う」と語りました。

 

貴重な指導者層の欠如を埋めるべく精力的に展開される人材育成、カンボジアと同じく戦争に翻弄された歴史を持つ沖縄と連携した平和の価値や意義の発信、地方との格差是正にも貢献する大規模インフラの整備など、カンボジアと日本は、これからも多様な分野における国際協力、人々の交流、協働によってつながっていきます。JICAはこれからも、カンボジアの人々が国際社会の舞台でさらに活躍することができるよう支援を続けていきます。

 

photo: Kasumi Chida/JICA

 

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