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2020/1/14 18:30

なぜ「They」が? アメリカの辞書が選んだ「2019年の言葉」

英語の「He」や「She」は3人称単数形で、「They」は3人称複数形。誰もが学校でそう習ったはずです。でも現在、この「They」の使い方にある変化が。アメリカでは「They」に3人称単数形の意味も加わってきているんです。

 

アメリカのメリアム・ウェブスター辞典では、毎年検索数の多かった言葉などから、その年を象徴する単語を「今年の言葉」として発表しています。そして2019年に選ばれたのが「They」でした。

 

英語の3人称単数形には「He」と「She」がありますが、前者は男性で後者は女性という具合に対象となる人物の性別を限定しています。英語には性別を特定しない3人称単数形が存在しないため、性別を問わずに使える「They」が3人称単数形(They is)として使われてきた歴史もあるそう。言葉は変わるんですね。

 

そして、その「They」が近年、男性でも女性でもなく「ノンバイナリー」である人々の間でも使われてきているのです。最近はノンバイナリーを公表する人が世界的に増えてきており、2019年にはニューヨーク市の出生証明書の性別欄に、従来の「男性、女性」のほかにノンバイナリーの欄が追加され、マサチューセッツ州では運転免許証などの身分証明書にノンバイナリーを示す「X」の記号が追加されました。

 

そんなジェンダーレスに対する意識の高まりもあって、2019年におけるメリアム・ウェブスター辞典での「They」の検索数は、前年に比べて313%も増加したそうです。そして同辞典で2019年9月、「They」に「ノンバイナリーの人の3人称単数形」の意味が追加されました。なお、アメリカ方言学会は「They」を2015年の言葉と、2010〜2019年の「Word of the Decade(10年間の言葉)」に選んでいます。

 

ジェンダーレスの絵文字を追加

そんな性別の垣根を越える動きは、スマートフォンの絵文字にもあります。2019年7月17日の「世界絵文字デー」でAppleとGoogleがノンバイナリーの絵文字を含む、新しい絵文字を発表しました。

 

絵文字は、1999年にNTTドコモが発表したものが最初で、今日では世界中に「emoji」の言葉で広まり、数多くの絵文字が作られてきました。でも警察官なら男性、看護師なら女性というように、職業などから男女どちらかを特定した絵文字が作り上げられていた面もあります。

 

しかしGoogleが昨年発表した65種類には、ノンバイナリーの存在感の高まりから、性別を特定しない新しい絵文字53種類も含まれます。例えばカップルの絵文字には、男性同士や女性同士のカップルを含め、肌の色や性別の組み合わせがいろいろなカップルが全部で71パターンもあります。

 

Appleでも、同じように様々なカップルの組み合わせのほか、車椅子の方や視覚障害の方、盲導犬、義手や義足の絵文字も登場しました。

 

男性にも女性にも属さない第三の性として広まりつつある「ノンバイナリー」。見方によって意見が異なるかもしれませんが、このムーブメントは2020年も続きそうです。「They」にしても絵文字にしても、臨機応変に使いこなせるようになるといいですね。