アメリカのマイアミビーチで1月から、数十台ものトラックによる砂の搬入作業が始まりました。そしてこのビーチの問題は、日本人にも人気の観光地、ハワイのワイキキビーチでも起きているのです。世界屈指の2つのビーチリゾートで、いま何が起きているのでしょうか?
50年前から行われているプロジェクト
マイアミビーチで始まった「サンド・プロジェクト」では、大型トラックにより大量の砂が運び込まれ、観光客でにぎわうマイアミビーチに砂が投入されるのです。
これは海岸の浸食によって砂浜部分が狭くなってきていることが原因。海岸浸食は今から50年近く前から始まっており、1968年にマイアミのデイド郡議会が海岸浸食とハリケーン予防のためのプロジェクトの建設を許可しました。これにより、約15キロにわたるビーチで、大量の砂が運び込まれてきているのです。またマイアミビーチはハリケーンが来襲することでも知られる地域で、海岸近くの建物を守る必要もあります。
2020年のプロジェクトでは1600万ドル(約17億円)が投じられていますが、まだ多くの砂が必要とされており、今後はさらなる費用がかかってくると見込まれています。
楽園ハワイでも
またこれと同じことが起きているのが、これまた世界中の観光客に人気のリゾート、ハワイのワイキキです。ワイキキビーチでも長年にわたり海岸線の浸食が問題視されてきており、マイアミビーチと同じようにこれまでにも定期的に砂が搬入されるなど整備が行われてきました。2015年にはホノルル市が、ワイキキビーチの改善を目指す「ワイキキビーチ特別地区改善協会」を設立。ワイキキ地区の商業施設などから資金を募り、ビーチ保全のプロジェクトに活用されています。
2019年にハワイ州はワイキキビーチの保存プロジェクトに1300万ドル(約14億円)を投じると発表。直近では同年11月にハワイ州土地自然資源局がワイキキビーチ特別地区改善協会と共同で、土嚢を運び込み長さ95フィート(約29メートル)におよぶ防波堤の設置を完成させています。
マイアミもワイキキも、ビーチがあってこその観光地。ハワイ大学の試算によると、海岸浸食によってワイキキビーチが狭まると、観光客による収入の損失は毎年20億ドル(約2200億円)になるのだとか。
ただ、近年の気候変動による海面上昇や異常気象によるハリケーン到来など、ビーチでのさまざまな対策は今後もますます必要になっていくものと予想できます。しかし、砂の需要は世界中――特に急成長しているアジアの都市――で高まっており、砂は希少資源となっている模様。砂の採掘もきちんと規制されていないようで、環境への影響も懸念されています。将来、アメリカのビーチに砂を搬入することは現在よりも大変になるかもしれません。