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2020/4/1 18:30

生産で使う水を95%カット! 超エコな「ブドウを使わないワイン」という新たな選択肢が登場

植物原料から作る「人工肉」や「人工エビ」、細胞レベルから食品を作り出す「細胞農業」の技術で生まれた「人工魚肉」……。将来の食糧不足や環境破壊を考慮して、人工的に食品を作る技術が世界で次々に生まれています。そこに新たに加わったのが、ブドウを使わないワイン。一体どんなものなのでしょうか?

 

分子レベルから作る

↑ワインを化学で作るとエコになる

 

ブドウを使わないワインを発表したのは、アメリカのスタートアップ「エンドレス・ウェスト」。同社は以前、分子レベルから作ったウィスキー「Glyph」を発表しており、それに続く合成酒としてワインを発表しました。

 

同社の合成酒の作り方は、まず従来の製法で作られているワインを分析することから始まります。味わいや香りなど、それぞれの元となっている分子を特定。そしてその分子を自然由来の原料から生成させ、それらをすべて混ぜ合わせ一体化させたら完成です。

 

ただワインは何種類もの香りと味わいが複雑に混ざって成り立っているため、香りや味の一つひとつの分子を混ぜ合わせ、それらすべてがバランスよくまとまるように繰り返し実験が行われていきます。

 

こうして誕生したのが、世界で初となる分子ワイン「Gemello」。アルコール度数6%で、オレンジやマンゴー、ピーチなどのフルーツの香りを楽しめる微発泡性のワインです。

 

Gemelloはブドウを使っていないため、農薬やほとんどのワインに酸化防止剤として使われる亜硫酸塩も不使用。さらにブドウを使っていないため、その栽培に必要となる土地や水を大幅に削減することができます。Gemelloの場合従来のワインに比べて、使用する水は95%、使用する土地は80%カットでき、生産する二酸化炭素の量も40%カットと、地球環境に優しいことが特徴です。

 

ワインは、職人による卓越した技巧と伝統的な製法によって、複雑な味わいが生まれる飲み物。だから「ブドウを使わないワインなんて邪道だ」という考えもあるかもしれません。しかし「エンドレス・ウェスト」の創業者の一人は、高級なビンテージワインは開けることが憚られ、気軽に味わえないことから、「従来の方法とは違ったやり方で同じものを作れないか?」と思ったことが、会社設立のきっかけだったそう。

 

伝統的に作られるワインを否定するものではなく、「もっと気軽にお酒を楽しみたい」と思う方や、環境のことを考慮したいと思う方に、新しい選択肢のひとつとしてこんな合成酒があってもこれからはいいのかもしれません。Gemello(750ml)の価格は15ドルで、アメリカでのみ販売中。

 

なお、エンドレス・ウェストではワインと同様に、米を使わずに作られた日本酒「Kazoku」もあります。1本(375ml)10ドルという価格のKazokuもアメリカでしか購入できませんが、日本酒好きの方には気になる存在かもしれません。