軍で学んだ技術を起業の原動力に
さらに、イスラエルに技術力を持つ優秀な人材が多い理由には、兵役制度ともかかわっています。軍にいる間にイスラエル軍が保有するさまざまな先端テクノロジーに触れ、セキュリティ関係の技術も詰め込まれるため、兵役が終了すると、その技術力や知識を生かしてエンジニアとして起業するケースも多いのです。
軍のなかにはサイバーセキュリティなど、最先端技術しか扱わない優秀なエリート部隊もあります。例えば、イスラエルのサイバーセキュリティは常に攻撃されているため、インターネットサーバーが落ちることを前提に、“0.数秒”といういかに早いレベルで復旧させるかに彼らは日々力を注いでいます。世界のグローバル企業から見れば、このような高い技術力はとても価値が大きく、兵役後に独立したスタートアップ企業の優秀な人材やノウハウごと買収したいと考えるのは当然かもしれません。
兵役には税金が投入されているため、軍で磨いた技術力を起業後に活用しても国は社会へのリターンと見なす模様。卒業生も含め軍で生まれた横や縦のつながりも活用しながら技術を社会に還元することは、エコシステムの面からも暗黙の了解があるとされています。
このように、イスラエルでテック企業のスタートアップが多く、成長スピードが速い大きな要因は、イスラエルの地政学的な背景から、兵役システムをはじめとする優秀な人材が育つ土壌と起業しやすい環境が整い、国の政策も含めたエコシステムがうまく回っているからなのです。
次回は、イスラエルテックのなかでも大きく注目されているAI分野についてお伝えします。