非常事態宣言が続くスペイン。各地で制限措置が段階的に緩和されているものの、マドリードやバルセロナでは厳しい行動制限が継続されています。そんななか、あるアプリを使った買い物が同国で急速に広まりつつあります。それが出前アプリの「Glovo」。このようなテクノロジーを使った買い物は「新常態」になるかもしれません。
スペインでは4月下旬までの行動制限措置により、保育園から大学までの教育機関が休校となり、多くのビジネスが営業停止となりました。国民は行動が規制され、通勤、生活必需品の買い物、医療機関や銀行の利用、高齢者や病人の介護、犬の散歩、ゴミ出し以外の外出は原則禁止となったうえ、これらの活動は基本的には1人で行わなければならず、正当な理由なく外出した人には罰金や懲役刑が科されることもあります。
このような状況で人気を集めているのが、2015年にバルセロナで始まったGlovo。スペイン語で「風船」を意味するこのアプリは、ほかの配達サービスと異なり、食品に限らず日用品、医薬品、家電製品など、生き物以外なら何でも出前できることが特徴です。
アプリを開くと「朝食・おやつ」「飲食店」「薬局」「ショップ」「スーパーマーケット」のアイコンが現れ、それぞれのアイコンをタップすると、Glovoと提携しているお店と購入可能な商品が表示されます。Glovoのサービスは毎日24時間利用することができますが、提携店が閉店しているときには、そのお店を選択することはできません。
これらのアイコンと並んで表示されるのが、「Express Delivery(宅配便)」と「Anything(なんでも)」というGlovoの特徴的なサービスです。
個人間で物を届けるときに使うのがExpress Delivery。例えば、彼女にプレゼントを配達してほしい。家の鍵を忘れたから妻の職場で合鍵を受け取って自分のいる場所まで届けてほしい。はたまた、書類をビジネスパートナーに至急送りたい。このような場面で活躍するのが、このサービスです。
その一方、Anythingは、文字通りなんでもカスタム注文できる配達サービス。例えば、携帯電話の充電ケーブルを出張先に忘れてしまい、もうすぐ充電が切れるのに買いに出かける時間がない場合などに便利。Anythingの欄に充電ケーブルの種類や長さなどを記入して注文すると、ユーザーの代わりに配達員が店舗に行って購入し自宅に届けてくれます。料金は商品の価格+配達料。
Glovoの配達員の移動手段は自転車かバイクのため、配達できる商品は重さ約9kg、大きさは約40cm×40cm×30cm以内という制限がありますが、道路の状況次第ではクルマやトラックよりも素早く移動することができます。配達にかかる時間は、距離、時間帯、配達内容などによりますが、だいたい20分から1時間程度。
料金はピックアップ場所と届け先住所によって変わります。契約レストランからの配達は1件1.9〜4ユーロ、個人間の宅配便や買い物は2.5〜6.9ユーロと、手ごろな価格も人気の理由の1つです。
多くのユーザーはGlovoに満足しているようですが、なかには飲食店と配達員、客のコミュニケ―ションがうまくいかずに配達が遅れたり、キャンセルしたのに料金が請求されたりというケースもある模様。Glovoはスペインやイタリアなどヨーロッパを中心に、アフリカ、中東、中南米など多くの国と地域で展開していますが、現時点では日本、イギリス、アメリカには進出していません。