感情の浮き沈みが激しくなったり反抗的になったり、思春期の子どもの扱いは難しいとよく言われます。しかし、そうなるのは人間だけではありません。同様のことは犬にも起きているようです。犬は飼い主に従順な動物ですが、思春期ではどんなふうになるのでしょうか?
知らない人には従順、飼い主には反抗的
生後6か月~12か月頃の犬は扱いが難しいということは、犬を飼っている方の間ではよく言われていることです。犬の反抗期ともいえるこの時期に、どう飼い犬に対応するべきかアドバイスする記事は多くのメディアで扱っていても、この時期の犬の行動がどのように変化するのか科学的に論じられたものはありませんでした。
そこでイギリスのニューカッスル大学の研究チームは、盲導犬として訓練中の子犬とトレーナーの関係は、人間の親子関係と関連性があるかどうか調査を実施。285匹の犬について、犬の思春期にあたる6か月~12か月の行動をトレーナーやお世話係の人にアンケート調査を行い、さらにそのうちの69匹については行動テストも実施しました。
その結果、思春期だと従順さが減少し反抗的な行動が増すことが判明。しかも知らない人が指示を出す行動テストでは、犬はきちんと指示に従っていたのに、トレーナーや世話係に対してだけ反抗する振る舞いを見せていたのです。
また、人間の親と思春期の子どもとの関係と同じように、トレーナーとの愛情が不安定な犬は一人にされることを嫌がる特徴があり、そのような思春期の犬はトレーナーにほとんど従わなかったこともわかりました。
ただ、12か月を過ぎるとほとんどの犬が、思春期前の従順な対応に戻るということも聞き取り調査でわかりました。つまり、人間の思春期と同じように犬にも思春期が存在しますが、それは一時的なものであり、思春期が終わればじきに以前のように戻るということ。大人になるための通過点なんですね。
この結果を発表した研究チームは、「犬の思春期の時期は、ちょうど保護施設に入れられる時期と重なるため、思春期の変化に気づかれにくい」と指摘しています。犬が従順でないからといって、厳しく罰したり育てることを放棄したりするようでは悲しい結果となるだけ。人間でも犬でも、思春期のときは深い愛情で温かく見守ることが必要なのかもしれません。