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2020/10/20 18:30

海面温度を下げちゃえばいい! 「台風」の発生を防ぐ「泡のカーテン」が開発中

台風やハリケーンは世界各地に大きな被害をもたらすことがありますが、それらの勢いを人工的に抑えることはできるのでしょうか? この問題に取り組んでいるのが、ノルウェーのあるスタートアップ。伝統的な技術を”アップデート”して、海にカーテンを設置するそうです。どんな技術なのか見てみましょう。

↑噂の「泡のカーテン」(画像出典: OceanTherm公式サイト)

 

熱帯低気圧は、暖かい海の上で冷たい空気と温かい空気がぶつかると台風やハリケーンに変化します。このとき海面温度が26.5℃以上になると、台風やハリケーンはそこからエネルギーを得て、勢力を増していきます。

 

ノルウェーのスタートアップOceanTherm社はこのメカニズムに注目し、海面温度を下げる方法を考案しました。海面温度が高いときに、水深の深い場所から冷たい海水を運び、海面付近の温かい海水と混ぜて、26.5℃以下になるようにコントロールするというもの。海面温度が高くなりすぎないように海をコントロールすることができれば、勢力の強い台風やハリケーンが発生しにくくなるというのがコンセプトです。

 

これを具体的に行うのが、「バブルカーテン」の利用。まず海にパイプを設置し、そこから圧縮した空気を海中に送ります。すると海中に無数の泡が生じ、これが海面まで上昇。やがて下から上に向かって海水の流れができ、深い場所にあった冷たい海水が海面付近の温かい海水と混ざり、海面温度を下げられるのです。長さ1500メートルのパイプを船に付け、必要な場所で泡のカーテンを作れるようにしており、大量の泡が発生する様子から「バブルカーテン」と名づけられたそうです。

 

ノルウェーでは冬に、氷河の浸食で形成されるフィヨルドが凍るのを防ぐため、50年も前から海面温度を高くする技術が使われており、バブルカーテンはそれを応用した技術なのです。

 

OceanTherm社がノルウェー産業科学技術研究所(SINTEF)と共同で行った実験で、バブルカーテンによって水深50メートルの海水を海面まで運び、海面温度を0.5℃下げることができたそう。0.5℃では、まだわずかな変化にすぎないため、今後は水深を150~200メートルまで深くして実験を行う予定とのことです。

 

ビル・ゲイツも注目していたけど……

一説によると、今回の技術は特別新しいものではないのだそう。マイクロソフト社の共同創業者、ビル・ゲイツらは2009年にハリケーンの勢力を弱める技術を開発し、特許を申請していましたが、その後、この技術は進展がなかったとみられています。

 

バブルカーテンは気候工学(または地球工学)の一種とも見れますが、気候工学は地球規模で長期的に影響を与えるため、否定的な考えが多くみられてきたのが事実。バブルカーテンも技術的かつ経済的な面で実現できるか不透明な部分があり、さらに干ばつを引き起こすことや海洋環境へ影響をもたらす可能性があることも指摘されています。

 

しかし、地球温暖化などにより各地にさまざまな被害が起き、環境問題が年々深刻化するなかで、気候工学は「最後の切り札になる可能性もある」とも言われています。バブルカーテンも同じような視点で考えるべきかもしれません。この古くて新しいノルウェーの技術がどこまで発展するか注目です。

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