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2021/2/22 6:00

「焦げ付かないフライパン」なのに焦げ付く謎を科学が解明! 対策も。

テフロン加工やフッ素樹脂加工のフライパンは、少量の油でも食材が焦げ付きにくいのが特徴です。しかし、それなのに調理中の食べ物を焦げ付かせてしまった経験のある方は少なくないでしょう。せっかく焦げ付き防止加工のフライパンを使っているのに、そうなってしまうのは一体なぜなのか? そんな疑問を解決すべく、チェコ科学アカデミーの研究者たちが調査を行いました。

 

加熱で油の表面張力に変化が

↑きちんとした理由で焦げ付きます

 

この研究者たちは、グラナイト加工のフライパンとテフロン加工のフライパンという2種類の焦げ付き防止フライパンを用意。フライパンにひまわり油をひいて加熱し、ひまわり油がどのように変化していくかをビデオカメラで撮影して観察しました。その結果、フライパンを加熱すると、フライパンの表面は平らなのに中央部分に油が薄い「ドライスポット」が形成されることが明らかになりました。

 

ドライスポットが発生する原因は、フライパンは加熱されると油の表面張力が低下することにあります。表面張力とは液体と気体の境界で液体の表面をできるだけ小さくしようと働く力のことで、水をグラスにいっぱい注ぐと水の表面が盛り上がるのが有名な例ですが、この表面張力は温度が上がるほど小さくなります。

 

したがって、特に高温になるフライパン中央部分では油の表面張力が小さくなり、同じフライパン内部でも場所によって差が生まれることに。それによって油がフライパンの外側に移動する「熱キャピラリー対流」と呼ばれる対流が生まれ、結果的にフライパンの中央部分の油が薄くなり、食べ物が焦げ付きやすくなるのです。

 

鍋にお湯を沸かすと、温められた水は鍋の上のほうへ、まだ温められていない水は下のほうへ移動し、鍋のなかで対流が生まれますが、それと同じようにフライパンの油も加熱によって対流が起きていたのです。

↑熱によりフライパンの中で油の対流が起こる(画像出典: Alex Fedorchenko)

 

では、フライパン中央の焦げ付きを防止するためには、どうしたらいいでしょうか? この実験を行った研究者は焦げ付き防止対策として次の方法を挙げています。

 

・フライパンにひく油の量を増やす

・加熱しすぎない

・底が厚いフライパンを使う

・調理中に食材をよくかき混ぜる

 

「調理に使う油の量を減らしてヘルシーに仕上げたい」と思って、焦げ付き防止フライパンを使っている方なら、油の量を増やすのは避けたいかもしれません。その場合は強火より中火程度で、食材をよくかき混ぜながらフライパンを使うといいようです。フライパンはもっと合理的に使えば、もっと長持ちするかもしれませんね。

 

【出典】Fedorchenko, A., & Hruby, J. (2021). On formation of dry spots in heated liquid films. Physics of Fluids, 33(2). https://doi.org/10.1063/5.0035547