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2021/3/27 19:00

英国で1980~90年代がブーム! やっぱり古い物が好きな国民

現在、イギリスでは1980年代や1990年代のモノを楽しむ人々が急増しています。最新テクノロジーやAIが脚光を浴びる一方、懐かしい製品が次々にカムバックしており、現在の便利な生活にどこか物足りなさを感じているイギリス人にウケています。どのような”アンティーク”アイテムが人気を集めており、そこにはどんな背景があるのでしょうか?

↑昔のデバイスがビンテージ化

 

懐かしのビンテージ・コンピューター

革命的な新製品が次々と発売されるテクノロジー業界で現在、密かなブームとなっているのがビンテージ・コンピューターです。なかでも特に注目されているのは1980年代と1990年代の製品。当時のコンピュータは徐々に人気が高まり、今日では3年前の約5倍もの価格が付くほどになりました。

 

eBayなどのオークションサイトによれば、昨年12月にはこういったコンピューターが3分間に1台売れる勢いだったとのこと。また、ビンテージ・コンピューター購入のための検索数は今年1月上旬だけでも前年度の25%も増え、オークションサイトに掲載されるコンピューターの台数は2019年1月と比べて28%も増えています。

 

人気がある機種は80年代に販売されたイギリス製の「Sinclair ZX Spectrum」や「Acron BBC Micro」。これらは以前にイギリスの学校で幅広く使われていたため、多くのコレクターを惹きつけているのでしょう。

 

さらに「Apple-I」の人気も見逃せません。これはAppleの共同設立者であるスティーブ・ウォズニアック氏が組み立て、スティーブ・ジョブズ氏 が販売したApple初の製品で、2020年には4000万円以上という破格値が付いたほど人気があります。

 

ビンテージ・コンピューターは20代〜30代の若者にも人気があります。彼らの親の世代が使っていたコンピューターということもあり、身近に感じるのかもしれません。その当時の生活や雰囲気を実際に感じられる点が魅力となっています。

↑いまだに価値あり

 

さらに、この時代のコンピューターは基本的なコンポーネント(部品)で構成されおり、電子機器の基本学習に最適であると言われています。そのため、機器を実際にいじりながら基本を学びたいという人々にも魅力的。イギリスでは当時の部品がいまも販売されており、故障したコンピューターを修理する楽しみも提供しています。修理マニアにとっても絶対に欲しい機器であるに違いありません。

 

人気の理由はこのようにさまざまですが、誰もがノスタルジックな気分を味わうことできることも大きな魅力でしょう。ビンテージ・コンピューターの価格は需要とともに上がってきています。なかには予算内で獲得するために、ビンテージ・コンピューター専門のコミュニティに加入するコレクターも少なくありません。

 

レコードやカセットで音楽を満喫

コンピュータと同様に、レコードとカセットテープの人気も無視できません。イギリス・レコード産業協会(BPI)によれば、この国におけるレコードの売り上げは、国内で販売される全アルバム収入の18%を占めるとのこと。アーティストやレコード会社にとって、この収入はYouTubeなどのプラットフォームで得る収入の2倍にもなっているそうです。

 

新型コロナウィルスの蔓延により多くのレコード店が一時閉鎖に追い込まれるなか、レコード(1枚の平均価格2900円)の需要はコロナ前の2007年から次第に高まっており、2020年には1991年以降で初めて最高売上を記録しました。

 

それと同時にカセットテープ(1個の平均価格950円)の人気も高まる一方です。2012年以降は需要が継続的に広がり、2020年には前年の約2倍にあたる15万7000個という売り上げを達成しました。

 

こういった人気の理由についてBPIのジェフ・テーラー氏は「物として個人で所有できるレコードは時代を超えた価値を提供してくれる。だからこそ音楽にこだわるコレクターにアピールしているのではないか」と語っています。高級紙タイムズによると、2020年12月時点で最高売り上げが予想されたヒットアルバムは、1977年に発売されたフリートウッド・マックの「Rumour」、1995年のオアシスの「Morning Glory」、1991年のニルヴァーナの「Nevermind」といずれも90年代のものでした。

 

古くても愛着がある物は誰にとっても捨てがたいもの。イギリス人には家具や食器、宝飾品、家など“古き日の良いもの”をリスペクトする国民性がありますが、現在の80~90年代ブームもその象徴と見ることができるかもしれません。ときにはイギリス人のように、自分だけのノスタルジックな品物に触れることでタイムトラベルしてみてはいかがでしょうか?

 

執筆者/ラッド順子