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2021/2/8 6:00

英国の男性に「革命的手芸ブーム」が到来! 編み物は現代の象徴だ!!

最近、イギリスでは手芸が大流行し、編み物や裁縫を習い始める人たちが増えています。特に注目すべきは、男性がこれらを新しい趣味として楽しんでいること。長年の間、女性の趣味というイメージが強かった手芸ですが、このような見方は変化しつつあるようです。

↑英国紳士の新たな嗜み

 

起死回生の手芸ブーム

イギリスでは手芸の人気が急上昇し、第二次世界大戦以降ではみられなかった「革命的手芸ブーム」とメディアが謳うほどの盛り上がりを見せています。

 

インターネットで「craft(手芸)」の検索数や商品販売数を見ると、爆発的な伸びに驚くばかり。例えば、2012年にイギリスで創業したラブクラフト社へのアクセス数はロックダウン前と比べて58%も増え、そのうち71%は新規の顧客で占められていました。また、材料などの販売数は140%も増加し、初心者用のチュートリアル(基本操作などを教えるプログラム)へのアクセス数は8700%も上昇したとのことです。

 

また、手芸スーパーのホビークラフト社はミシンや生地、糸の検索数が前年度比の310%も上昇した一方、大手企業のジョンルイス社では裁縫セットの売り上げが300%も跳ね上がりました。

 

インターネットでは特にマスク作りの検索数が多く、検索件数はロックダウン前の700%増を記録。感染症対策のための一般防護用マスクの不足や、政府によるマスク着用推奨施策が引き金となったのではないかと考えられます。

 

新型コロナウイルスの影響により2020年は世界的に大変な年となりましたが、クラフトブームのカムバックによって倒産寸前だった手芸用品店が生き残りに成功し、驚くべき売り上げを記録しているというニュースも珍しくありません。

 

編み物や裁縫を楽しむ男性が急増 

↑手芸という瞑想

 

編み物や裁縫などの手仕事は女性のものというイメージが強いのは日本だけではありません。多様性や平等が重視される現代ではステレオタイプ的な考え方にも変化がみられるようになり、イギリスでも手芸は女性を象徴するものとして根付いてきましたが、コロナ禍においては編み物や裁縫にいそしむ男性が急増しています。

 

また、「グレーソンのアートクラブ」やアマチュアが裁縫の腕前を競う「グレート・ブリティッシュ・ソーイングビー」などのテレビ番組が人気を獲得したこともあり、男性が手芸の魅力に目覚めたといってもよいでしょう。

 

さらに、多くの魅力的な男性セレブが裁縫や刺繍、編み物の自作品をSNSに投稿していることも、男性をクラフトに引き付けている理由の1つです。例えば、有名なダイビング選手のトム・デーリーは手編みの水着やセーターなどを投稿。また、ハリウッド俳優のマシュー・マコノヒーやウィル・フェレルもTwitterに#dopemensewというハッシュタグを付けて投稿を始めました。イギリスでは刺繍のプロのジェイミー・チャルマも先導者的存在となっています。

 

手芸を始める理由を男性たちに尋ねると、「スーツを買う金銭的余裕がないから自分で作ろうと思った」「捨てるのがもったいないからボタン付けができるようになりたい」「環境保護のために服等の廃棄量を減らしたい」など、さまざまな回答が返ってきます。トム・デーリーの場合、最初は乗り気でなかったようですが、体調回復のためにコーチに勧められて始めたそう。いまでは夕方に編み物をすると気持ちが落ち着くと言っています。

 

ある調査によると、Twitterでは53%の男性が手芸や美術の会話を楽しんでいるとのこと。ほかの調査でも21%の男性が近いうちに手芸をやりたいと回答しており、今後も男性の手芸ファンはますます増えていく模様です。

 

手芸では自分の作品を実際に使えることが最大の魅力の1つですが、このほかにも「精神的に落ちつく」「リラックスできる」「達成感を味わえる」といった多くの利点が挙げられます。

 

特に昨年からの不安定な社会情勢においてテレビやコンピューター、スマートフォンなどのデバイスから離れて、まったく違った作業に集中することは瞑想的な効果があると感じている人たちも多い様子。「コロナを心配するなら、そのエネルギーをクラフト作りに費やした方がポジティブだ」と強調するイギリス人もいるほどです。

 

実際、いくつかの研究で編み物には「ストレスや心配を和らげる効果がある」ことが証明されています。ホビークラフトのクラフト系趣味のトップ5には、編み物がランクインしています。動物など日本の編みぐるみも人気がありますが、なかでも欧米でヒットしているNetflixの「タイガーキング」を演じるジョー・エキゾチックに人気が集中。この人形のかぎ針用の型紙が売り切れになったほどです。

見方にもよりますが、現代は仕事でも趣味でも「男性だから」「女性だから」という固定観念は時代遅れになりつつあります。イギリスの男性を虜にする手芸ブームは、ひょっとしたら日本でも現れるかもしれません。

 

執筆者/ラッド順子