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2022/3/2 6:00

アメリカ初! ハワイで「サメ漁」が禁止に

2022年1月、ハワイでサメ漁が禁止されました。なぜサメ漁がいけないのか? その背景にはどんな理由があるのか? サメを守るハワイの新たな取り組みについて、現地在住の筆者が概説します。

↑海の生態系だけでなく人間も守るサメ

 

2022年1月1日に施行された法律によって、ハワイ州の水域でサメを意図的に捕獲したり殺害したりすることが禁止されました。このような法律を制定した州はアメリカで初めてとなります。

 

違反すると、1回目は500ドル(約5万7400円※)、2回目なら2000ドル(約23万円)、3回目以降は1万ドル(約115万円)の罰金が科せられます。さらに捕獲したサメは没収され、船舶や船舶免許、漁具などが差し押さえられる可能性もあると、ハワイ州政府のウェブサイトには記載されています。

※1ドル=約114.8円換算(2022年2月21日時点)

 

サメの1/4が絶滅危機

なぜハワイでこれほど厳しい法律が定められたのか。それは海洋生体系のなかで、サメが重要な役割を担っているからにほかなりません。海の食物連鎖のなかで、サメは頂点に君臨する存在として海洋生態系全体のバランスを調整しています。残酷に聞こえるかもしれませんが、サメは弱ったり病気になったりした生物をエサにするからこそ、海の生態系を健全な状態に維持する役に立っているそうです。

 

しかし、高級食材であるフカヒレなどを目当てに、サメの乱獲が世界各地で発生。国際自然保護連合(IUCN)のサメ専門家部会によると、乱獲によって世界のサメとエイの4分の1が絶滅の危機にあると指摘されています。

 

このような状況を見て、ハワイはアメリカで最初の州として、2010年にフカヒレの所有・販売・取引を禁止しました。10年以上も前からサメの保護に取り組んでいるのです。

 

家族を守る目に見えない力

また、ハワイでサメは「aumakua(アウマクア)」と考えられています。アウマクアとは「守護神・守護霊」を意味し、「先祖の霊がサメとなって、家族を守っている」と信じる人も少なくありません。サメを守るハワイの取り組みの根源には、このような文化的な側面もあると考えられます。

 

ハワイの近海には約40種のサメが生息しており、サーファーがサメと遭遇したニュースを耳にすることも珍しくありません。そのため、ハワイ州の土地・天然資源局の許可をとれば、公共の安全のためにサメを捕獲することは認められるそうです。

 

アメリカで率先してサメを守り、海の生態系を保護する取り組みを行ってきたハワイ。地元の守護神も誇りに思いながら、見守っているかもしれません。