初夏の季節となり、気温が高い日が増えてきました。一般的に日本人は暑いときや部屋の換気をするときなどに窓を開けますが、実はこの行動はアメリカ人にとって実に驚くべきことだったのです。
アメリカでは、窓を開けないのが一般的です。窓を開けて定期的に換気する人が少なく、年中閉めっぱなしという家も少なくありません。また、子どもたちの通う学校でも窓を開ける習慣がないのです。そんなこの国では「過去20年間、一度も開けたことがない」という強者もいるほどで、そもそも「窓=開けるもの」という認識がないようです。
2022年の調査によれば、アメリカにおいて窓を開ける習慣があるのは、エアコンを購入できない低所得層や、アジア人やヒスパニックなど他国にルーツを持つ人が多いとのこと。
逆に、窓を開けない傾向が顕著なのは、戸建てやエアコンを有している高所得者です。窓を開ける習慣がない要因には、24時間室内を適温に保つエアコンの存在、治安面、そして空気汚染が挙げられます。
アメリカ人が自宅の窓を開けない理由の1つ目が、エアコンの存在。アメリカでは、建物全体の温度を一定に保つ空調システムを組み込んだ住宅が多く、24時間いつでも適温で過ごすことができます。窓を開けなくても快適な生活が送れるので、わざわざ手間をかけて開けようと思わないのです。
また、室内より外気のほうが汚れているという考えもあります。空調システムの吸い込み口にはエアフィルターが取り付けられているので、室内の空気の汚れはある程度取り除いてくれます。一方、窓を開けると排気ガス、花粉、ほこりなどが室内に入り込んでしまうという理由で、窓を開けるのを嫌う人も少なくありません。
2つ目の理由は治安上の問題。アメリカでは強盗や誘拐といった事件が日々起こります。「自分の身は自分で守るべき」と考える人が多く、特に治安の悪い地域で窓はまず開けません。カーテンすら昼夜問わず閉めっぱなしという家もあります。
3つ目の理由は空気汚染で、近年、特に注目されています。これまで、空気汚染は呼吸器系疾患や心疾患といった健康被害をもたらすことが指摘されていましたが、2022年に発表された論文では鬱病や不安障害との関連性も明らかとなりました。
“アメリカン・ウェイ”は終わらない?
このような理由により、アメリカでは窓は開けないものと考えられていますが、はたして「それが正解なのか?」と言ったら、そうとも言い切れません。アメリカでも1日に1回は窓を開けて換気することが推奨されており、エアコンのフィルターが取り除ける空気中のゴミの量にも限界があります。
それどころか、建物から放出されるアレルゲンや化学物質、カビなどを考えると、定期的に窓を開けて換気するほうが室内の空気を循環できて良いのは明白でしょう。
今後、アメリカに窓を開ける習慣が根付くのかどうか気になるところですが、治安や空気汚染の問題が解決しない限り、窓を開けない家は逆にますます増えていくかもしれません。
執筆者/長谷川サツキ