1980年の誕生から今年で40周年を迎えた無印良品。この12月、関東圏最大規模・約1400坪を誇る「無印良品 東京有明」がオープンしました。3フロアで展開される同店は、「暮らしの全部が揃う店」として従来の無印良品のラインナップに加え、新しい試みがふんだんに取り入れられています。
特に目立つのが【暮らしのサポート】【家づくり】【街づくり】の3つをテーマに沿った新機軸。これらに順じたサービス・商品を見て回るだけでも真新しい体験をすることができます。40周年を機に、あらためて「永く地域の方々に役立つ存在」「感じ良いくらしの提案」を目指すという無印。その新しい第一歩の旗艦店、無印良品 東京有明を徹底レポートします。
【「無印良品 東京有明」の詳細を写真で先見せ(画像をタップすると拡大画像が表示されます)】
【その1】新設された「暮らしのサポート」くらしなんでも相談所
無印良品は、過度な接客や商品解説をすることなく、人それぞれに違う生活習慣や感性を尊重して自由に商品を選んでもらうスタイルが特徴です。40年前、「積極的接客」をするデパートが花形だったことを考えると、無印良品のこのような接客スタイルは相当斬新。このように、あくまでも「人が主役」の無印良品ですが、無印良品 東京有明ではさらに「人のくらしに歩みよる」試みが多く取り入れられています。その一つが【暮らしのサポート】。
くらしのなんでも相談所
無印良品 東京有明2階には「くらしのなんでも相談所」カウンターが設けられています。このカウンターでは、地域の人たちが感じている「暮らしの悩み」に対し対応してくれるというもの。いずれも相談は無料で、発注が生じた際に料金がかかり、具体的には次のような悩みに対してのサービスが用意されています。
お片付けサポートー片付けが苦手な方に対し、無印のスタッフがお宅に訪問して、暮らしに本当に必要な持ち物を整理しお部屋の収納を改善するサービス。
収納相談ー収納専門スタッフが自宅に伺い、使い方に合わせた収納選び、採寸から最適な収納プランまでを提案。
不用品引取りー暮らしの中で出た不要となったものを引き取り、地域企業や協力会社と連携し、社会と環境に役立つお手伝いとして次の方へ譲ったり、補修やアップサイクル後に再販したりするリユース活動につなげるサービス。
預かりー普段使わないものを一時的に1箱単位から預かるサービス。家の中だけでなく家の外まで活用できる空間を広げ、今の生活様式にあった収納方法を提案。
掃除ー掃除の専門資格を取得したスタッフが掃除の手伝いやアドバイスを行うもの。また、店頭で掃除セミナーのワークショップなどイベントを開催したり、日常に根差した暮らしの道具の使い方や自宅での掃除のアドバイスも。
【その2】「食と農」にフォーカス
「食」に関する商品とサービスが大幅に強化されているのも無印良品 東京有明の特徴です。無印良品 東京有明では1階フロアに食に関する商品・サービスが集中しており、下記のようなコーナーがあります。
青果販売
生産者と無印良品が直接つながり、新鮮な青果を販売。保存方法や最後まで食べきるコツを伝えるなど、地域と共生して生産者と食卓をつなげる試み。
食の量り売り
人や日によって変わってくる、食べる量や使う量。これに応じて、食品の量り売りを行っています。食の基本となる雑穀や乾物は20グラム以上、1グラム単位で1個ずつ、1人分ずつの最小単位で販売。気分やシーンに応じて32種類から選べるブレンドティーは30グラム以上、10グラム単位で販売しています。
ベーカリー
素材の味わいを生かした、シンプルで飽きのこない、ロールパン、食パン、クロワッサンなどを中心に店内で焼き上げて販売。
ジューススタンド
旬の野菜や果物を使ったフレッシュジュースを販売。ショッピングの合間に、季節を感じるジュースをいただけます。この他、その場で食事を摂れるカフェ&ミールや、冷凍食品コーナーなどもあり、一般的なスーパーマーケットとはまるで違う視点から、無印良品ならではの「食」を提案。
【その3】暮らしのサポート。環境に配慮した商品・サービス
40年前の誕生時から環境や社会に配慮した商品を開発し続けてきた無印良品。無印良品 東京有明でも、こういった視点をさらに飛躍させたサービス・商品が多く取り入れられています。
フードドライブ
1階にある、別名:食品回収ステーション。食品ロス削減を目指し、缶詰やレトルト食品など、家庭で余った賞味期限2か月以上の食品を回収し寄付するための活動。
給水サービス
店内3か所に給水機を設置。店頭で「自分で詰める水のボトル」を購入するか、マイボトル持参で誰でも無料で利用できる給水(水道水)サービス。
古着の回収
3階にて、無印良品の衣類でなくとも要らなくなった古着を回収しています。工業用雑巾(ウエス)の加工や、軍手などに使われる綿やフェルトなどの原料に再生する取り組みを実施。古着を持参した時点で、軍手をもらえます。
古書・古CDの販売
すでに他の支店でも実施されている古書・古CDの販売。無印良品 東京有明では「家」「くらし」にまつわる古書ばかりを選書しています。文庫が100円(税別)、それ以外が300円(税別)。また、音楽商品はCDのようなブックレットがないため、あえてケースを開けて中を確認できるようにして販売しています。CDも300円(税別)。
マフラー生地のカット販売
3階でおこなっているマフラー生地を必要な分だけカットして販売するサービス。10センチ=290円(税込)から販売しており、長さ次第でマフラーとしてはもちろん、ストール、膝掛けなどにすることもできます。
洗剤の量り売り
多くのメディアで話題となった、無印良品 東京有明特有のサービス。洗剤4種(衣類用洗濯洗剤・バス用洗剤・トイレ用洗剤・食器用洗剤)とアルカリ電解水クリーナーを100ミリリットル単位で必要な分だけを量って、70〜120円(税別)で販売。容器は持参した空のペットボトルや無印良品の使い切った洗剤ボトルを活用します。
セルフレジ
省人力化、非接触などの観点から多くの小売店で採用されているセルフレジ。無印良品 東京有明でも採用されています。
【その4】家づくり。環境に配慮しながら快適に過ごせる居住空間の提案
2階のフロアは家づくりに関する商品やサービスが揃っています。ここまで紹介した新機軸に加え、無印良品が得意とする「すまい」にまつわる商品・サービスも無印良品 東京有明ではさらに拡大させています。まず、目を見張るのが無印良品による「家」の販売。「陽の家」という間口6間半×奥行4.25間の国産杉などで作られた平家建ての家屋で、本体工事価格は1615万円(税別)。
ここ無印良品 東京有明ではモデルルームが設置されており、気軽に触れることができます。なお、この「陽の家」は、那須ハイランドで貸別荘としてのオープンも決まっており(上の写真2点)、新しい別荘のスタイルとしても注目されています。
さらに「家」にまつわる新しい取り組みとして、暮らし方や間取りに合わせ、家具選びやオーダー家具、オーダーラグ/カーテンのほか、部屋の照明計画、収納の施工などについて店頭、オンライン、出張にて相談を受けるサービスも加わりました。
全面リノベーション
リノベーションのプランを立てるためのモデルスペース。実際に無印良品の商品に触れながら相談もできます。
暮らしのパーツ
家の構造を生かしながら内装を編集できるパーツを展開。細部までこだわる住まいが実現できます。
DIY
自分で部屋づくりを楽しむためのサポートサービスと、材料の販売も。セミナーやワークショップなどのイベントも開催。
部分リフォーム
リビング、キッチン、寝室など、家の中の部分的なリフォームを無印良品が手伝うサービスも展開。中には無印良品によるユニットバスも。このように従来の無印良品の商品から、さらに「くらし」「家」に歩み寄る商品が多数ラインナップしています。
【その5】街づくり。街全体を“自分の住まう空間”と捉えた空間に
また、無印良品 東京有明では【家づくり】だけでなく、地域と共創することを軸にした空間づくりも提案。主たるカテゴリーは「家(空き室)」「オフィス」「商業施設」「公共」の4つです。
家(空き室)
主に賃貸住宅に対して行うサービス。老朽化や過疎化、生活スタイルの急激な変化で増加する空き室に対し、リフォームを中心にした「場の価値」を高める空間活用方法を提供するもの。
オフィス
リモートワークや在宅ワークに合わせたオフィス拡縮など、「働く場」を根本から見直したい方に向け、オフィスリノベーションを提供するサービス。無印良品 東京有明には、実際にスタッフが働いている様子を直に見られる「見えるオフィス」のモデルもあります。
商業施設
商業施設をより居心地が良い環境に改善したい法人に向けてのリノベーションサービス。人々が集い、憩いたくなるイートインなどの共用スペース、ベビールームや従業員に向けた休憩スペースの設計も提供。
公共
駅、廃校、社宅、集合住宅共用部といった自治体や法人が所有する公共の遊休スペースを活用し、地域の人々が使うことができるコミュニティスペースを提案するサービス。これらに加え、無印良品 東京有明では【街づくり】の一環で、江東区と連携し環境に関する取り組みを積極的に行うほか、地元で活躍するさまざまなジャンルの人々と連携し、マルシェやイベントを開催していくとのことです。
店長に聞いた!これからの無印良品
ここまでの紹介を見てわかっていただける通り、無印良品の従来のサービスに対し、かなり大がかりな新サービス・商品が加わった無印良品 東京有明。最後にここに至った思いと経緯を、店長の松橋 衆さんに聞きました。
ーー「無印良品 東京有明」には、従来の無印良品に、大掛かりな新サービス・商品が加わったように思います。
松橋 衆さん(以下、松橋) 「感じ良いくらし」をテーマにしていますが、それは単に「居室が快適」という話ではありません。暮らしや街づくりと密接に結びついてこそのもので、スプーンから家まで、あるいは働く場から街のコミュニティまで、毎日の自分の“生活行動”を大きく捉えた住空間と、インテリア相談から収納・掃除のお手伝いまでを含めたものだと思っています。こういった理由から【暮らしのサポート】【家づくり】【街づくり】といった3つのテーマで、地域の役に立つ店舗にするため新サービス・商品を展開しています。
ーー特にこれまでの無印良品には「サポート」というサービスはなかったものです。なぜこのようなサービスを取り組むことになったのでしょうか。
松橋 少子高齢化、人口減少、地球環境の問題など現代の様々な課題に加え、新型コロナウイルス感染拡大で生活様式、働き方、消費行動には変化がありました。これらを踏まえると、これからの「小売り」というものは「単品商売」だけではなく「暮らし方」「働き方」を快適にするよう提案していく必要があると思っています。また、地球や社会が良い方向へ向かう空間全体、暮らしの提案もしていく必要があると考えています。
ーー特に近年、叫ばれているSDGs、サステナビリティへの意識はありますか?
松橋 無印良品が誕生した40年前、日本には「サステナビリティ」という言葉は浸透していませんでしたが、すでに当時から「素材の選択」「工程の点検」「包装の簡略化」という3つの視点を守り、実質本位の商品を作り続けてきました。その点では自然とSDGs、サステナビリティを実践していたと言えるのではないでしょうか。
最近の取り組みとしては、地球資源の循環化・廃棄物削減に向け、全店でのプラスチック製ショッピングバッグ廃止。プラスチック製が一般的な靴下やストールの陳列用フックを紙製に変えるなどをおこなっています。また、無印良品 東京有明で行っている食品や洗剤の“量り売りサービス”や、古着を回収した“リサイクル”、余った食品の回収を行う“フードドライブ”はゴミを減らすためのものです。自然とのより良い関係を目指す無印良品は、地球資源の循環化および廃棄物削減に向けて、これからもできることからすすめていきたいと思っています。
ーー40周年を迎えた2020年ですが、今後の取り組みについてお聞かせください。
松橋 無印良品では全国津々浦々で生活者に寄り添った地域での出店を加速するかたわら、東京や大阪などの「都市部の人口密集地」での大型店を展開しています。この目的は地域を超えた交流やコミュニティづくり、物販を超えたサービス提供や環境活動の推進です。生活者や企業・行政との共創を軸にしながら、地域や環境に役に立つプラットフォームになることを目指していきたいと思います。
筆者は熱狂的な“無印ファン”ではありません。しかし、「無印良品 東京有明」の店内をめぐり、今まさに時代の境界にいるようなワクワクする気持ちを抱きました。無印良品の新しい試みから、今後の時流を感じることができるかもしれません。ぜひ一度足を運んでみてください
<SHOP DATA>
無印良品 東京有明
住所:東京都江東区有明2-1-7 有明ガーデン モール & スパ棟1-3F
営業時間:10時〜20時
定休日:不定休
※Cafe&Meal MUJI東京有明のラストオーダーは19時30分
撮影/我妻慶一