イケア・ジャパンは8月23日、「イケアプレスデー2024 Assembling a better future, together ~よりよい未来を一緒につくりましょう~」を開催した。イケアが2023年7月28日に創業80年を迎えたことを機に、これまでに育んできた独自の価値観「イケアバリュー」を基にした2024年度の展望を紹介。今後発売予定の新商品の先行公開や2024年に開業予定のイケア前橋店の詳細発表も行った。
2024年度に向けて、より快適な毎日を提供する取り組み
「より快適な毎日を、より多くの人に」をビジョンとするイケアは、言わずと知れたスウェーデン発祥のホームファニッシングカンパニーで、現在、世界62か国で460店舗を展開している。同イベントでは、イケア・ジャパンの代表取締役社長兼Chief Sustainability Officerのペトラ・ファーレ氏が登壇。イケアのビジョンや取り組みについて語った。
イケアでは「よりお手ごろに」「より身近に」「よりサステナブルに」の3点に重点を置いてさまざまな取り組みを行ってきた。それについてファーレ氏は、「低価格でありながら、根底にはイケアが掲げるデモクラティックデザインを忘れず、美しいフォルムや見る人の心を惹きつける優れたデザインを追及していきたいです」と述べた。「より身近に」という点においては、現在全国に28か所ある商品受け取りセンターを今後も積極的に展開していくという。また、イケアポップアップストアも展開していき、厳選した人気商品をより多くの人へ届けられるよう取り組んでいくとした。
サステナブルへの取り組みでは、2023年中に温室効果ガスの排出量より、削減する量を多くする “クライメート・ポジティブ” になることを目指す。イケア・ジャパンは2018年以降、店舗での再生可能電力100%を達成し、エネルギー効率は2010年度からこれまでに40%向上。食に関しても、国内3店舗のスウェーデンレストランとビストロにおいて、プラントボール(原材料にエンドウ豆のタンパク質、オーツ麦、ジャガイモ、リンゴを使用した肉を使わないミートボール)を低価格で販売し、利用者がサステナブルな選択をできるようにしてきた。2023年秋には、新たに17台のEVトラックを導入し、計25台を運用することでゼロエミッション配送25%到達を目指すとしている。
「イケアは、より多くの人がより快適な暮らしを過ごせるよう、より良い家づくりをサポートしていきたいと思っています。そのためには、人々の力が不可欠です。コーワーカー(従業員)やお客様、地域の皆さんのおかげでこれまでの業績を作り上げることができたことに、心から感謝します。より良い企業を作るために、今後も環境や人々のニーズを反映した新しい取り組みを続けていくことに注力していきます」(ペトラ・ファーレ氏)
2024年は「家での暮らしと収納」に注力
続いて、イケア・ジャパン Country Home Furnishing & Retail Design Managerの谷川舞氏が登壇。2024年の商品展開のテーマとなる「家での暮らしと収納」について説明した。まず、家での暮らしが多様化するにともないモノが増え、それに合わせた収納が必要となることにフォーカス。一方、部屋を片付けるためにすべてのモノをしまい込めば、自分らしさが消えてしまうことを課題とした。
しかし、片づけないままで散らかっている部屋では、ストレスを感じてしまうことも事実。イケアが2014年度より毎年、世界中の人々を対象に行っているレポート「Life at Home」最新版でも、その実態が明らかとなっている。同レポートによると、家が散らかっていたり、モノがあふれていたりすると、5人に4人もの人がストレスを感じていることが分かった。さらに、49%もの人が、散らかっていることが原因で家族と口喧嘩することがよくあるとも回答している。これらのことから、収納がメンタル・ウェルビーイングの向上に加え、人間関係をより円滑にすることにも重要な役割を担っていることが明らかとなった。
そこで、イケアではこれらの問題解消の一端として、2024年度には、さまざまなアプローチで収納商品やアイデアを提供していく予定だという。谷川氏は「デモクラティックデザインの考えに基づき生まれた商品は、イケアのアイデンティティです。収納に関する商品は、長年多くのお客様に愛されてきました。人気商品を活用した新しい提案をすることで、より多くのお客様にイケアの収納を知って、さらに使って欲しいと思っています」と新商品へ注力する意気込みについて語った。さらに収納自体をどう捉えているかについては、「収納は義務として捉えるのではなく、楽しみながら自分らしく表現し、より良い暮らしを作るための解決策だと考えています」と、述べた。
収納のソリューションを提案していく手段について、今後は店舗だけではなく、オンラインストアやポップアップ、ライブイベント、カスタマーサポートセンターのリモートプランニングサービスなど、ユーザーが提案を受けられる場所を広げていくという。
ここからは、今後発売予定の商品のうち、注目すべきアイテムを紹介していこう。
80周年で過去の人気商品を復刻
同イベントでは、イケアの80周年にあたり、過去のアーカイブからアイコン的なデザインを選りすぐって復刻する「Nytillverkad / ニティルヴェルカード コレクション」が紹介・展示された。オリジナルのデザインに忠実ながら、楽しいカラーと素材でデザインし直した商品は、すでに7月に初回分が発売されている。会場でも展示されていた商品は、自分で組み立てる必要がある最初の商品のひとつとして1956年に発売された、サイドテーブル「LÖVBACKEN / ローヴバッケン」(9900円)をはじめ、スツール「DOMSTEN / ドムステン」(4000円)、ポールハンガー「BONDSKÄRET / ボンドシェーレット」(4999円)など。IKEA of Sweden Range Identity Leaderのカーリン・グスタフソン氏は「若い人達はとてもオシャレです。ですから、スツールには新たにグリーンなど、よりポップで楽しいカラーを追加しました」と紹介した。
※価格はいずれも税込み
また、2024年春に販売予定のアーティスト・高橋理子氏とのコラボレーション「SÖTRÖNN / ソートロン」についても世界に先駆けて発表された。高橋氏は、円と直線による表現を手がけるアーティスト。着物を表現媒体としたアートワークのほか、自身のブランド「HIROCOLEDGE」で日本各地の職人とものづくりを行っている。
今回発表されたのは、クッションカバーと香り付きキャンドル。クッションカバーの図柄については、国籍も人種も世代も性別も超えて、どこでも受け入れられるものをデザインしたという。また、キャンドルについては「カラーにもこだわりましたが、香りにもとてもこだわりました。世界中で販売されるので日本的な香りを選んで使用しています」と説明した。
そのほか、イケア初の日本人デザイナー、中村昇氏がデザインしたパーソナルチェア「POÄNG / ポエング」もリニューアルして2024年春に発売予定だ。
北関東初のイケアストア「イケア前橋」、2024年はじめにオープン
2023年8月現在、イケア・ジャパンは全国に大型店舗9店舗、都市型店舗3店舗を展開。カスタマーセンターに加えて24時間稼働のオンラインショップとアプリも運用している。近年は、より多くの人に提供できるよう、タッチポイントを増やしており、総合的に包括的なアプローチをするオムニチャンネル化を加速している。そして、2024年はじめに北関東初のイケアストアとして「イケア前橋店」をオープンすることを発表した。
地上2階建て、店舗面積約1万平方メートル、敷地面積約5万8000平方メートルで、売り場は既存の大型店舗に比べると若干小さめではあるものの、約9500商品が取り揃えられ、スウェーデンフードも楽しめる。また、同店は売り場面積に対して、比較的大きな倉庫を持ち合わせており、北関東の物流拠点の役割も担っていくという。
現在、内装プランやソフト面となる組織のオペレーション構築などが着々と進められている。さらに、7月末に前橋市で開催された第1回ジョブフェアでは350名以上が参加。8月26日に開催された第2回も400名以上が参加登録した。
創業80周年を迎えて、なおもあふれる探求心を持って革新的な商品デザイン、人々の環境とニーズを反映した取り組みを行うイケア。復刻商品や新店舗オープンなど、これからもイケアの発表から目が離せない。
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