桜の写真は奥が深い。ただ何となくカメラを向けただけでは、その場で感じた美しさや感動を写真に残すことは難しい。では、どうすれば見栄えのいい桜写真が撮れるのか。前回に続き、プロカメラマンによる桜撮影7つのテクニック後編をお伝えしよう。
その5「レンズ」にこだわる
自分が思い描くイメージどおりの桜写真を撮るためには、使用するレンズの焦点距離に応じた、写りの特性を知っておくことが大切だ。漠然とズームで寄ったり引いたりするのではなく、広角と望遠を意識して使い分けるようにしたい。
最初の写真は、焦点距離50mmの「標準レンズ」で撮影したもの。標準レンズは人間の視覚に近く、誇張のない自然な雰囲気の桜写真にしやすい。
標準よりも焦点距離が短い「広角レンズ」は、広い範囲が写ることと、見た目以上に遠近感が強調されることが特徴だ。広角では桜の木の広がりや奥行き、スケール感などを表現しやすい。
下の写真は、焦点距離16mm相当の広角で撮影したもの。レンズの近くにある花は大きく、離れた位置にある花は小さく写っている。標準レンズで撮ったものに比べると写り方はまったく異なり、強弱が明確になっていることがわかるだろう。
注意点は、広角レンズで離れた位置から撮ると、多くのものが写りすぎて間延びした構図になりがちなこと。広角レンズでは、できるだけ桜に接近して撮るのがおすすめだ。近寄るほど遠近感が強調されてメリハリが生まれ、迫力を感じる桜写真になる。
一方、高い位置ある桜の花を大きく引き寄せて捉えるには「望遠レンズ」が役に立つ。望遠レンズは、遠景を引き付けられるほか、桜の前後にボケを作り出したり、遠近を圧縮して画面の密度を高めたりする効果がある。
さらに、小さな桜の花びらを大きくクローズアップで撮りたい場合には「マクロレンズ」があると便利だ。
その6「花びら」にこだわる
桜をクローズアップで捉える際の注意点として、撮る前に花のひとつひとつを観察し、写真映えのする美しい個体を探すことが欠かせない。離れた距離から全体を眺めるときれいに見えていても、接近すると花びらの欠損や小さなキズ、汚れなどが目立つ場合があるからだ。きれいな花が見つかったら、その花を生かすような構図を選択しよう。
また、咲いている桜だけでなく、落ちた花びらも写真の被写体として好適だ。地面にも目を向けて、絵になるシーンを探すといいだろう。
その7「人の姿」にこだわる
きれいな桜をきれいに撮っても、それだけでは他人との差別化は難しい。人とは違ったオリジナリティーのある桜写真を目指すなら、桜に加えて、人の姿を積極的に写し込んでみよう。
シーズンになると桜のまわりには多くの人が集まってくるが、そうした人々の姿をスナップするのだ。あるいは、家族や友人に協力してもらうのもいい。カメラ目線の記念写真ではなく、桜を眺めている様子をさりげなく撮ってみよう。桜のある風景に人の姿が加わると、それだけでドラマやストーリー性を感じさせる桜写真になる。
以上を参考にして、さまざまな角度から桜写真を楽しんでみてほしい。