会津の日本酒がなぜ旨いのかを探る記事の後編。今回は、会津を牽引する蔵元とそれを取り巻く環境にスポットを当て、会津が台頭した理由の核心に迫っていきます。
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3つの銘柄の台頭が次世代に希望を与えた
ひと昔前は「二級酒天国」などと残念な表現をされた福島県の会津が、なぜ“旨酒天国”となったのか――。それは、日本酒新時代を牽引する「飛露喜(ひろき)」「会津娘(あいづむすめ)」「奈良萬(ならまん)」の台頭が、次世代に「本気で酒造りと向き合えば自分で未来が創造できる」という希望を与えたこともひとつの要因でした。
第二世代の「寫樂(しゃらく)」(宮泉銘醸)、「会津中将(あいづちゅうじょう)」(鶴乃江酒造)、「ロ万(ろまん)」(花泉酒造)、さらにニューウェーブの「天明(てんめい)」(曙酒造)、「弥右衛門(やうえもん)」(大和川酒造店)、「大和屋善内(やまとやぜんない)」(峰の雪酒造場)、「山の井(やまのい)」(会津酒造)、「笹政宗(ささまさむね)」(笹政宗酒造)など、会津には新たな注目銘柄が続々と誕生しています。蔵元同士が技術を共有して刺激しあい、次世代を巻き込みながら切磋琢磨していくという“伝統”を生み出したことも、会津の大きな財産です。
醸造界のカリスマが所属する醸造試験場の存在が大きい
会津の酒蔵が酒質を向上させている背景には、福島県が運営するハイテクプラザ(醸造試験場)の存在を無視しては語れません。ハイテクプラザとは「うつくしま夢酵母」など県独自の酵母を開発する研究機関でありながら、蔵元に技術指導をする学びと交流の場。酒蔵の息子がここで勉強をしてから蔵に戻り、酒造りをはじめるといったケースも多くみられます。
もちろん学びの門戸は世代に関係なく開かれ、「飛露喜」をはじめ県内のほぼ全蔵元が相談に訪れているそう。特にハイテクプラザの職員、鈴木賢二さんは醸造界のカリスマで、福島だけでなく全国的に有名な先生。こうした県の公設機関やカリスマ的な先生の存在は全国的に見ても珍しく、技術向上を目的とした蔵元同士の縦と横に繋がりが生まれやすい環境も、会津の酒質向上にひと役買っています。
売り手と造り手が理想的な関係を構築
さらに会津では、植木屋商店、五ノ井酒店、渡辺宗太商店ら5軒の酒販店がタッグを組む「力水會」や、会津に隣接する郡山市の泉屋といった熱心な売り手と、造り手との間に理想的な関係が築かれています。
その証拠に、会津では人気銘柄でも地元で飲めますし(地域によっては、人気銘柄が地元で手に入らないことも多い)、酒販店が希少なお酒をプレミア価格で販売することもありません。また、酒販店は若手蔵に積極的にアドバイスを行って育成に務めるほか、蔵の計画出荷にも協力的。サービス精神も旺盛で、積極的にイベントを開催するなどして、会津酒のファン獲得に貢献しています。
おいしい日本酒を醸すのは酒蔵ですが、それを県がしっかりサポートし、酒販店が共存共栄の商売をしていることが、“旨酒天国”会津の繁栄に繋がっているのです。酒蔵を継ぐことがステイタスとなれば、若い世代はどんどん育っていくでしょう。日本酒新時代を盛り上げる酒蔵が今後も会津から台頭することに期待しながら、ぜひ会津の旨酒を楽しんでください。
【会津・福島の旨酒が楽しめるイベントはこちら!】
「東京會津祭2016」
7月17日(祝前日)開催
【URL】
http://peatix.com/event/162639
「酒プライム」
6月26日(日)開催
【URL】
https://www.facebook.com/sakepu/
「力水〈ふくしま地酒〉を楽しむ会」
6月19日(日)開催
【URL】
http://www.uekiya.net/wp-content/uploads/d3c5e0d3a90d1161d6de1e91e0b9a118.pdf
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