絶滅が危惧される鉄道車両 第2回 JR西日本103系・201系
103系や201系電車といえば、JR化される前の国鉄が、近代化をおし進める中で製造された代表的な国鉄形通勤電車。東京や大阪などの大都市で、長年“国電”として多くの通勤・通学客を運び、日本経済の発展に大きく貢献した。それこそ、40歳代以上の多くの方々が、見慣れ、乗り慣れ、また世話になった車両でもある。武骨ながら頑丈さを絵に描いたような電車だった。そんな103系・201系に、思い入れが強い方も多いのではないだろうか。
国鉄形通勤電車の代表格、103系が生まれてから半世紀以上。ここ数年、201系を含め急速にその車両数を減らしている。最後の“聖域”だった関西圏からも、続々と姿を消しつつある。惜しまれつつ消えていく103系や201系といった古参の車両たち。その現状と、いまどこに行けばお目にかかれ、乗車できるかを追いかけてみた。
【歴史】先輩車両の101系から通勤電車の技術が大きく変化
終戦後、しばらくの間は混乱期が続く。戦後まもなくの通勤電車といえば、こげ茶色の旧型国電が一般的だった。車両は不統一で、技術的にも古く立ち遅れていた。そんな国鉄形通勤電車の姿を大きく変えたのが、1957(昭和32)年に誕生した101系電車だった。
当時の新しい技術を積極的に取り入れた「新性能電車」で、同系の車両を1ユニットとして編成を組み、運用するという、画期的な電車だった。その101系を、さらに進化させたのが103系で、1963(昭和38)年に登場。1984(昭和59)年まで3500両近くが製造され、各地の路線で活躍した。
一方の201系は、103系が製造されていた晩年にあたる1981(昭和56)年から量産化された電車だ。国鉄では初めての電機子チョッパ制御などの技術を採用、「省エネ電車」として造られた。ただし、製造コストがかかり、東京と大阪の3路線にしか投入されなかった。とはいえ、1000両以上の車両が製造されて長年、両地区の主力車両として活躍した。
JR分社後、103系はJR北海道とJR四国を除く各社に、また201系はJR東日本とJR西日本が引き継いだ。すでにJR東日本・JR東海が引き継いだ車両はすべてが消滅している。
JR西日本の車両となった103系、201系は、各車両とも大幅な “延命工事”を受け、主力車両として大事に扱われ続けてきた。とはいえ、製造されて半世紀近く。新型車両の導入もあって、ここ数年は消える車両が増えてきている。ここでは、関西圏で103系、201系が走る主要3路線の現状と今後の展望を見ていこう。
【現状その1】大阪環状線を走るオレンジ色の103系・201系のいま
大阪環状線といえば、「大和路快速」「関空快速」といった快速電車が乗り入れ、また特急「はるか」「くろしお」が走る大阪都市部の華やかな路線といったイメージが強い。この大阪環状線をぐるりと回る本来の電車といえば、つい先頃まで国鉄形電車103系、201系の独壇場だった。オレンジ色の電車が大阪環状線の顔でもあった。
大阪環状線では4ドア車の103系と201系と、3ドア車の快速電車がホームを共用している。JR西日本には混乱を避けるため、またホームドアを設置するためにも、同じドア位置にしたいという思いが強かった。
そんな大阪環状線にも刷新の波が押し寄せた。2016年12月24日に新型323系電車(3ドア車)が登場、JRゆめ咲線(桜島線)にも乗り入れを始めた。大阪環状線の車両基地・吹田総合車両所森ノ宮支社には、2016年4月の段階で103系8両×7編成が配置されていたが、323系の導入で、2017年1月末には8両×2編成のみと急減している(1編成はラッピング車)。
2018年度までに323系は計168両(8両×21編成)が新造される予定だ。森ノ宮支所には201系が2016年4月の時点で8両×16編成が在籍していたが、こちらも323系の導入に合わせて、減っていくことになりそうだ。
【現状その2】3月3日が見納め? 阪和線の水色103系
大阪環状線よりも、変化が著しいのが阪和線である。つい最近まで、阪和線の普通電車といえばスカイブルーの103系が当たり前。ごく一部の電車にスカイブルーの帯の205系が使われていた。
そんな車両模様が一転してしまう。関西圏の多くの路線を走る225系が阪和線用に新造されたのだ。阪和線では、これまでも225系は走っていたが、主に関空快速や紀州路快速用などの優等列車に使われていた。そんな225系が普通電車にも使われ始める。2017年度中には、122両の225系が投入される予定だ。
この増備により阪和線では、103系の運用が減少、朝夕のごく一部というように、出会える機会が、めっきり減ってしまった。その運用もJRのダイヤ改正に合せて3月3日が最後となる可能性が高い。
そんな阪和線だが、沿線で確実に103系と出会える線区がある。阪和線の支線でもある羽衣線(はごろもせん)だ。鳳駅〜東羽衣駅の一駅区間を、3両編成の103系が走っている。羽衣線を走る103系は、ワンマン運転用に改造されてはいるものの、103系が生まれたころの姿を良く残している。だが、羽衣線も4両編成の電車運転に備えてホームの延長工事の真っただ中。工事は2017年秋ごろに終了の予定で、この路線にも他形式が導入され、103系の撤退が予想されている。
【現状その3】最後まで活躍しそうな関西本線・奈良線の103系・201系
減りつつある関西地区の103系、201系だが、これらの国鉄形電車の最後の活躍の場となりそうなのが関西線、奈良線、おおさか東線といった各線である。走る車両は吹田総合車両所奈良支社に配置された103系、201系で、色はうぐいす色(黄緑6号)。正面に白い帯が入る。2016年4月の段階で103系が78両、201系が96両、配置され、主に普通電車として活用されている。
現状、関西線では201系の運用が主流となっている。103系はおおさか東線、奈良線といった路線を走ることが多くなっている。これらの路線では顕著な動きは見られないが、近い将来に考えられることとしては、阪和線を走った205系が奈良地区に移り、103系の代わる存在となること。また現在、大和路快速として走る221系が、普通電車として走り、快速用に225系などが導入される可能性が考えられる。
いずれにしても、関西線、奈良線の変動は、大阪環状線、阪和線の新車導入が一段落してからのことだろう。当分の間、同路線では103系、201系に出会え、乗ることができると思われる。
【番外編】京阪神や九州でも103系が走行中!
減り続けるJR西日本の国鉄形通勤電車だが、103系は京阪神の都市部からやや離れた路線でも、わずかながら残っている。103系が走るのは、播但線と加古川線だ。加古川線は103系3550番代が走るが、正面の形が大きく改造され、103系とは異なる形式にように感じる。対して、播但線の103系3500番代はワンマン運転用に改造はされているものの、103系本来の姿を残している。
ちなみにJRの他の会社の103系は、唯一、JR九州の直流電化区間の筑肥線に残っている。2015年3月までは福岡市地下鉄の路線にも乗り入れていたが、現在は乗り入れが終了。新型車両の導入に合わせて、閑散区へ移り筑前前原駅〜西唐津駅間を走っている。地下鉄路線への乗り入れを念頭に造られた車両なので、正面に貫通トビラを設けたスタイル。赤い色の正面が目立つ。
各地に残るいまや貴重となったる103系だが、後継車両の出現にはまだ間がありそう。しばらくの間は各地で103系の姿を楽しむことができそうだ。