タモリさんは天才である。ありとあらゆるものを流行らせてしまう才能の持ち主だ。芸能人が身につけることで商品が売れることを、その人の名前を冠して“●●売れ”と言う。しかし、どんな人をもってしても、タモリさんの影響力にはかなわない。
■タモリさんの影響力は半端ない
タモリさんの代名詞といえば「笑っていいとも!」だ。しかし、その「いいとも」が終了したことでテレビでの露出が減り、かつての勢いは失われると勝手に思っていた。それはとんでもない間違いだった。健在であるどころか、ますます勢いが増している気がする。
NHKの「ブラタモリ」は、視聴率を稼ぎまくっている。書籍化もされるようだし、取り上げられた名所の観光客が急増するなどの人気ぶりだ。埼玉県のイメージを強烈に印象付けた「ダ埼玉」も、タモリさんの造語である。「ダ埼玉」は、当時あまりに流行してしまったため、埼玉県知事や県の関係者がなんとかイメージを変えようと躍起になったという歴史がある。その発言の影響力たるや、他の芸能人を圧倒するレベルと言っていい。
■「タモリ倶楽部」で紹介されて売れまくった本
そして、タモリさんといえば芸能界でもトップレベルの鉄道好きで知られる。人気番組「タモリ倶楽部」では、よく鉄道ネタの企画が放送され、鉄道ファンの世界にも大きな影響を及ぼしている。番組に出演して有名になった鉄道好きのタレントは数多い。
さて、番組内で紹介され、書店から在庫がなくなるほど売れてしまった本がある。貨物列車専用の時刻表、通称『貨物時刻表』だ。2004年4月16日に放送された「ダイヤ改正記念! 貨物時刻表でダイヤを確認しよう!?」で取り上げられたことで、購入希望者が殺到。貨物時刻表が史上はじめて増刷されたことで有名である。
■出版不況の打開策はタモリさんにあり!?
内容はというと、貨物時刻表を手に、ひたすら貨物列車をウォッチングするというものだった。ゆるく、それでいて濃密な感じはいつものタモリ倶楽部である。私は鉄道ファンではないが、ついつい見入ってしまった記憶がある。
それにしても、この番組を見て貨物時刻表を買い求めたのは、いったいどんな人なのか気になる。鉄道ファン以上に、マニアでもなんでもない一般人も相当数含まれていたのではないだろうか。貨物列車のダイヤは一般人の関心の対象にはなりにくい。にもかかわらず、一般人にマニアックな本を買いに走らせてしまうタモリさんの影響力は、とんでもないなあと改めて思う。
近年、出版不況が叫ばれている。莫大な費用をかけて新聞などに広告を打つより、「タモリ倶楽部」に企画を持ち込んで取り上げてもらった方が、はるかに宣伝効果があるのではと思うのは筆者だけだろうか。
■貨物列車はかっこいい
筆者はJR武蔵野線の沿線で生活しているが、この路線はひっきりなしに貨物列車が行き交うことで有名だ。もともと貨物列車の線路を、旅客列車用に転用したためである。轟音を立てて列車がホームを通過する様子はなかなか壮観だ。
『貨物列車ナビ2015-2016』(学研パブリッシング・著/学研プラス・刊)は、そんな貨物列車の奥深い世界が凝縮された一冊である。鉄道ファンならずとも、ビジュアル重視で迫力満点の写真と、何より列車の力強い姿に圧倒されることは間違いない。本書を読んで、貨物列車に少しでも興味が湧いたら、貨物時刻表を片手に、タモリさんのように貨物列車のウォッチングに出かけてみるのもいいかもしれない。(文:元城健)
【参考文献】
貨物列車ナビ2015-2016
著者:学研パブリッシング
出版社:学研プラス
鉄道ファン注目の貨物列車の最新ニュースと魅力を紹介する人気ムックの2015-16年版。特集は「変わる北海道貨物輸送」。その他日本海縦貫線ルポや最新JR機関車動向など充実の内容。2015年3月ダイヤ改正対応の時刻表も収録。