現在、既婚で子なし34歳の私ですが、最近いろんな人から「そろそろ子どもは?」と聞かれます。私たち夫婦は一度「子ども」について話をしていて、今のところは「子どもを持たない人生」を歩もうと決めています。なので、この質問の答え方に悩んでしまうのです。決めたとは言っても、人生何があるかわからないから、養子縁組をするかもしれないし、授かるかもしれないし、自分たちもどうなるのか、この先のことはわかりません。でも、今の気持ちに正直になると、そう決めたのです。
決めた後に手にした『誰も教えてくれなかった子どものいない女性の生き方』(くどうみやこ・著/主婦の友社・刊)には、丁寧に子どものいない女性の生き方が紹介されていて、日本にはこんなに悩んでいる女性がいたんだという共感と驚き、私が何気なく言った言葉に傷ついた人もいたかもしれないという後悔、こういう考えを持ちたいという希望など、自分だけでは整理できなかったたくさんの感情が動かされて、読了後も度々ページを開いては、自分と向き合う時間を作ることができました。
今回は一人でも多くの人に読んでもらいたい『誰も教えてくれなかった子どものいない女性の生き方』についてご紹介します。
「子どもがいない」ことについて、誰にでも話せる人はごくわずか
この書籍の中では、平均年齢44歳(28〜65歳)の女性301人に実施したアンケートが掲載されています。その中に、「Q.子どもがいないことで肩身が狭いと感じたことはありますか?」という質問があるのですが、81%の方が「ある」と回答しています。「子どもがいない」という中には、私のように「持たない」と決めた方だけではなく、欲しかったけれど授からなかった方、経済的に育てられなかった方、仕事中心でタイミングを逃してしまった方など「子どもがいない」理由も様々です。
また「Q.子どもがいないことの思いや本音を話せますか?」という問いには、「誰にでも包み隠さず話せる」と回答したのは301人中わずか6人。39人が「誰にも本音を話したことはない」、37人が「親しくなくても同じ立場の人なら話せる」、36人が「夫(パートナー)には話した」と続きます。
こう言った背景をもとに、著者であるくどうみやこさんは、『マダネプロジェクト(https://www.madane.jp/)』を立ち上げます。このプロジェクトでは、不定期で会合を開催したり、SNSでの情報発信をしていますが、「グランマダネ」という子どものいない女性の先輩たちが情報を共有してくれる場にもなっているそうです。
この『誰も教えてくれなかった子どものいない女性の生き方』にもグランマダネの人生が紹介されており、これからの人生を考えるきっかけになる言葉ばかりでした。アンケートや社会背景を読みながら、こうした先輩方のエピソードも知れるので、リアリティのある内容。ご夫婦はもちろん、すでにお子さんがいらっしゃる方や、自分の両親にも読んでもらいたいと思った一冊でした。
気持ちはスパっと決まらない、悩み続けてたどりついている
『誰も教えてくれなかった子どものいない女性の生き方』を読み進めていくと、子どもがいない理由はそれぞれなのだと感じるのですが、「産めるか、産めないか」「欲しいか、欲しくないか」の、きっちり二択で分けられるものではなく、グラデーションのように様々な感情が混ざり合いながら、年月をかけて「子どもを持たない」という結果になるです。
また子どもを望まない人の中には、自分自身が「子どもが欲しい」と思えないことに悩んでいる女性もいることも知りました。「欲しかったのに、産めなかった」も「欲しくないから、産まなかった」も結果としては同じ子どもを持たない女性ですが、望まない女性の心境はどんなものなのか、抜粋してご紹介します。
「女性なら妊娠・出産や育児を望んで当たり前という空気にずっと違和感を覚えていました。自分も大人になれば、いずれ子どもがほしくなるかもしれないと気持ちの変化を待っていたものの、結局そういった気持ちは訪れませんでした。かといって、子どもは義務感で持つものでもないはずです」(40歳・既婚・会社員)
「周りからとやかく言われるので、子どもが欲しくないことを説明するのが面倒。周りがみんな産み育てていても、自分は欲しいとも産みたいとも思わない。そんな自分は欠陥品ではないかと悩んだりもしています」(45歳・既婚・専業主婦)
(『誰も教えてくれなかった子どものいない女性の生き方』より引用)
こういうコメントに対して、厳しい意見や非難をする人をネット上でも見かけますが、その人の人生を尊重し、産まなかった人を責めるのは違うのでは? と感じます。子どもがいないことによる悩みは本当に多様だし、「こういう価値観もあるのね」と知っていくことも今の社会においてはとても重要なのではないかと感じるのです。自分の正義や常識を振りかざして強要するのではなく、相手の気持ちに寄り添い、いろんな価値観を知っていくことが、これからの社会を生きていく、多様な家族のカタチを理解するためにも必要なことだと思いました。
とは言っても、まだ後ろ髪を引かれてしまう私……
多様な社会の一員と思っていても、やはり子どもがいないことで社会との接点がひとつなくなっている、役割を果たしていないというような気持ちがまだまだあって、ちょっとザワついてしまう時もあります。けれど、この文章を読んで、なんだかホッとできたのです。
ある70代のかたがおっしゃったことですが、心に響いたのでご紹介します。そのかたは子どもが3人いますが、子どもは神様からの授かりものであり、社会からの預かりもの。子どもは自分のものではなく、大人まで育てたあとは社会に戻す。だから自分はそれまでの役割を果たしている。子どもがいない人は、また別の役割を神様が与えてくれているはずよ、と話してくれました。
(『誰も教えてくれなかった子どものいない女性の生き方』より引用)
私自身、その役割がなんなのかまだはっきりとはわかっていませんが、まだモヤモヤとしている部分については、時間をかけて向き合いながら、大なり小なり役割を見つけていきたいと思っています。
2020年以降、いろんな理由で「子どもがいない」生き方を選んでいく家族が、気持ちよく生きていける社会を、そしていつかは、子どもがいる・いないにかかわらず、社会全体が本当の意味での多様性が認められ、ひとりひとりが堂々と自分らしく生きていける世の中になって欲しいと願います。興味を持たれた方は、ぜひ『誰も教えてくれなかった子どものいない女性の生き方』を手に取って、ページをめくってみてください。きっと自分の気持ちのどこかに必ず引っかかる言葉があるはずです。
【書籍紹介】
誰も教えてくれなかった子どものいない女性の生き方
著者:くどうみやこ
発行:主婦の友社
子どもの写真入り年賀状を見ていやな気持ちになるのは私だけ? 子持ちの人たちは私たちのことをどう思っているの? もう吹っ切れたと思ったのにまた落ち込んでしまうのはなぜ? 子どもをあきらめたあとに続く苦悩はいつになったら消えるの? 子どものいない女性300人の本音満載。少し先行く先輩たちが包み隠さず教えてくれた、子どものいない人生の受け入れ方、つらい時期の乗り越え方。