本・書籍
2020/2/5 21:45

お茶の間からどこへ行く? 『平成が終わったらテレビからいなくなってたものたち』を読みながら、テレビのこれからを考えてみる

テレビ、見ていますか?

 

朝はニュース番組を見ながら朝自宅をして、家に帰ってきたらアニメを見て、夕方のニュースを見ながら晩ご飯を食べて、8時のゴールデンタイムのバラエティ、そして月9のドラマ。深夜はちょっとアダルトな番組で……なんてお茶の間の中心だったテレビは、いまや『TVer』や『hulu』などのアプリを使って好きな時間に好きな番組が見れるコンテンツに変化してきました。

 

みんなでリアルタイムに見るものから、個人が好きな時に好きなものを見るものへ変化してきたテレビ。果たしてテレビはどこへ向かっていくのでしょうか?

今回は『テレビブロス』でもご活躍されていた堀井憲一郎さんが、ご自身で執筆されてきたコラムを振り返りながら現代のテレビを考察した『平成が終わったらテレビからいなくなってたものたち』(堀井憲一郎・著/徳間書店・刊)をご紹介します。

 

 

夏の夜の「野球中継」

『平成が終わったらテレビからいなくなってたものたち』は、過去にテレビブロスで執筆されたコラムからピックアップされたものを、改めて振り返ってみて考察し直す構成になっている書籍です。昔のテレビを知らない人も、最近テレビを見ていないという人も楽しめる一冊になっています。

 

テレビの変わった部分で考えてみると、野球中継の回数は圧倒的に減りましたよね。試合の延長に合わせてドラマが押しちゃうみたいなこともほぼなくなり「あれ? 野球っていつやってたっけ?」なんて思ってしまいます。

 

とは言いつつ、2019年のセ・パ公式戦の入場者数は合計2653万6962人で、1試合あたりの平均は3万929人! 2018年は1試合あたりの平均2万9779人、2017年は平均2万9300人と過去3年の中でも動員数は昨年が最高。野球人気はまだまだ健在なのに、どうしてテレビ中継は減ってしまったのでしょうか?

 

参考:2019年 セ・パ公式戦 入場者数(http://npb.jp/statistics/2019/attendance.html)

 

テレビで見るより、球場でナマで見ようという流れに変わったという面もある。みんな「ライブ」のほうが好きになったのだ。21世紀になって、野球に限らずみんなライブに行こうとするのは、おそらくバーチャルなものが身近に増えたからではないだろうか。日常生活にライブ感がなくなっているってことですよ。大変だな21世紀は。

(『平成が終わったらテレビからいなくなってたものたち』より引用)

 

確かに、私自身も音楽やお笑いなど「ライブ」に行く回数が増えたようにも思います。そうか、日常生活にライブ感がなくなっているのか……。いつでもどこでもに慣れてしまっているけど、もっと「今」だからこその旬を味わう人生を楽しまないとと考えさせられます。

 

 

『笑っていいとも!』は、タモリさんがめっちゃ歩く番組だった?

またこの『平成が終わったらテレビからいなくなってたものたち』では、著者の堀井さんが昭和の終わりから平成にかけてのテレビに関する様々なことを数えています。例えば、期間を区切ってCMに出ていたタレントを数えたり、『水戸黄門』で印籠を出す時間を調べたり、『夢で逢えたら』のコントパターンを分析していたり、『サザエさん』の出来事をまとめたり、ググっても出てこないような分析をしてくれているのです。

 

中でも一番面白くて納得感が高かったのが、お昼の番組の「動き」に注目して歩数を数えたものでした。1988年6月の1週間、タモリさんが司会の『笑っていいとも!』(フジテレビ)と、欽ちゃんが司会の『欽ちゃんのどこまで笑うの!?』(テレビ朝日)と、山城新伍さん司会の『新伍のおまちどおさま』(TBS)の3人が番組内で歩いた数を比較しているのですが、1週間の合計が山城新伍さんが166歩、欽ちゃんが547歩、タモリさんが1055歩と圧勝!(笑)これについて、当時の堀井さんは以下のように考察しています。

 

これは”遊園地”だと思う。ゲストが乗り物で、タモリがそれで遊びまわっているのを見て楽しむという仕組みになっている。会場の客もジェットコースターに乗っているような声出してるし、ね

(『平成が終わったらテレビからいなくなってたものたち』より引用)

 

さらに「当時はお昼に楽しさを求めていたのだ」とも分析していました。現在放送されている『バイキング』でも『ヒルナンデス』でも、「楽しさ」よりも「情報」が発信されているからか、ほとんど司会者は歩きませんもんね。そう考えると、お昼だけでなく、夜の番組も遊園地のような番組は減ったようにも思います。良い悪いは置いておいても、遊園地のような刺激的な番組を見て育った世代としては、テレビからYoutubeなどのネット番組やNetflixなどの配信番組に刺激を求めているのは正しい流れなのかもしれないな……と考えてしまいました。

 

 

テレビの砂嵐は、もう見れないのか…

そして『平成が終わったらテレビからいなくなってたものたち』を読んでいて、ハッとしたのは、テレビの砂嵐。2011年の地デジ化以降、砂嵐はなくなっていたのですが、それにすら気がついていない自分自身に一番驚きました(笑)。今は深夜2時にもバラエティ番組は放送されているし、なんなら朝までドラマの再放送をしていることもあるし、ほぼ朝な時間帯にテレビを付けても通販番組が寂しさを紛らせてくれるような時代になりました。砂嵐があったことなんて、忘れていたよという人も多いのではないでしょうか?

 

テレビがお茶の間から、ひとりひとりで見るものに変わっていっても、人間が「面白い」と思う気持ちや「感動」する部分は変わらないと思うので、時代の流れにのりつつも、こうしてなくなったものにリスペクトを送りながら、新しい時代を生きていきたいと感じます。

 

あなたは最近、テレビ見ていますか?

 

 

【書籍紹介】

平成が終わったらテレビからいなくなってたものたち

著者:堀井憲一郎
発行:徳間書店

平成が終わり令和が始まりました。平成の30年間で、テレビから何が消えて、何が変わってしまったのか、世の中のことをとにかく調べまくるコラムニスト・堀井憲一郎が検証します。昭和の終わりから平成のはじめに、雑誌「テレビブロス」で連載していた人気コラム「かぞえりゃほこりのでるTV」を再検証して、現在はどうなっているのか、30年後の今を再調査します。

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