実は筆者、去年ひそやかにブログデビューした。それなりに苦労して準備を整え、それなりに見た目も凝って、やる気満々で書き始めた。ところが、壁にぶつかるのは思いのほか早かった。
記事をアップする頻度、時間帯、文字数、そしてもちろん内容。読んでもらうためには、さまざまな要件を満たす必要がある。最初は週1回、自分なりに満足がいく内容で、決まった曜日の決まった時刻のアップを死守していた。でも、だんだん追いつかなくなってくる。スケジュールを守るためだけに書くのでは意味がない。そう思い始めてからアップの頻度が低くなり、今ではまったくと言っていいほど書けていない。
記事1本を15分で書くプロブロガー
悩んだ筆者の目に留まったのが『武器としての書く技術』(イケダハヤト・著/中経出版・刊)という本だ。著者のイケダハヤトさんの肩書はプロブロガー。大手半導体メーカーでツイッターを利用した広報活動やソーシャルメディアに特化したブログで注目され、ヘッドハンティングを経てベンチャーのコンサルティング会社に勤務した後独立し、プロブロガーになった人物だ。
著者紹介に、記事1本15分で書くと記されている。圧倒的なスピードに驚くのはもちろんだが、それに加えて、書くという行いの向こう側に広がっているネタの豊富さはどうなっているのだろう。
こういう人たちが対象です
この本の立脚点は明快だ。
文章に自信がない人、書くことを生業にしたい人、悶々とした人生に突破口を見出したい人。そんなひとたちにとって、きっと役立つことと思います。
『武器としての書く技術』より引用
この文章だけ切り取ると漠然と聞こえるかもしれないが、本の内容はとても具体的で歯切れがいい。そういう特色は、章タイトルにも垣間見える。
第1章 文章が残念な人の10の特徴
第2章 凡人の文章を最強の文章に変える10の魔法
第3章 月40万字書き続けるぼくの12の秘密
第4章 ここまで公開していいのか? 書いて月50万円稼ぐ法
第5章 書く技術はこんなに人生を豊かにする
イケダさんのブログ『イケハヤ大学』もさっそくチェックしてみた。カテゴリーはブログ運営ノウハウだ。悩み多き筆者は、次から次へと読み進んでしまった。
文章を書くのは料理と同じ手順で
第1章に印象的な一文があったので、紹介しておきたい。
文章作りは料理作りに似ています。ただただ、手に入った食材をポンポン鍋に放り込んでいくと、「食べられる何か」はできあがるでしょうが、なんだかわからないものになってしまいます。これでは、誰も食べてはくれません。
『武器としての書く技術』より引用
ならばどうするか。まず心がけるべきは以下の5点だ。
① その文章で何を伝えたいか(料理名を決める)
② まず書きたいことを箇条書きにしてみる(材料を集めてくる)
③ どういう流れがベストか考える(手順を考えながら調理)
④ 具体例などを入れながら肉付けしていく(味付け)
⑤ 伝わる文章に味付けしていく(スパイス)
すでにブログを書いている人も、これから始めようと思っている人も同じように意識すべきことにちがいない。この段取りに基づく添削も紹介されていて、使用前・使用後の写真を見ているような気になる。
筆者を押しとどめていたものが見つかった
第3章にも、はっとする文章があった。
書き続けられない人にありがちなのが、「こんな中途半端なことを書いて、バカだと思われないかな」という恐れです。あなたも会議の場などで発言をする際、「バカと思われる恐怖」にとらわれ、言いたいことを引っ込めてしまったことがあるのではないでしょうか。
『武器としての書く技術』より引用
それ、まさに私です。しかしイケダさんは言う。「最大限頭を働かせた末に紡ぎ出された言葉なら、どんなに中途半端で、未熟であれ、発信しておくべきです」
確かに、完璧さを求めるあまり推敲を何回も重ねていたら、それが作業の中心になってしまうだろう。
まずは書いてみよう
ネタ探しと蓄積に関しては、第3章の具体例が役立つだろう。そしてブロガーという仕事を生業としていきたい人たちは、第4章で多くのヒントを得られるはずだ。第5章では、書くという行いに対するイケダさんの愛情がダイレクトに伝わってくる。
各章の終わりにポイントが簡潔にまとめられているのも、記憶曲線を高めに保っておくことに役立つ。好きなことは躊躇せずにやってみたほうがいい。まずは書いてみよう。そして書いたものは、余計なことを一切考えずに発信したほうがいい。
ビジネスマンの企画書や学生のレポート、あるいは卒論にも転用できるアイデアいっぱいの一冊だ。読み終えてすぐ、筆者は解約を考えていたサーバーの年契約を更新した。
【書籍紹介】
武器としての書く技術
著者:
発行:中経出版これまでの文章術では通用しない! ウェブ時代を生き抜くための「新時代の書く技術」教えます。
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