仕事ではもちろん、自身のライフワークとしてビールのトレンドを追いかけている筆者。数多くのビアスタイルがあるなかで、「そろそろ日本で本格的にブレイクしてもいいのでは?」と思っているのが、サワービールというスタイルです。
というのも、2018年に書いた「今夏のクラフトビールは「サワー」「副原料」、そして「ブリューパブ」というキーワードで読み解く」という記事で「日本でもいずれ浸透していく」と予言しましたが、いよいよ起爆剤的な商品が出たのです。
それが「ブルックリンベルエアサワー」。そこで、改めてサワービールの特徴や味わい、ヒットの根拠などを担当者に直撃。これからのビールトレンドにも迫ります。
海外で最もファン層が増えているビアスタイルはサワービールだ
「ブルックリンベルエアサワー」は、世界中で盛り上がっているクラフトビールムーブメントの最重要企業といって過言ではない、米国NY発のブルックリン・ブルワリー社が手がけているブランドです。その名にピンとはきていなくても、ロゴを見ればわかるという人は多いでしょう。
サワービール自体は日本でも、愛飲家を中心に一定の人気を得ています。しかしまだまだ認知はクラフトビール好きの域を出ていません。近年ようやく「IPA」(インディアペールエール)という苦味の効いたスタイルや、フルーティな白ビール「ホワイトエール」(またはベルジャンホワイトエール)がスーパーに並ぶようになりましたが、業界の雄であるブルックリン・ブルワリーがサワービールを日本展開したことですそ野が広がり、次のスター候補になるのでは?というのが個人的な見解です。
前置きはこのぐらいにして、サワービールと「ブルックリンベルエアサワー」の特徴をお伝えします。サワービールとは、乳酸菌を使って発酵させることで、自然由来の酸味を引き出した爽やかなビールのこと。
サワーの直訳は「酸っぱい」であり、確かに一番の特徴は酸っぱさです。とはいえ酢のようなツンとした感じは皆無で、フルーティで心地よく爽快に飲める酸っぱさが印象的。ということで、このビールが生まれた背景から、ブルックリン・ブルワリージャパンのマーケティングディレクター、小西裕太さんに聞きました。
「アメリカでは2015年ごろからサワービールが流行りはじめましたが、ブルックリン・ブルワリーでは2017年に『ブルックリンベルエアサワー』を発売しました。なぜタイムラグがあるかというと、最適な乳酸菌を探すのに2年ほどかかったからです」(小西さん)
サワーエールづくりの決め手となるのが乳酸菌です。もともと、酸っぱいビールにはベルギーの伝統的なランビックというビアスタイルがあり、これはナチュラルワインのように、野生酵母で発酵させるビールのこと。このような酸の効いた味を、野生酵母以外のやり方で新しく生み出せないか――そうして見出されたのが乳酸菌なのです。
「『ブルックリンベルエアサワー』はアメリカをはじめ海外でも好評を博し、本国のNYではいくつかのサワービールがあるなかで、いまやナンバーワンのサワービールとなりました。また、データは売上金額ベースなのですが、一番の成長率で人気が出ているのもサワービール(取材時点)。単純なランキングではいまもIPA系の苦くジューシーなビールが上位ですが、ファン層が増えているのはサワービールなんです」(小西さん)
アメリカ以外の国をみても、ヨーロッパやオーストラリアなどのクラフトビール先進国では前年比の2倍以上の勢いでサワービールが伸びているとか。そしてこのトレンドは日本でも同様に広がるのではないか、というのがブルックリン・ブルワリー社の見解です。では、その理由は?