火山の噴火によって一夜にして消えたポンペイ。かつて南イタリアにあったこの都市は、古代ローマの貴族たちの別荘地でした。しかし、シンシナティ大学とテュレーン大学の共同研究チームが最近発表した調査で、ポンペイはごみを有効活用して造られていたことが判明しました。2000年以上も前にサステナブルな街づくりを行っていた古代都市から私たちが学べることはあるのでしょうか?
リサイクルはとっくの昔にやっていた
19世紀の調査では、ポンペイの堤防状の壁などの土塁はベスビオ火山の噴火前の地震による「ただのごみ山」と考えられていました。ところが、今回の共同研究チームが土壌サンプルを採取し科学分析にかけたところ、当時使われていた壺やタイルのかけら・漆喰・モルタル(古代ローマのセメント)などが混ざっていることが判明。この土壌サンプルは砂質が高く、市内の道路や建物の壁・床などに使われている材料と同じものでした。漆喰やモルタルが混ざり合うことによって壁の表面が美しくなめらかになるなどの利点があるため、ポンペイの人たちはこれらの成分をうまく利用していたようです。
さらに、この土壌サンプルは長い年月をかけて継続的に蓄積されており、ポンペイでは長期にわたってリサイクル資材を生み出して街を造っていたこともわかりました。ポンペイの人々はごみを習慣的に市壁の外側に集めておき、使えるものを分別し、リサイクル資材として市内で消費。ごみが溜まれば溜まるほど、また新しい資材ができ上がるという考え方です。
市壁の外側には別の富裕層の居住区が続いているにもかかわらず、市壁が分別ごみの収集所となっていました。ポンペイの人々は自分たちが出したごみを廃棄物として扱わず、身近なところに置いてすぐに再利用またはリサイクルできるようにしていたと考えられます。研究チームを率いるテュレーン大学のアリソン・エマーソン教授はこういったポンペイの取り組みについて、廃棄物を人間生活からできるだけ離れたところへ移す、という現代の埋立地の発想とは違ったものであったとしています。
ローマのテクノロジーは現代の私たちが使っている多くの物に利用されていますが、ローマ帝国時代に使われた古代建築材料のローマン・コンクリートの建物のなかには、ローマのパンテオンのように2000年以上経つ現在でも崩壊せず残っているものもあります。古代ローマの科学技術者たちは火山灰・石灰・火山岩の混合物と海水を混ぜることによってミネラルを形成し、化学反応で強度を出すというイノベーションを起こしていたのです。
しかも、ローマン・コンクリートは強度と耐久性が年々増すように造られていたので、もし復元することができれば今後何世紀にもわたって使える可能性もあります。