アラフォー、アラフィフの独身女性たちの関心ごとのひとつに「このまま一生独りなのだろうか問題」があります。残りの人生を共に過ごす誰かを探すか、それともこのままひとりで生き抜くか、この迷いにはどう立ち向かっていけばいいのでしょうか。
年上はイヤだという気持ち
最近では40代以上向けの婚活パーティーもあり、40代以上を歓迎する結婚相談所も少なくありません。アラフォー、アラフィフの女性が不意に思い立って婚活を始めることもしばしばあり、実際私の周りにもそうした事例がいくつもあります。けれど、結婚についてかなりこだわりがある人が多く、婚活は難航しがち。特に多いのが「年上男性は厳しい」という声です。
彼女たちの言う年上とは、60代以上の男性のこと。結婚相談所でその年代を勧められて、衝撃を受けてしまうのです。婚活アプリに登録しても、いいねを押してくれるなかに60代が大勢いるのだとか。自分はこういう年代に好かれる年なのだということ、もう若くはないということを認めたくないのかもしれません。
希望は家事ができる年下の男性
私の知り合いの40-50代女性に結婚したい男性の希望を聞くと「年下で家事ができる人」と答える人が多くいます。年下の男性といたほうが気持ちも若くいられるし、家事をすることに抵抗がなさそうだし、なにより自分が働き続けることに理解がありそう、と言うのです。10歳以上年下なら構わない、と言う人も多いです。
彼女たちが年上の男性は厳しいと考える理由のひとつに、働き続けることに良い顔をされない可能性があります。この世代は、妻に専業主婦でいてもらいたがる人も多く、彼や彼の家族に介護が必要になった際などに、仕事をやめてもらえないかと言われるかもしれないと、躊躇してしまうのです。
現実をいやというほど突きつけられる
『ひとりでしにたい』(カレー沢 薫・著、ドネリー美咲・協力/講談社・刊)は、婚活に揺れるアラフォー、アラフィフ女性の心をえぐりまくるシーンが満載の、なかなかキツいマンガです。何しろ35歳のヒロインが、独身を貫いた70代のおば様の孤独死を知ることから始まるのですから。
「やっぱ将来のためには(結婚)しといたほうがいいのかな」と婚活を始めた彼女を阻んだのは、10歳以上年下のイケメン同僚。40-50代女性が大好物なスイートな展開になるかと思いきや、彼の口からは意地悪い言葉しか出てきません。「結婚すれば将来安心って昭和の発想でしょ」と手厳しいのです。
見られたくない恥部が次々と!
「30代の男はまず20代の女に行きますし」
「40代でも平気で20代狙いますからね」
「来るとしたらもう50代近い男か自分の親の介護とか緊急に「人手」がいる男だけじゃないですかね」
(『ひとりでしにたい』より引用)
などと、聞きたくないことばかりを並べ立ててくる年下の彼。アラフォー・アラフィフ女性が薄々感じている、一般婚活市場での自分の世代への需要のなさを、あまりにも赤裸々に世間に知らしめているではありませんか。
バレちゃったのならしょうがない
漫画には、老後に一緒に暮らそうねと独身を貫いた女友達と妄想するシェアハウスのことや、結婚女性への独身女性のマウンティング事例など、「やめて! それを描かないで!」と叫びたくなるシーンが次々出てきます。それでも読み進めてしまったのは、今まで目を逸らしてきた現実を直視したくなってきたからかもしれません。
この世代の女性達が隠しておきたい恥ずかしい部分を容赦なく描いているこの漫画。迫り来る老いに対抗し、さまざまなアンチエイジングを試みて頑張ってきたのに、その裏側の、不安が波打っている状況が暴露されてしまっています。
でも、これでいいのかもしれません。ずっと強がってきたけど、そう、ひとりのままでいるのは、不安なんです。それを理解してくれる人がいたら、大変光栄です。そして現実を見せつけられたことで、かえって生き抜くパワーも湧いてきた気がします。
【書籍紹介】
ひとりでしにたい
著者:カレー沢 薫、ドネリー美咲
発行:講談社
いわゆるひとつのバリバリのキャリアウーマンで、優雅な独身生活、余裕の老後を謳歌していたかに見えた伯母がまさかの孤独死。黒いシミのような状態で発見された。その死にざまに衝撃を受けた山口鳴海(35歳・学芸員・独身)の人生は婚活から一転終活へ。死ぬのは怖い。だけど人は必ず死ぬ。ならば誰より堂々と、私は一人で死んでやる。一人でよりよく死ぬためには、よりよく生きるしかない。愛と死をひたむきに見つめるフォービューティフルヒューマンライフストーリーの決定版誕生!