ベテラン自動車ライターの永福ランプとフリーエディターの安ドが、深いような浅いようなクルマ談義をするクルマ連載「クルマの神は細部に宿る。」。今回は、メルセデス・ベンツのエントリーモデルであるAクラスをピックアップ。永福ランプが久々に試したかったこととは?
※こちらの記事は「GetNavi」 2020年10月号に掲載された記事を再編集したものです。
【PROFILE】
永福ランプ(清水草一)
日本中の貧乏フェラーリオーナーから絶大な人気を誇る大乗フェラーリ教の開祖。様々な自動車専門誌や一般誌、Webなどで、クルマを一刀両断しまくっている。2018年以降、ペンネームを「MJブロンディ」から「永福ランプ」へ変更している。
安ド
元ゲットナビ編集部員で、現在ではフリーエディター。永福ランプを慕い「殿」と呼んでいる。
【今月のGODカー】メルセデス・ベンツ/Aクラス
SPEC【A180スタイル】●全長×全幅×全高:4420×1800×1420mm ●車両重量:1430kg ●パワーユニット:1.3L直列4気筒+ターボ ●最高出力:136PS(100kW)/5500rpm ●最大トルク:200Nm/1460〜4000rpm ●WLTCモード燃費:15.4km/L
●337万円〜798万円
ベンツの中では一番安い部類
安ド「殿! 今回はなぜA180なのですか」
永福「ダメか?」
安ド「いえ、AクラスならセダンやAMGなど新しいモデルもあるのに、なぜ1年以上前に出たA180ハッチバックを希望されたのかと」
永福「それはもちろん、A180が一番お安いからだ」
安ド「なぜ一番安いモデルを?」
永福「それは言うまでもない。安いほうがサイフにやさしいではないか!」
安ド「実際に買うなら安いに越したことはありませんが……」
永福「A180は、一応337万円から買える。このA180スタイルだと380万円。オプションのレーダーセーフティパッケージが25万3000円、ナビゲーションパッケージが18万9000円。このふたつの装備を付けない人はおるまい。その他のオプションも含めると、今回の撮影車両は合計515万円にもなっておったが、それでもベンツの中では一番お安い部類なのだ!」
安ド「ハハー!」
永福「それにな、私は例の『ハ〜イ、メルセデス!』をもう一度やってみたかったのだ」
安ド「会話で操作できるMBUX(メルセデス・ベンツ ユーザー エクスペリエンス)ですね。それならほかのメルセデスにも付いていると思いますが……」
永福「いや、Aクラスが出たとき、『この機能は学習によって成長するので、子どもを育てる気持ちで』と聞いていたから、1年半後の成長を見てみたかったのだ」
安ド「さすが深いお考えです! で、成長してました?」
永福「いや、成長しておらなんだ」
安ド「ええ〜〜〜っ!」
永福「メルセデスではない、私が成長しておらなんだ。相変わらずメルセデス君がちょっと物わかりが悪いと、『ボタンで操作したほうが早いじゃね〜かよ!』などと、すぐキレてしまってのう」
安ド「なるほどぉ! 僕は、『意外とすぐ理解してくれるなぁ』と思いましたが」
永福「うむむ……」
安ド「『ハイ、メルセデス。アンビエントライトを紫にして』と言ったら、一発でやってくれました」
永福「それを聞いていたので、同じことを言ってみたが私はダメだった」
安ド「ダメでしたか!?」
永福「アンビエントライトをアンビエントコントローラーと言い間違えたのだ。そしたらハネられた」
安ド「ですか……」
永福「クルマとお話するのは、中高年にはハードルが高いな」
安ド「ですか……」
永福「それと、メルセデスなのに高速道路で3回もアオられた」
安ド「えっ!」
永福「後姿が控えめで、国産の小型車っぽく見えるからだろうか」
安ド「う〜ん、顔はCLSなどと同じなんですけどねぇ」
永福「無念だ」
【GOD PARTS 1】ヘッドライト
ツリ上がったライトはシャープで都会的な印象
新世代メルセデスの特徴であるツリ目フェイスが採用されています。シャープで都会的な雰囲気ですが、ほかのモデルも造形が似ていて(よく見ると違うけど)、一般の人は見分けがつかないのではないかと心配になります。
【GOD PARTS 2】アンビエントライト
室内を艶やかに彩る照明は64色から選べる
間接照明のような淡い光で車内を彩る「アンビエントライト」がオプション装着されています。64色に変えられるそうですが、MBUXで言葉で伝えようとすると(下記参照)、そんなに色の名前を知らないため、結局、「赤」や「紫」になってしまいます。
【GOD PARTS 3】AMGホイール
ワルっぽさをプンプン放つ大型のアルミホイール
今回のモデルには、26万円もする「AMGライン」が装着されていました。「AMG」は、ハイパフォーマンスモデルを制作するメルセデスのサブブランドで、このホイールはAMG仕様。大径サイズで黒とシルバーに塗られ、いかにもワルそうです。
【GOD PARTS 4】大型ディスプレイ
シンプルな造形は煩わしくなくて好ましい
ドライバーの目の前には、非常に大きな横長ディスプレイが鎮座しています。インパネのデザインを損なわないシンプルな造形は好感が持てますが、実は表示は左右2面になっていて、メチャクチャ横に長い一枚絵が見られるわけではありません。
【GOD PARTS 5】タッチパッド
手元を見ることなくスマホのように操作可能
センターコンソール上にはコントローラーが設置されていて、センターディスプレイ上に表示されるカーナビなどの操作を、手元を見ずに行うことができます。近年のモデルではタッチパッドまで付き、指先だけでポインターを動かせます。
【GOD PARTS 6】エンジン
3種類のパワーユニットを設定
メルセデスはひとつのモデルに複数種類のエンジンを設定することが多いのですが、このAクラスも1.3Lターボのガソリンと2.0Lターボのディーゼルに加え、2.0Lターボのガソリン(AMG A35)と3種類をラインナップ。1.3Lでも十分速いです。
【GOD PARTS 7】MBUX
呼べば答えてくれる会話できるクルマ
「ハイ、メルセデス!」と呼べば答える、自動対話式音声認識インターフェイス「MBUX」が未来を感じさせます。「天気を教えて」など、フランクに話しても答えてくれますが、「ハイ、ベンツ!」では起動しません。何か気に障ったのでしょうか。
【GOD PARTS 8】フロントシート
スポーティさと高級感との両立を狙う
「AMGレザーエクスクルーシブパッケージ」では、本革シートはツートーンカラーです。赤と黒でスポーティさと高級感の両方を求めているようですね。座面の先端は前にせり出させることができるので、太ももが長い人には好都合です。
【GOD PARTS 9】リアシート
3分割の可倒式で自由に荷室アレンジ
先代モデルより広くなった後席ですが、もちろん前方に倒すことができます。荷室とつなげることで長尺の荷物を積めるようになり、40:20:40の割合で3分割できるので、載せたい荷物に合わせて、自在にアレンジできるのが便利です。
【これぞ感動の細部だ!】リアスタイル
攻撃性がまったく感じられないリアまわり
全体的にシンプルなスタイリングで徹底されていますが、フロントまわりはちょっとキツめな印象です。一方、ボディ後方に回ると、まったく別のクルマかのように柔らかなデザインが採用されていて、凡庸ながらも安心感があり、個人的にはこのお尻に好感が持てます。2019年にはセダンモデルも追加されていますが、こちらもトランクが付いて出っぱっただけで、やはりほんわかしています。
撮影/我妻慶一