パナソニックは、SDカーナビステーション「ストラーダ」の10V型有機ELディスプレイ搭載モデル「CN-F1X10BLD」「CN-F1X10LD」と、9V型WVGAディスプレイ搭載モデル「CN-F1D9VD」を10月中旬に発売します。有機ELディスプレイを車載用に採用する例は欧州車で見られますが、国内の市販ナビゲーションに採用したのはこれが初めて。そのポイントを内覧会で取材してきました。
有機ELディスプレイを採用
今回、上位機種となるCN-F1X10BLD、CN-F1X10LDの2機種は“F1X プレミアム10/有機EL”というロゴがあしらわれています。その理由はディスプレイに色再現性の高い有機ELパネルを採用したことで、ストラーダ史上もっとも高画質なカーナビとしたからです。
有機ELは素子自体が発光するためバックライトが不要です。それが映像の基礎となる“漆黒の黒”を実現し、さらに「AGAR低反射フィルム」「エアレス構造」を採用することで映り込みを低減。これらが一般的な液晶ディスプレイをはるかに上回るコントラスト比をもたらしたのです。これが“プレミアム”たる所以です。
実際にそのデモ映像を見ると驚きました。真っ暗な夜空を埋め尽くす提灯のムービーが見事なまでのリアルさで再現されていたのです。今までのストラーダでは夜空にどこか白っぽさがあって提灯が際立ちませんでした。有機ELパネルを採用した“F1X プレミアム10”では、HDの解像度とも相まって、提灯の一つひとつが鮮明に描かれています。これは一般的な液晶パネルと違って光の漏れをゼロにできるからこそ実現できたものであり、単に画面の大きさだけでなく、再現するクオリティにまでこだわった開発陣の意気込みが伝わってきました。
もちろん、2DINスペースさえあれば大半の車種に取り付けられる、F1シリーズの特徴はそのまま。今回は取り付け可能車種をさらに増やし、業界最多の430車種以上としました。ブルーレイなどの映像メディアもオプションのバックカメラもHD画質で表示できるなど、新たに装備した有機ELディスプレイをフルに活かす仕様となっているのです。
バックライトが不要である有機ELディスプレイは、厚さ約4.7mmという驚きの薄さも実現しています。厚みがなくなると強度が不安になるものですが、外装フレームには軽量で高剛性なマグネシウムダイカストを採用し、内部をハニカム構造とすることで軽量化と強度確保を両立。アングル調整や左右15度に振ることができるディスプレイ部のヒンジの強度はそのままながら、耐振性を大幅に向上させているのです。画面が大きいとブレは気になるからここは重要ですね。
ナビゲーションのプラットフォームは従来モデルを継承したものですが、ソフトウェアでのブラッシュアップはもちろん図られています。もっとも大きな機能アップが市街地図の収録エリアを全国津々浦々までシームレスに表示できるようにしたことでしょう。これにより収録エリアは従来の1295都市から1741都市へと拡大。
ほかにも方面案内標識のピクト表示の追加を行い、交差点拡大図で表示される残距離の拡大も図っています。これらは既にパナソニック「ゴリラ」でも実現した機能ですが、こうした細かな案内は不慣れな土地へ出掛けた時こそ役立つもの。高精度な測位能力を合わせ持つストラーダなら、そのメリットがより活かせるようになるでしょう。
ストラーダの伝統でもある安全・安心運転へのサポートも踏襲されています。一時停止や制限速度を知らせる機能を備え、生活道路区域の「ゾーン30」は色分けして音声と共に警告を発します。さらに重大事故を招く逆走に対しても高速道路のサービスエリアやパーキングエリアで、その行為を検知して警告も行います。
また、交通情報システム「VICS WIDE」にも対応しており、FM多重VICSを受信するだけで渋滞を避ける「スイテルート案内」を可能としました。目的地検索ではスマホにインストールした「NaviCon」を活用できるほか、カーナビと対話しながら目的地を設定できる音声認識能にも対応しています。
ハイレゾ音源を活かす回路設計の見直しも図られています。グランド・信号・パターン設計などの回路設計を見直した上で、低DCRチョークコイルを新規採用して音質を大きく改善。ノイズ対策としてもDSP/DAC専用アース線構造を追加してノイズの原因となる信号の回り込みを大幅に低減させています。これらによってもたらされた特に高域の音の広がりや音像定位感のアップは、ハイレゾ音源を再生する上で大きなメリットとなるでしょう。また、CN-F1X10BLD、CN-F1X10LDにはHDMI入力が新たに用意され、スマホや「Amazon Fire TV Stick」を接続して動画配信を楽しむことも可能になりました。