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2020/8/6 21:00

カーナビの新トレンド「フローティング」、最後発の「彩速ナビ」は使えるか?「MDV-M907HDF」レビュー

近年、カーナビゲーションを語るうえで欠かせないのが“大画面化”です。少し前だったら8インチでも大きいほうでしたが、いまや9インチや10インチの大型ディスプレイを備えるカーナビが相次いで登場するようになり、大画面カーナビは大人気。

 

ただ、どのクルマでも大画面化ができるかと言えばそうではありませんでした。このサイズをそのまま一般的な横幅180mm~200mmのスペースに入れるのは困難だったからです。

 

そこで急速に人気が高まっているのが、カーナビ本体は前述のサイズに収めながら画面だけを浮かせる、言わば「フローティング構造」を備えたカーナビです。この方式であれば画面サイズに左右されずに多くの車種で大画面化が可能になります。今回はこのタイプとしては最後発で登場したケンウッドの彩速ナビ「MDV-M907HDF」を紹介します。

↑フローティング構造を採用したケンウッド 彩速ナビ MDV-M907HDF。

 

230以上の車種に搭載可能

彩速ナビはフラッグシップの「TYPE M」を筆頭に、ミドルクラスの「TYPE S」、ベーシックモデルの「TYPE L」と、3タイプのラインナップを揃えます。今回紹介するのはそのトップに位置する「TYPE M」シリーズに属するモデル。9インチ大画面のHD液晶(1280×720ピクセル)ディスプレイを採用して大画面化を果たし、彩速ナビ初となるフローティング機構の採用によって230車種以上での搭載が可能です。

 

試乗車に取り付けられたMDV-M907HDFを見ると、その画面サイズに圧倒。9インチの画面サイズもさることながら、ディスプレイがダッシュボードから浮いた状態にあるため、よりビッグな印象を受けるのです。

 

しかも、起動したディスプレイは十分な輝度があり、高コントラストでとても美しい。地図データもディスプレイ解像度に合わせて作り直されており、それだけに地名や街区までも鮮明に表示します。特に3Dポリゴンで表示した建物はそのリアル感に驚かされました。

↑リアルな3Dポリゴンで表示した状態でもスムーズな回転、スクロールを実現。処理能力の高さが実感できる

 

ディスプレイを浮かせて装着するとなれば、走行時の振動によるブレが気になりますよね。この問題に対してケンウッドは、独自の機構技術によって走行時の不快なブレを大幅に低減したと言います。実際にディスプレイに触れて揺すってみましたが、確かにディスプレイはビクともしません。フローティング機構を採用したカーナビはこれまでも多く見てきましたが、ここまでしっかりとした造りは初めてです。

↑モニター部は最適なアングルに変更が可能。その取り付け部の剛性の高さは揺すってもブレない高剛性を確保

 

ただ、ディスプレイのアングルは変更はできるものの、左右方向へ振ることはできません。それでも従来のハイエンド機と比べて約1.3倍の明るさとなる高輝度カスタムLEDバックライトを採用したことや、ディスプレイの視野角が広いことも相まって、車内のどこからでも美しい映像が楽しめました。これならDVDや地デジを見るときでも同乗者から不満が出ることはないでしょう。

↑9インチ大画面は視野角も広く、車内のどこからでも視認できる

 

表示された情報もとても見やすいのが特徴。これは彩速ナビ伝統の「オーガニックGUI」によってもたらされたもので、高解像度な画面に緻密な情報をグラフィカルに表示し、その上で直感的な操作を可能としています。

 

特に、HOME画面では運転に必要な情報が一括して表示され、走行中はリアルタイムの情報をガイドするInfo画面が役立ちます。また、多彩な走行情報を伝えることで安心・安全をサポートするドライブメッセージもその都度提供される仕組みもあり、ドライブの安心度アップに大きく貢献することは間違いありません。

↑自車位置の測位能力も大きなポイントで、トンネル内でも高精度に正しい位置を示した。左上部に案内ポイントやドライブメッセージが表示されたりする

 

カーナビとしての基本性能は従来を引き継いでいますが、その能力は十分に納得がいくスペックを備えました。自律航法を司るジャイロセンサーには高精度で測位し正しい自車位置を独自アルゴリズムで維持する「6軸慣性センサー」を採用。日本全国を網羅した傾斜データと高度にマッチングする「高測3Dジャイロ」を組み合わせることで、山岳路やビル街をはじめ、立体駐車場を周回しても安定した自車位置精度を実現したということです。また、衛星による測位についてもGPSだけでなく「みちびき」や「グロナス」にも対応して精度を高めています。

↑目的地までの案内ルートは条件別に5種類から選択が可能。アジャスター機能も備えており、ルート設定の自由度は高い

 

↑ルート案内中の画面。分岐点に近づくと大型の矢印をポップアップし、さらに近づくと交差点拡大図で進行方向を案内する

 

ナビ以外の機能性はどう?

エンタメ系の機能も充実しています。HDMIの入出力端子を備えたことで、手持ちのスマホ内にある映像やストリーミングの映像を本機の大画面で視聴可能。また、ナビの映像をそのままHD品質でリアモニターへの出力して楽しめるミラーリング機能にも対応しており、前席でカーナビを使いながら後席ではHDMIを介した高画質映像を楽しむことができるのです。もちろん、前席と同じカーナビを後席モニターへ出力することもできますよ。

 

オーディオもカーナビ中、最高スペックを搭載しました。ケンウッドが長いこと経験を積んできたハイレゾ再生にも対応し、CDをはるかに超える広帯域の音楽が楽しめるのです。スペックとしては従来機を踏襲していますが、「DSD」や「FLAC」「WAV(192kHz/24bit)」といった、さまざまなハイレゾ音源フォーマットに対応。

 

また、ハイレゾ音源をBluetooth接続で転送できる高音質コーデック「LDAC(エルダック)」に対応したことで、手持ちのデジタルプレーヤーなどの再生にも役立ちます。話題の高音質CD「MQA(Master Quality Authenticated)」の再生にも対応しているの点も見逃せません。

↑車室内の音響特性をフラットに近づける「プロモードEQ」や、好みの音づくりが楽しめる13バンド イコライザーと合わせ、きめ細かな音質調整を可能にした

 

↑音の出力レベルを表現した「VUメーター」モードを用意。音楽の動きが見た目にもわかる懐かしい演出だ

 

そして、彩速ナビで見逃せないのがドライブレコーダーとの連携です。MDV-M907HDFでも、ナビ画面上にドライブレコーダーの映像を映し出せる機能を備搭載。その機種は前後撮影に対応した「DRV-MN940」です。前後のカメラとドライブレコーダー本体を別体式とすることで、カメラ部のコンパクト化に成功。カメラを取り付けても視野を広く取りつつ、前後方向の状況をリアルタイムに捉えられるのです。

↑前後撮影対応2カメラドライブレコーダー「DRV-MN940」と連携が可能。カメラ部と本体部をセパレート化したことで視野を狭めずに取り付けられる

 

しかも、その映像はフルHDで記録し、MDV-M907HDFのHDディスプレイ上でその画質を余すことなく再現。後方を確認できる電子ミラーとしても有効なだけでなく、万一のアクシデントや“あおり運転”に遭遇しても、その様子をくまなく記録しておけます。操作は画面上のアイコンを操作するだけ。気になったシーンを手動操作で上書きされないフォルダに保存しておくこともできます。

↑ドライブレコーダーの映像はMDV-M907HDFの画面いっぱいに表示することも可能。ナビ利用中でも静止画や手動録画もワンタッチで行える

 

↑ドラレコの映像は常に表示することが可能で、後方の映像は電子ミラーとしての役割も発揮する

 

フローティング構造により大画面ならではの見やすさや使い勝手の良さを実現し、カーナビとして本質を極めるべく細部まで徹底的にこだわった“彩速ナビ”MDV-M907HDF。移動中の時間をより楽しいものにしてくれる数少ないカーナビと言えるでしょう。なお、本機はオープンプライスですが、実勢価格は13万5000円(税別)と発表されています。

 

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