人間にはストレスの許容量に限界があるらしい。限度を超えると堪忍袋の緒が切れて激怒したり、気分が鬱々としてしまったりと行動や気持ちに変化が現れるのではないだろうか。
ストレスは数値化できる!?
ストレスをわかりやすく数値化したのは心理学者のホームズとレイである。彼らは1968年に、人生上に起きるストレスがかかる出来事にそれぞれ点数を付けた。これらの合計が300点を超えた人の79%が翌年に何らかの不調を訴えたという。
それらを、日本人向けに大阪樟蔭女子大学の夏目 誠さんらが改善したものが「ライフイベントストレスチェック」と言われるものだ。最も高い点数は「配偶者の死」(83点)、その次が「会社の倒産」(74点)、「親族の死」(73点)「離婚」(72点)と並んでいる。こちらの場合は600点を超えると高ストレス状態だと見なされる。
【参照】
ストレス点数の夏目
一度にストレスを抱え込むと苦しくなる
私自身、子どもを出産した直後、気持ちがひどく落ち込み、とにかく寝ているしかない時があった。当時の状況を点数化してみると「出産(家族メンバーの変化)」(41点)、「引越」(47点)、「妊娠」(44点)、「結婚」(50点)などなど、合計するとかなりの高得点に。さらに「夫婦げんか」(48点)なども重なった。
授かり婚は離婚しやすく、5組に2組、つまり40%は離婚するのではとも言われている。私自身もそのひとりになってしまったけれど、これはいくつものストレスが一気に襲いかかり、限界に達してしまうからなのかもしれない。
人生の大きな変化がストレスに
『がんばらなくても死なない』(KADOKAWA・刊)は、ストレスを抱え込んだ女性漫画家・竹内絢香さんのコミックエッセイだ。彼女は漫画家になりたいという夢を実現するため、会社を退職し、海外留学し、フリーランスとなって仕事を始めたがなかなか仕事を得られず、強いストレスを感じた時期があったという。
漫画を読むだけでも「転職」(61点)、「仕事の減少」(44点)、「住宅環境の大きな変化」(42点)など、彼女に得点が次々積み重なっていくのがわかる。変化が一気に起きると、それだけストレスがかかってしまうのだ。彼女が深い落ち込みから立ち直り、毎日を楽しく過ごせるようになったポイントを描いたのがこの本である。
がんばりすぎたら、消耗する
竹内さんの場合、仕事が全くなくなってしまった際に強い焦りを感じ、みずから過酷なスケジュールを組んで活動し続け、体を壊してしまったという。点数にすると「多忙による心身の過労」(62点)と「自分の病気やケガ」(62点)がドーンと重なってしまった状態だ。
人間は、「なんとかしなくちゃ」と感じた時に、やみくもに頑張りすぎて、かえって消耗してしまうことがある。けれど、気持ちが落ち気味の時に無理をすると、かえって疲れが増し、気持ちがさらに上がりにくくなってしまうかもしれないのだ。
ストレスに立ち向かわない方法
現代に生きる私たちは、SNSなどで友人知人の喜怒哀楽に触れる機会が非常に増えた。多くの人が自分の人生に大きな出来事があると、それをSNSにアップする。誰かが結婚する一方で、誰かの親族が亡くなっているという書き込みを日々目にしている。それは少なからずこちらにもストレスになってしまうのだ。
竹内さんも「多様な情報を日々消化していくにはけっこうな気力と体力が必要」だと感じ「無理しないでSNSを避けてもよかった」と考えるに至った。なので元気が出るまではSNSを離れ、ひたすら自分の好きな本を読むようになったという。心の調子がいまいちな時は、体調がいまいちな時と同じく、しばしの休息が必要なのだろう。
この本には、ストレス状態になった際に、そうっとそこから遠ざかるコツがあれこれ紹介されている。戦わなくてもいいんだ、逃げてもいいんだ、無理してSNSで「おめでとう」などと書き込まなくてもいいんだ、と自分を許してあげられる自分になるための、大切なきっかけが生まれるかもしれない。
【書籍紹介】
がんばらなくても死なない
著者:竹内絢香
発行:KADOKAWA
“無理してがんばる”のを諦めたら、生きるのがラクになった。心が軽くなる30の考え方。疲れた心に寄り添う、無理しない生き方コミックエッセイ。