ビタミンA、ビタミンC、カルシウムなど、毎日の生活で必要な栄養分をまとめて摂取できる「マルチビタミン」や「マルチミネラル」のサプリメント。栄養素別に摂取する必要がないため、専門知識がない一般の方にとっては便利な存在です。しかし最近、サプリメントは飲んでも飲まなくても健康に大差はないとする調査結果が発表されました。サプリメントの本当の効果とは何なのでしょうか?
アメリカは日本よりもサプリメントが広く普及しており、日頃から栄養の補給として利用する人が多くいます。なかでも特に人気が高く、およそ3人に1人のアメリカ人が飲んでいると言われるのが、複数の栄養素やミネラルをミックスした「マルチビタミン」や「マルチミネラル」です。
そこでハーバード大学医学大学院らの研究者などが、2万1000人のアメリカ人に行われた2012年の全国栄養調査結果をもとに、マルチビタミンやマルチミネラルのサプリメントの効果を検証することにしました。2万1000人のうち、マルチビタミンやマルチミネラルのサプリメントを日常的に摂取していた人は5000人で、残りの1万6000人は摂取していません。
調査では、高血圧や糖尿、喘息などの過去10年間の健康状態、感染症や記憶障害などの病歴、鬱や不安感などの心理状態などについても聞き取りが行われました。その結果、マルチビタミンやマルチミネラルを摂取している人は自分が健康だと判断する傾向が高かったのですが、実際にはサプリメントを摂取している人とそうでない人の間で健康上に大きな差は見られなかったのです。
サプリメントでポジティブ思考
健康状態とサプリメント摂取にはあまり関係がないのに、サプリメントを摂取している人は「自分は健康だ」と答えている人が多い。この事実からは、サプリメントをとっている人はサプリメントにそれなりの効果があると信じており、それをポジティブに捉えている人が多いと言えるかもしれません。そうだとしたら、これはプラセボ効果です。
ちなみにサプリメントを摂取している人は、高齢で世帯収入が高く、高学歴で健康保険に加入している女性が多かったそう。つまり健康を維持するために経済的な余裕があり、健康への意識が高い人がサプリメントを摂取している傾向にあるようです。
今回の結果がマルチビタミンをすべて否定することにはつながりません。しかし「自分はサプリのおかげで健康である」という考え方にはバイアスが働いていることも忘れないようにしながら、心と身体の健康を維持していくことが大切なのでしょう。
【出典】, et al. Self-reported health without clinically measurable benefits among adult users of multivitamin and multimineral supplements: a cross-sectional study.