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2020/9/3 18:30

自撮りだけで心臓病を診断できる? 「医療AI」が猛勉強中

現在、AIを利用して、顔写真から将来の病気を予測する技術の開発が進んでいます。本稿では中国の研究チームが最近European Heart Journal(循環器学における最も権威ある学術誌のひとつ)に発表した「自撮りから心臓病を診断するAI技術」についてご紹介しましょう。何気なく撮影した自撮り写真で病気がわかったとしたら、医療はどうなっていくのでしょうか?

↑自撮りが心臓の状態を映す

 

中国の国立心疾患センター次長で阜外医院(Fuwai Hospital)副院長なども務めるZhe Zheng教授ら研究チームが行ったのが、顔写真を分析して冠動脈疾患を発見することができる深層学習アルゴリズムの開発。

 

これまでの研究では、薄毛や白髪、耳たぶのしわの増加、まぶた周辺の黄斑など、心臓病のリスク増加によって顔にさまざまな変化が出ることがわかっていました。しかし、このような変化を人が定量的に判断するのは難しいことです。

 

この問題に挑むことにした同研究チームは、2017年7月から2019年3月までに中国にある8つの病院から心臓病患者5796名のデータを収集しました。さらに患者の正面からの写真と左右両側の横顔の写真、頭頂部を写した4枚の写真も集め、病歴やライフスタイル、経済的状況などについても聞き取り調査を実施。さらに放射線科医が血管造影で患者の血管がどのくらい狭くなっているか評価し、これらすべてのデータをもとにしながら、深層学習アルゴリズムの開発を行いました。

 

人相占い×最新科学?

こうしてできたアルゴリズムを使って中国の9つの病院にいる1013名の患者を調べた結果、8割の心臓病疾患を発見した一方、心臓病疾患がない患者も6割ほど見つけ出すことができたのです。しかし、この結果はこの技術が実際の医療現場で利用されるためにはまだ高いとは言えないかもしれません。研究チームはさまざまな人種に対して大規模な試験を行う必要があると認識しています。

 

しかし心臓の検査というと、心電図やレントゲン、心臓超音波などを利用するのが一般的で、これらは医療機関に行かなければできません。なので、患者がスマートフォンを使って自分で顔写真を撮り、それを医師に送ることで、心臓病にかかっている可能性の高い人やリスクの高い人を発見するというアイデアは、初期段階の診断ツールとして便利でしょう。今後の課題にはプライバシー保護の問題が含まれますが、医療技術やAIなどの技術が進化することで、遠隔地からも気軽に病気の診断を受けることが可能になる未来が着実に近づいている模様。運勢や健康を占う人相診断の科学的アプローチにも思えるこの取り組みは、今後どうなるのでしょうか?