家電
炊飯器
2016/8/3 19:17

実は「リリースにない新機構」がスゴかった! 象印「極め炊き」を支えるいぶし銀の技術とは?

象印は、圧力IH炊飯ジャー「極め炊き」(NW-AS10型)“南部鉄器 極め羽釜”を8月21日に発売します。実売価格は14万円前後(税抜)。その主な特徴は「新形状の羽釜」、最適なタイミングで大火力と高圧力を投入する炊き方「プレミアム対流」、ボタンひとつで自動でふたが閉まる「スマートクローズ」の3つ。しかし、開発を担当した後藤 譲さんによると、実はリリースにも書かれていない部分が開発のキーになっていたと語ってくれました。

 

「吹きこぼれとの戦い」を制する2つの穴

2016-0802-s4 (9)

「本機の開発の肝となったのが、蒸気口の新構造です。おいしいごはんを炊くということは、吹きこぼれとの戦い。ごはんを炊くと、おねば(ねばねばした汁)が上がってきて吹きこぼれの原因になります。今回は二重内ぶたを深くして対処していますが、それでも止められない泡は、蒸気口へと続く2つの穴でおねばの泡を割り、吹きこぼれを防いで旨みだけを内側に戻してくれるんです」

↑↑内ぶたを取ると、蒸気口へと続くぽっかりとした穴が表れます。この穴(写真の赤い円の部分)はフタを開けた状態で見て上下で分かれているのが特徴。上の穴の奥にはさらにおねばの泡をつぶす細かい穴が開いています
↑内ぶたを取ると、蒸気口へと続くぽっかりとした穴が表れます。この穴(写真の赤い円の部分)はフタを開けた状態で見て上下で分かれているのが特徴。上の穴の奥にはさらにおねばの泡をつぶす細かい穴が開いています

 

↑象印の第一事業部マネージャーの後藤 譲さん
↑象印の第一事業部マネージャーの後藤 譲さん。説明会が終わったあと、開発で苦労した部分について個別に取材したところ、蒸気口について熱く語ってくれました

 

蒸気口の改良で洗うパーツの数も半減!

この新機構の蒸気口がもたらしたメリットはそれだけではありません。

 

「まず、蒸気口のセットが不要になったため、洗うべきパーツが従来の6つから3つへと半減。また、従来は蒸気口セットが占めていたスペースを利用できるようになり、より大きく見やすい液晶画面を設置することができました」(後藤さん)

↑従来機(右)との比較。
↑従来機(右)との比較。蒸気口部分が小さくなり、液晶が大きくなった。奥行きが増えた点が惜しい

 

つまり、蒸気口を刷新したことで、火力アップを阻んでいた吹きこぼれの課題をクリアし、洗浄パーツを減らし、見やすい液晶の搭載を可能にする、という3つの効果を実現したわけです。

2016-0802-s4-(14)
↑本機で洗う必要があるパーツは内釜を含めたったの3つ

 

大きく発表しないのは「伝えづらいから」

そんな重要な進化をなぜもっと大きく発表しないのか、後藤さんに問うと、「本当は伝えたいんですが、やはり伝えづらいので……」というのがその理由でした。たしかに、一般の方が興味を持つのが難しい部分であるうえ、わかりやすく伝えるには多くの言葉、あるいは文字数が必要です。それならば、ひとめでわかる羽釜の形や、もっとも重要な炊飯技術に解説の労力を割いたほうがいいという判断でしょう。

↑炊飯技術「プレミアム対流」の解説。もっとも火力が必要な「中パッパ」では、平均電力約1250Wの高火力を実現しました。最適なタイミングで1.5気圧の高圧力を加え、お米に甘み成分を染み込ませるのもミソ
↑炊飯技術「プレミアム対流」の解説。もっとも火力が必要な「中パッパ」では、平均電力約1250Wの高火力を実現しました。最適なタイミングで1.5気圧の高圧力を加え、お米に甘み成分を染み込ませるのもミソ

 

この新たな蒸気口に機能名などはないのですか? と聞いたところ、特別な名称はないとのこと。ニュースリリースを見ても、“「蒸気口セットなし」で毎回のお手入れが簡単”と、新機構がもたらす結果のみが書いてあるだけでした。派手でわかりやすい部分に注目が集まりがちですが、本当に重要なのはそれを支える部分にある、というのがわかる好例ですね。

 

しかし、さすがは14万円の炊飯器です。「おいしいごはんを炊く」という目的のため、この筐体にはいったいいくつの技術が詰め込まれているのでしょうか。改めて、高級炊飯器の価値を思い知らされた製品でした。

↑新形状の「極め羽釜」(右)。従来品(左)と比べて羽を大きくしたことで、羽釜と炊飯ジャー本体の間に広い断熱空間を作ります。この断熱層の中で熱が対流しやすくなり、側面から均一に熱を伝えます
↑新形状の「極め羽釜」(右)。従来品(左)と比べて羽を大きくしたことで、羽釜と炊飯ジャー本体の間に広い断熱空間を作ります。この断熱層の中で熱が対流しやすくなり、側面から均一に熱を伝えます

 

↑新形状の「極め羽釜」は、釜底をより大火力に適した形状に改良。激しい泡の対流を起こすとともに、複数のヒーターで全方位から加熱して熱ムラを抑制します
↑新形状の「極め羽釜」は、釜底をより大火力に適した形状に改良。激しい泡の対流を起こすとともに、複数のヒーターで全方位から加熱して熱ムラを抑制します

 

 

象印 https://www.zojirushi.co.jp/index.html

ニュースリリース https://www.zojirushi.co.jp/corp/news/2016/160728/NWAS.html