【文房具愛好家・古川耕の手書きをめぐる冒険】
文房具をこよなく愛す、放送作家の古川耕氏による連載。「手書き」をテーマとし、デジタル時代の今だからこそ見直される“手書きツール”を1点ずつピックアップしている。第5回となる今回は?
第5話
三菱鉛筆
JETSTREAM EDGE 3(ジェットストリーム エッジ 3)
2500円(税別)
0.28mmの超極細ボール径を搭載した「ジェットストリーム エッジ」の3色タイプ。インクは黒、赤、青の3色。後端のダイヤルを回すことで3色のリフィルが回転し、一定の場所から繰り出される機構が新開発された。
ジェットストリームの開拓精神あふれる一本
2019年12月に三菱鉛筆から発売された「ジェットストリーム エッジ」は、ボール径0.28mmの世界最細油性ボールペン。見たことがないほど細い線が書けるが、そのぶんクセも強く、針で引っ掻くような硬質な筆記感には面食らうほどだ。そんな「エッジ」の発売からおよそ1年。2020年11月に発売された3色タイプ「ジェットストリーム エッジ3」では、その異形性がいよいよ剥き出しになっている。
極細のリフィルがペン内で斜めにならぬよう、ペン先を軸の中心からズラし、3色のリフィルをリボルバーのシリンダーのように切り替えて垂直に下ろす機構を採用している。このためペンを持つ向きが決められているが、使ってみるとさほど違和感はない。「普通のペンとは違う、何か特殊な道具を扱っている」という感覚はあるのだが、そもそもエッジは「普通ではない特殊な道具」なのであった。”3色ボールペン”という複雑なプロダクトに対応していった結果、異形の本質が顕在化した、という言い方が正確かもしれない。
もとより「エッジ」シリーズは低粘度油性のジェットストリームインクなくして生まれなかったもの。だが、進化を突き詰めた結果、自ら築いた2010年代以降の「軽くて滑らか」というボールペンの主流から大きく逸脱しつつある。しかし、こうした開拓精神こそジェットストリームの”本質”なのである。外見の必然性も込みで、志の高さを感じる一本だ。
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【第4話】芯1本使い切るまでノック不要! メカまでシャープな「オレンズネロ」に真打登場
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